征服 第一話「あなたは人間じゃない」
学生時代から何もかも振るわない学生で、異性と話したのもただの一度キリ。
何かと言えばそこどいて、に対してアス。
会話より呼応鵜の方が多い学生時代だったと今になって呪っている。
昔の振り返っても嫌な記憶ばかりで、若い時にああしておけばこうしておけばのタラレバが喉に詰まって死にそうになってしまうので、今の自分が本当に昔から存在してたかも知らないほど後悔を深淵にほっぽり見ないままにしている。
これらの障害、厄災はすべてこの僕の人格を学生以前に形成した親の不注意。
だから僕は彼らに報復として家に巣食いあいつらのエネルギーを啜っていたのだが、先日他界したきり、生きる理由を失って何もできないままでいた。
そんな時に深淵の縁から這い上がる、ハーレムを創り上げるという計画と相対した。
学生時代頭が冴えておらず、計画の達成方法も初めの第一歩からどんずまっていたのであるが、報復してる期間惰性で吸収していった知識たちが味方し、一つの方法を見出すことが出来た。
大抵の人間は精神が重大な器官である。
その証拠に精神を病んでしまった人間はPTSD、適応障害、etc…に罹って生活に支障をきたしている。
話は簡単だ、つまり人間の精神を屈服させれば、、隷属にだって、殺し屋にだって、ハーレムパーティーの一員にもできるはず、ということだ。
善は急げと言い、僕は催眠ガスをポッケに町へ繰り出した。
往来してゆく人々たちの中にただ一人ぽつんとインフォーマルなシャツでよく待合場所にななるところで座り、ひと際瘴気を放ちながらじっとりといい女がいないか勝手気ままに勘定していた。
そうして仇やかな気持ちになっているのも束の間、町の空気というのは人ごみに揉みこまれるほどに陰険な雰囲気を薫らせてくる。
その嫌な薫りは僕の精神期間を急速に圧迫させていき、すぐに動悸と後悔とが押し寄せて来た。
何故外に出た、自分はハーレムを作るのに相応しい人間なのか?そもそも屈服させようにも道具がなければ成立しない、つまり家に誘い込めないといけないのにこの風体でついてくる酔狂家はどれだけいる?どうせ話しかけても怖いとか気持ち悪いとかで避けられ、逃げられるのがオチに決まっている。なんにもできねえてめえが何で一人前に人様の風貌を勘定してるんだ、一番見るべきは己の身だろ、内弁慶。おまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんておまえなんて
「フーーーー」
和式便座の上で動機と妄想を鎮めるために蹲って、ひとたび息をついたら別の方法をとることに決め…かけたがこのままで終わりにしてしまうのは己の生きる意味をまた踏み潰すことに直結すると思った為踏みとどまり、人々が少なくなってくる時間になるまで駅の個室トイレにてシュンと待つことにした。
まだ繰り越して生きていたスマホの容量を同人誌に食い潰して、やかましい足音の鳴る空間を忘却しようと集中したのだが、この時間がいつにも増して長ったらしく、惨めな思いが息を吐き吸いに増して増大していくようだった。
緊張に脳が窮してしまって正常に台詞を読めなくなってしまったからぼそぼそと音読をして何とか内容だけでも読み取ろうと努力はした。
「『すみ、ません、わ、たし、こんなところだと…』『うる、ぅさい、しった、こっちゃ、ない…』…
何作品か読破してやっと調子も取り戻し、人の気配も薄くなってきたところで再び町へ繰り出した。
ふらふらと目をあちこちに行き渡らせて女がいないか探ってみたがこんな時間帯に出歩く人影はときたまのインバウンドしか見えず、半ばあきらめかけていたところある場所に行くことを思いついてそこで足を止めた。
そう、誘拐してしまえばいいのだ。
もとより己がより強いものだと刷り込ませるためには相手が弱くなければならない。
つまり低年齢の児童たちをターゲットにするのが一番手っ取り早かったのだ。
天下の狷介男も拍手喝采するだろうアイデアのエネルギーに動かされるまま、最寄りの中学校まで疾走していった。
付いたのは「○○市第8中学校」
校門前のフェンスはぴしりと締め切られており、その鉄棒には『防犯カメラ起動中』の張り紙がつけてある。
たしかに隙間から敷地内を覗くと、渡り廊下の方にこちらを向いてる防犯カメラが付いているのがみえる。
人の目に入るところで攫ってしまうと犯罪者になってしまうと考えを一新させ、下校するときを狙って攫ってしまおうということで踵を返した。
帰路の道中地面の枯葉や虫を眺めながら、近年の学校に対する不平不満について諸々考えずにはいられなかった。
いやはやまさか防犯カメラなどがあったとは……
最近の学校は生徒たちに対する警備が重厚になっていて煩わしい。
中学のころと言えば何事の競争においても秀でた成績を讃えることは数少なく、陰気で能無しの腫物だという風に取り扱われこのように成長してきた。
弱者を助ける機関が、僕みたいな本当の弱者を掬い上げようとしなかあったことも含めて、学校という所には深い恨みによる因縁が固く結ばれている。
このえも言えぬ幼子に対する復讐心は、いつものように拳銃で児童を撃ち殺す妄想をせず、ふつふつと殺意を煮えたぎらせて家にて時を待つことにした。
学校のチャイムは本当によく轟く。
誰かも知らぬハメ撮りで漲る鞘を己の堅い拳の中で抜き抜かんとする最中、馬鹿馬鹿しい学校の終わりの音楽が轟いてきた。
今にも出しつくそうとした尋常でない性欲は間抜けな音調が聞こえるとともに鞘の内に取り押さえて置き、色欲で頭がどうにかなりそうなままふらふらとベランダに出、下校道をギンギンな眼で静観した。
集団で下校する快活そうな男子女子の群ればかりが見える。
成程先ほどの音楽は最終下校のチャイムだったのか、とちょっと悔しい気持ちに苛まれつつもボーっとその生徒たちのことを見てるとひとりで信号待ちをしている可憐な少女が目に止まった。
遠目からだがフィジカル人間ではなさそうだし、最終下校なのに一人で帰ってるということは、クラスでも大して目立たない人間だ。
僕と同じ。
あれなら、攫える。
善は急げというように僕はズボンをいそいそと履いて先ほど少女を見た信号のとこまで走った。
着いたも彼女は先に横断していて、信号は赤に切り替わっていたため待ちぼうけを食わされる羽目になった。
小さくなっていく彼女の背中を絶対逃さないと見張っていると、路地裏と見える場所に入っていった。
やり場のない性欲の咆哮を彼女に叩きのめす熱望を孕ませ、全く動く気がしない信号のライトを睨んでいた。
犯したい、あいつは、犯す。
パッと青に切り替わると同時に脚力はニートだと思わせないような機動力を含ませて、風の様に俺を路地裏迄運び、ついに彼女の背中が見えるかとギンギンな目を更に滾らせ、視界が晴れた。
……しかし、その世界に彼女はいなかった。
へとへとのまま路地裏を突き抜けて右と左両方見たのだがそれらしい人影もなくなっており、僕の世界は怒りで真っ赤になった。
踵を返して五、六歩したときに噴火するような悔しさとやるせなさが溢れかえった。
折角よさそうな奴を見つけたのに、神も誰も俺の見方をしてくれない!
「くそ!」
憂さ晴らしにどこぞのビルの壁を蹴ったとき、背後からとげとげしく怒鳴られた。
「おい、なにやってんだよオッサン」
「…へぁ?」
赤の他人へよく物おじせず声をかけられるな、苛立ちながらかのものの風体を見ると、肉体が締まり挙げられ、身長も俺を頭一つ超えるガタイの良い男だったのですぐさま俯いた。
逃げてしまおうと疲弊しきった脚に力を入れたとき、迂闊にも俺の右腕はそいつに掴まれてしまった。
「ここ、蹴っちゃダメなビルなんだよ、オッサン」
言ってる意味が良く分からなかったのでへらへらと下向きながら首をかしげると、そいつは仕方がないという風に丁重に説明してきた。
「このビル、ヤンキーのたまり場になってんだ。経営主はさ、とっちめてやる。つって、息巻いてんの。監視カメラが付いてんだろ、ほらあそこ」
そういって男はビルの二回の窓辺りを指し示した。
『依頼大募集』と書かせた窓を少し開けてペット用の監視カメラが置かれていた。
「…ハァ、そうですか。で、何なんですか、君は、だって、僕ヤンキーじゃないの一目瞭然ですよねw、おせっかいですか?別に、むかむかしてただけですよ、私は、……離してください」
「……」
男はむしろ握力を更にきつくし、鋭い眼光で僕を見下した。
見下されている感覚に自尊心がどうにかなってしまいそうになり、力いっぱいにその手を振り払おうと怒声を上げ右腕を大きく振った。
「んんん!!!」
しかし拘束は思った以上に頑丈で、か細い僕の腕では指の一つさえ振り落とせなかった。
男は見下しつつその乾燥した唇をゆっくりと開いた。
「……人間か?」
「…は?」
「ついてこい」
グイっと腕を引っ張られるままに僕はそのみすぼらしいビルの中まで引きずり込まれた……
次回予告
ビルに入るとそこにはすごい感じになってて、主人公ビックリ、なんか経営者がウンタラカンタラで…!?
次回 「まるで夢みたい」
to be continue……