No.1 捕まった!?
「なぜじゃ! なぜ妾が牢に入れられねばならぬ? 答えよそこの衛兵! おいコラ答えんかい!」
ある日、突然つかまって牢へとぶち込まれてしまう。
何がいけなかったのか分からない。
禁忌がどうのとか宣っており、大した説明もせず今日に至る。
「なぁ、教えてくれんかの? そしたら……ちいっとばかし妾の胸を見せてやってもよいぞ?」
少し胸元をはだけさせて反応を伺う。
二人居る衛兵の双方がチラチラとこちらを見よる。
「ういやつ。誠にういやつよのぅ。大胆なサービスもつけてやろうぞ……」
「「アウトーーー!!」」
二人して叫んだ衛兵は、「あーる」がどうのとか、「十八」が危険だとか騒ぎ立て、牢の中を監視するための視察孔の蓋を閉じてしまい、ドタバタとした足跡も遠のいていく。
それ以降、ピタリと扉の向こうから音がしなくなった。
「おーい、誰かおらんのかぇ? 妾は寂しいぞ。先ほどのはほんの冗談、ちょっとしたお茶目じゃ。戻ってきておくれ」
返事はない。今のセリフは同じのを101回ほど繰り返したところ。
「あー、飽きたのじゃ!」
備え付けられているベッドに仰向けになる。
放り込まれた時よりも随分と見慣れてしまった天井を眺め、何が悪かったのかを改めて整理してみる。
「あれか? 尻尾のフサフサ具合でマウントを取ったのがいかんかったのかぇ?」
同じくらいの背丈の女子たちにフサフサをアピールして、皆が「イケメン」ゆうとった幼子のほっぺを尻尾で往復ビンタしてやった。あれがダメだったのだろうか。
「それともあれか? 告白したいと言っておったのを代わりに伝えてやったのがダメじゃったのか?」
何やら「勇気が」とか「まだ時期が」とうじうじしておったので「あやつ、お主のこと好きらしいぞ。ほれ、抱いてこい」と、言ったのがダメだったのだろうか。
「とにかく暗い! 妾は蛍光灯を所望するのじゃ! あと出来ればアールグレイ茶も付けてくれると嬉しいのじゃ!」
この独房の中には窓もなく、照明もないため真っ暗だ。唯一の入り口である閉ざされた扉の隙間から僅かな光が漏れるだけ。
誰が聞いている訳でも無いので言いたい放題好きに騒いでいたら、部屋の隅に小さな光が集まりだし、やがてそれは一つの子猫を形どる。
「な、なんじゃ? 化け物かえ?」
『……貴方に言われたくは無い。ところで、願いを一つ叶えてやっても良いから大人しく封印を受け入れてくれないか』
驚いたことに、光が集まった子猫は脳内に直接声を飛ばしてきた。
「封印とは? それにお主は一体何者なのじゃ?」




