第16話 獅子州・西部危機
遅くなり申し訳ございません。
お読み頂きありがとうございます。
――ユースティア第3護衛艦隊群がガラベルム帝國第3艦隊を撃ち破っていた頃。
アトランティス大陸と中央大陸北西部の間の海域――スピナス海に再びランディス合衆国のロライナ西方艦隊が悠然と姿を現した。
作戦目標は獅子州北西部のスピーニア国西岸への上陸。
ロライナ西方艦隊にはアトランティス帝國陸軍のロボット兵器が積載されていた。アトランティス帝國のオートマトンとアンドロイド、サイボーグ兵は無敵ではないが精強の一言に尽きる。
上陸を許せば獅子州は瞬く間に席巻されてしまうだろう。
大戦勃発の口火を切ったスピナス海海戦で、ロライナ西方艦隊はスピーナ国の艦隊を撃ち破っている。
だが、その屈辱を活かそうと軍部に働きかけて国家を動かした者がいた。
スピナス艦隊に所属し、ランディス合衆国戦闘機によって戦艦を沈められて、戦いの全てを目に焼き付けた男だ。
旗艦の艦長であったカリステである。
彼は従来の作戦行動中の戦艦は戦闘機に沈められることがないと言う説を否定し有のまま起こったことを話した。更にこの戦争はこれまでの戦争とは様相が呈する旨を説明し軍部上層部の理解を得ることに成功した。
つまりこれまでの限定戦争から国家総力戦に戦争の体系が移り変わったと言うことだ。
事の重大さに気付いたスピーナ国は獅子州連合に働きかけを行い渋る各国を説得。ルジナート連邦とランディス合衆国の連携攻撃で後退に次ぐ後退を重ねていた、ホーラント国、聖ルーシ共和国戦線の戦い方から学んだ者たちの進言もあり、獅子州連合はようやく見解の一致を見たのである。
しかし問題は山積している。
特にドイチェルト帝國、ジェノヴァ国、ルビア共和国が反旗を翻したせいで獅子州は現在、大混乱に陥っている。
そして今、ロライナ西方艦隊と獅子州第2連合艦隊がスピナス海で対峙していた。
――獅子州第2連合艦隊
司令官となったカリステが艦橋から澄み渡る青天の空を眺めていた。
レーダーに映るのは海を埋め尽くすかのような敵艦隊。
哨戒機からの情報では戦艦4、重巡洋艦10、巡洋艦14、駆逐艦18、空母4、上陸輸送艦10の大艦隊である。
それに対する獅子州第2連合艦隊は戦艦5、重巡洋艦8、巡洋艦16、駆逐艦18、空母3、超電磁砲搭載艦2。
「空母と輸送艦を潰すことを第1目標とする。絶対に阻止しなければならないのは、アトランティス帝國の兵を上陸させないことだ」
アトランティス帝國の虎の子であるロボット兵対策のために超電磁砲搭載艦も出撃している。
だがこれは最終兵器である。
現在の位置で撃てば敵艦隊はもちろん、ロボット兵の機能を喪失させるのは容易だろう。
しかし当然、味方にも被害が出る。
超電磁砲搭載艦はレールガンを撃つ艦船ではなく、電子機器を電磁パルスで破壊するのが目的の兵器なのだから。
「後方基地より入電、間もなく現空域に戦闘機が到着します」
戦闘機は獅子州連合の混成部隊である。
ブリタンニア王国の『グランドⅢ』、スピーナ国の最新型戦闘機『レオン』、旧型機『ビクトリアⅣ』、テルダム共和国の『ナミュール』と言う編成になっている。
「よし、我が国も出撃だ。爆装で『レオン』を上げろ!」
『レオン』はまだ量産には至っていないが現時点で100機。
後は旧型機の『ビクトリアⅣ』になる。更にブリタニアン王国とテルダム共和国の戦闘機が加わり、全600機以上が投入される予定だ。
相手はランディス合衆国空軍の『シアトー655型』である。
鹵獲機から従来の『シアトー597型』ではないと判断されており、その速度は時速650kmを超えると想定されている。
『速度では負けるが数で押すしかない』
これが現時点で出せる案であった。
急ピッチで研究開発は進められているが早々、新型戦闘機など作れるはずもない。
「『レオン』上がります。艦隊東を獅子州連合航空隊が通ります。すぐに合流予定」
「艦隊決戦だ! この一戦に獅子州連合、ひいては我が国の存亡が掛かっている! 上陸されたら蹂躙が待っていると思え!」
カリステ司令は言外に最悪を想定して超電磁砲搭載艦の使用を匂わせた。
「レーダーに感あり。敵戦闘機来ます!」
「全艦隊に告ぐ! 超電磁砲搭載艦を必ず護り抜く! 各艦対空戦闘用意漏れ出てきた『シアトー655型』を落とせ! 艦隊はこのままの陣形で全速前進し射程に入り次第砲撃を開始しろ!」
青色の澄み渡った空に戦闘機が溢れ、その色を塗り替えていく。
最早、蒼天は見る影もなくなっていた。
――ロライナ西方艦隊
カパルス提督も艦橋から双眼鏡を覗き込み、前方の様子を窺っていた。
そこへレーダー士から報告が入る。
「戦闘機多数。600以上」
「ふッ……空を埋め尽くすほどの大軍だな……蝗共め、『シアトー655型』を舐めるなよ」
既に『シアトー655型』も蒼穹を舞っている。
その数300機。
数では圧倒的に負けているが、前回の空戦でもそれを機体の性能差で覆して勝利を収めている。
問題はない。
「いいか。我らの第1目標はアトランティス帝國陸軍の上陸だ。上陸輸送艦を護り抜く」
上陸輸送艦にも対空砲は装備されているが所詮は輸送艦である。
爆撃されればひとたまりもない。
敵艦隊の射程には入らないように徹底しているが爆撃機が抜けて来られては困る。
「全機に繋げ」
「は、通信できます」
カパルス提督は通信機に向けて最後の檄を飛ばす。
厳しめには言ったが、その表情は真剣な中にも笑みが混じっている。
それほど歴戦のパイロットたちの腕を信じているのだ。
『勇敢なる『シアトー655型』のパイロットたちの告ぐ! 獅子州への上陸は諸君らの奮闘に掛かっていると言っても過言ではない! 敵戦闘機は全て落とせ! そう全てだ! 諸君らの検討を祈る!』
「戦闘機が会敵。艦隊も間もなく射程に入ります」
「艦隊決戦だ。砲撃手は片っ端から沈めてやれ! 釣瓶打ちだ!」
大丈夫だ、我が軍の士気は高い――そうカパルス提督は自信を持っていた。
「装填、照準完了。いつでも撃てます」
「よし。主砲、副砲、全砲門、撃ってぇい!!」
轟音と共に各艦の主砲から砲撃が飛翔していく。
正確に計算された弾道は大きな弧を描いて、敵獅子州第2連合艦隊へと着弾。
流石に1発での命中弾はなかったものの、その多くが至近弾だ。
やはり砲撃手の腕も良い。
カパルス提督は更に自信を深めて口角を上げた。
一方の敵艦隊からの砲弾も命中弾はない。
大海に大きな水柱が上がり、艦船を濡らす。
「やるな。だが空を制す者が海戦を制す。時代は変わったのだ。『シアトー655型』には勝てん」
そう自分に言い聞かせるように言うと、カパルス提督は前方の果てしない水平線を睨み続ける。
相変わらず真っ平な世界だ。
「巡洋艦〈ロスタス〉被弾、大破炎上中」
「チッ……もう当てて来たか。全員救助しろ。こんな戦いで命を落とすのは無益だ」
伝えなくとも付近にいる駆逐艦が救助に当たっているだろうが、どうしても呟いてしまう。
両艦隊の砲撃戦が繰り広げられているその空では――
――スピナス海空域
一言で言えば壮絶。
両軍機が入り乱れての制空戦が行われている。
空に咲く紅蓮の華。
僅かな逡巡、僅かな油断、僅かな気の迷いが死に直結する。
しかし、概ね、ランディス合衆国空軍機『シアトー655型』が優勢に空の戦いを進めていた。
『シアトー655型』の14mm速射機関銃が火を噴き、また1機『グランドⅢ』が落とされていく。
獅子州側で鹵獲した『シアトー655型』の速度は獅子州連合の戦闘機の速度を上回っていると言う解析結果が出ている。そのため作戦では1機に3機で当たるように命令が下されていた。
だが――
『我が国の戦闘機を舐めるなよ? 徒党を組んでも勝てない現実を教えてやる!』
獅子州連合は東部戦線も、この西部戦線でも優秀なパイロットを必要としている。とは言え、早々エースパイロットが育つはずもない。
一方のランディス合衆国空軍は各地で圧倒的な航空優勢を保っており、経験豊富なパイロットを多く抱えていた。
そんな彼らが今回の作戦に大量に投入されているのだ。
それほどに重要な作戦であると言うこと。
アトランティス帝國の陸軍が上陸すれば、獅子州の東西で戦線は崩壊するだろう。
そしてまた1機『ビクトリアⅣ』が撃墜された。
『無駄ァ無駄ァ!!』
ランディス空軍パイロットであるマイケルズ二等空尉が吠える。
時速720kmを誇る無敵の戦闘機、悪魔の『シアトー655型』について来れるものなどいない。
背後に付こうとする敵戦闘機を振り放すために急旋回する。
強烈なGが掛かるがこんなものはどうと言うことはない。
幾度となく味わってきた衝撃だ。
『残念だったなァ!! 俺はランディス人で心底良かったと思うぜ!! こうやって国のために貢献できるんだからなァ!!』
また1機の戦闘機『ナミュール』の両翼に機関銃が命中してきりもみ状態で海上に叩きつけられて爆散した。
状況は一刻一刻とランディス合衆国側へと傾いていく……。
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