No.20 安心と信頼の油性ペン
「パイプオルガンはエレガントで良い音がするにゃ、早く弾かないのかにゃ?」
「もっと普通の楽器が良いのじゃ! たわけ!」
と、言う訳でパイプオルガンもクーリングオフした。
二度連続でダメ出ししたことでカルカンが不貞腐れ始めている。
「ワガママすぎるのにゃー」
「わかったわかった。妾が選ぶからカタログを用意せい!」
カタログを見ながら何を選ぶか吟味する。
シンセサイザーは踏み台が必要で却下。
チェロやティンパニー、ドラムなど大型は狭いこの部屋では無理。
ありきたりに考えればギターなのだろう。
だが、隣で控えているニマニマ顔のカルカンが「私にエレガントを教えて欲しいにゃ」と言っている。無茶振りしたことへの仕返しだろうか。相変わらずケツの穴の小さい神様だ。
「よし、決めたのじゃ。ベースギターにするのじゃ」
「なんにゃ、そのビミョーにひねりましたのチョイスは……ま、分かったのにゃー」
そうしてベースギターをゲットした。
往年の名ベースプレイヤーの演奏を聞いて耳コピをしようと頑張ってみる。
「なるほど。わからん。カルカンよ、どうすれば良いのじゃ?」
「んにゃ? 雑魚や鏡のカバーは難しいのかにゃ?」
「とても人間技と思えないのじゃ」
悔しいことにカルカンは楽器が上手い。さらっと弾きこなしてみせた。
酒に溺れていることとKYな点を除けば優秀なのに、その二つの欠点が致命的すぎて擁護は出来ないのが悲しい現実を思わせる。
「ほら、楽譜を起こしてやったのにゃ」
「おお、ありがとうなのじゃ」
笑顔で受け取り、楽譜を覗き込んで固まる。
「ふむ、オタマジャクシが多すぎて何がなんだかなのじゃ。弾き方のコツを教えてくれんかの?」
「こぅ、ギュッとババーッとダダンダダンで弾いていくのにゃ」
「ふむ、聞いた妾が馬鹿じゃった」
あくまでカルカンはカルカン。期待してはならぬ。
しかし楽譜には色々と分からない謎が多い。
「のぅのぅ、カルカンや。このファインはどう弾くのじゃ?」
「ファイン? あぁ、フィーネのことかにゃ」
読み方を間違えてしまい、穴があったら入りたい気分にかられる。
それにしても記号が多すぎる。
「のぅ、もっと簡単な楽譜はないのかぇ?」
「なんにゃ? 数学を得意としていたから楽譜で良いと思っていたのに、タブ譜の方が良かったにゃ?」
聞けばどの弦のどのフレットを押さえれば良いかが書かれた楽譜があるという。
カルカンが即席で書き起こしてくれた。
「ほら、これで弾けるはずにゃ」
「すまんのぅ」
改めて楽器と真剣に向き合う。
そして途方に暮れた。
「のぅ、カルカン。11フレット目はどこじゃ?」
「この辺にゃ。ヨウがカッコつけてフレットレスベースを頼んだりするからこうなるのにゃ」
本日の教訓。
初心者のくせに、無駄に見栄を張るものではない。
「しょうがない、マッキーで書くかの」
キュッポッ!




