No.2 萌え力とは?
「封印とは? それにお主は一体何者なのじゃ?」
まるでその問いに答えるかのように明確な輪郭を得て、真っ白な子猫が顕現した。
「ふぅ、これで伝心を使わなくても話せる。私は光の神。一応は貴方の弁護人ということになっている」
「嘘じゃ」
妄言を嘘だと一刀両断にしてやった。
そもそも光の神は妾の記憶では金色のドラゴンのはずであり、このようなちんちくりんではない。尻尾のフサフサ感も負けてはいないし、何よりこの子猫には萌え力が足りない。
そう思っていたら、いつの間にか二足で立ちあがり、心を見透かしたようにヤレヤレポーズを取る子猫。
「光の神は代替わりしたのです。それにこれでも生前は貴方より尻尾がフサフサだったのですよ? あと、萌え力の高め方を一応お伺いできますか?」
そう言ってくる生意気な子猫の頬を、尻尾で往復ビンタしておく。
「ほれほれ、これをフッサフサとゆうのじゃ。それに萌え力の何たるかが全く分かっておらん。お主には属性というのが足らぬ。足らぬのぅ。教えて欲しいか? ん?」
子猫は額に手を当てて「あちゃー」ポーズをした後、とても残念なものでも見るかのような視線を向けてきた。誠に失敬な。
「まるで先代みたいなことを言う。一体どうすれば満足なのかを教えて下さい」
問われたのであれば、答えてやらんでもない。
「先代は良く分かっておるでは無いか。全く二代目は使えんのぅ。これだから世襲は……っと、萌え力の何たるかであったな。まずは語尾に『にゃ』でもつけてみたらどうなのじゃ?」
これ以上ないほどの素晴らしいアドバイスをしてやったのに、何故か溜息で返された。
「何が不満なのじゃ? ゆうてみぃ」
「いえ、ここまで先代と同じとは思わなかったので」
「はぁ? で、耳はついておらんのか? 語尾もつけれんとは……ほんに萌えないゴミじゃのぅ」
まるで付いていますよと言わんばかりに猫耳をピクピクと動かしてアピールし、子猫は懐かしむような目を向けて鼻で笑ってきた。解せぬ。
「語尾をつけるのは簡単なのにゃ。昔、妹にもさんざん叱られたし、これで満足するならつけてやるのにゃ」
「お主、やたら口に馴染んでおるではないか。もしかしてそっちの方が素なのかぇ?」
「いい加減本題に入るのにゃ。満足したなら封印を受け入れてくれますかにゃ?」
質問に質問で返すとは、猫は礼儀がないな。全く。
しつこく封印を迫られても困るものは困る。




