第15話 南東諸島・ガッツ島沖海戦 ③
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深い海の底で数多の仲間が潰れて死んでいた頃――
敵状偵察のために上げた哨戒機は戻っていない。
だが不安が胸に去来し、長年の勘が司令官ルーブリスの頭の中でアラートを鳴らし続けている。
岩礁地帯。
敵艦隊が逃げるのみ。
どこかに誘導されているようだ。
敵に空母らしい艦船はなし。
主砲、副砲は小口径。
頭の中を情報がぐるぐると巡る。
既に敵艦隊は、ガラベルム帝國の戦艦の主砲の射程外の更に向こうにまで離れている。戦う気がないのかとも考えたが、ならば最初からもっと大艦隊で来援すれば良かった話。
別にイネアス王国に義理を果たしたと撤退した訳でもなさそうだ。
この辺りは南東諸島の群島。
陸上から艦隊を狙う兵器を保有している?
敵は魔法文明と思われる。
哨戒機は未帰還。
背中に伝う冷や汗。
経験と直感に従ってルーブリスが叫ぶ。
「空母へ送れ! 全機爆装させて上げろ! すぐにだ!」
空母の艦載機の出撃――それも全機爆装でだ。
だが遅かった。
地獄が顕現したのは――その瞬間。
ガラベルム帝國第3艦隊は、ルーブリスが乗る旗艦〈デルムドー〉を中心に同心円状に広がって航行していた。
岩礁と群島のせいで急制動を掛け、陣形は乱れている。
そこへ起こる連続的なまでの大轟音、爆音。
どれもルーブリスの背後から轟いてきたものであり、それが意味することは1つ。
「く、空母〈ガラムズ〉轟沈!!」
すぐに情報が上がってくるが、爆発音は一向に収まる気配はない。
「くそッ……敵はどこだッ!? 情報把握に努めろ。レーダーに反応はあるか?」
「ありません。……いえ、何かが――」
この世のものとは思えないほどの轟音が近づいてきたかと思うと、一瞬で旗艦の上空を過ぎ去っていく。
ユースティアのステルス戦闘機『Y-21S』がローバスで通り過ぎただけなのだが、ガラベルム帝國側からしたらそんなことなど分かろうはずもない。
凄まじいまでの振動によって艦橋のガラスが全て粉々に割れ、周囲に飛び散って床に、そして乗組員に降り注ぐ。
「何が起こった!?」
全く事態に付いていけないルーブリスが珍しく語気を強めて吠える。
いつもの彼からは想像もできないほどの詰問調になってしまっていた。
「レーダーに反応がありました……。恐らく敵戦闘機かと」
ルーブリスの問い掛けに律儀にも職務を全うするレーダー士。
彼女自身飛び散ったガラスで、あちこちに細かい傷を負っている。
「あの速さの戦闘機など存在するのか……?」
こうやって話している間にも轟音は一向に止む気配はなく、観測員から情報を得たオペレーターが報告を上げる。
「空母〈ガロリオン〉轟沈!!」
これでガラベルム帝國第3艦隊の空母2隻は沈められたことになる。
その事実は計り知れない衝撃を乗組員に与えた。
「何機上がった?」
それだ。
問題はまさにそれなのだ。
戦闘機さえ無事であれば爆撃で敵艦隊を沈められる。
ここからではガラベルム帝國が誇る戦艦の主砲ですら届かないのだ。
「確認中です!」
「報告! 敵艦隊が再び接近中!! ……敵艦が何かを発射? 射出した模様です!」
戦闘機の残存だけを祈っていたルーブリスの耳に要領を得ない報告が届く。
彼にできたのは反射的に問い返すことだけ。
「何かとは何だ!」
「分かりません!」
当然であった。
ユースティアの護衛艦隊群が放ったのは対艦ミサイル。
主砲や副砲から撃ち出されたものではない。
「報告、空母轟沈により艦載機は全滅のようです……」
「畜生! 何だと言うんだ! 何が起こっているんだ!」
思わず怒鳴るルーブリスであったが、ここに至ってようやく悟っていた。
最初に超高速で飛行していった戦闘機が何らかの方法――爆弾か何かで空母を沈めた。魚雷を投下した可能性もある。そしてあちこちから聞こえてくる爆音は、先程聞いた近づいてきたかと思うと一瞬で去って行った戦闘機による攻撃を受けているせい。
「司令、落ち着いて下さい……」
旗艦艦長が見かねて宥めると、ルーブリスは頭が多少冷えたようで落ち着きを取り戻した。
だが――
「レーダーに感あり。超高速の飛翔物が多数接近中!」
「何なのだ……これは……魔法文明ではなかったのか……?」
「仰る通り私もそう聞いております。確か特殊な元素か何かがなければ魔法の力は働かないと判断されたかと」
冷静に、あくまでも冷静に艦長はルーブリスへ告げた。
だがもちろんそれはルーブリスも聞かされていることだ。
「ここには存在すると言うのか? 私も聞いたが海上には存在しないはずだとな」
艦長と言えども分かろうはずがない。
答えに窮すると首を横に振る。
「飛翔物体、間もなく到達します!」
「総員、衝撃に備えろッ!!」
報告から一瞬。
連続的にその何かが戦艦に命中し、激しい衝撃で艦内が大揺れに揺れる。
あちこちから爆発音が起こり、悲鳴が起こるが全て掻き消されていった。
「ぐ、ぐぅ……これは砲撃ではないのか……」
あまりの激しさに機材に激突して流血しながらも、ルーブリスは何とか立ち上がる。
艦橋内は地獄の様相を見せている。
死んではいないようだが、殆どの者が倒れ伏しあちこちから血を流していた。
気を失っている者も多く、最早操船すらままならないだろうとルーブリスは理解した。
「これは主砲の連射性が高いのか……いやレーダーに映っていた……そのような兵器があるのか」
そう独り言ちながら分析していく。
「波状攻撃……何かを連続的に投射した? だが主砲ではない。一体何だ?」
よろめきながらルーブリスはガラスが砕け散った艦橋から双眼鏡を使って周囲を見渡す。
絶句。
言葉がでないとはこう言うことかとルーブリスは場違いなことを考えていた。
目の前に広がる光景は信じられないもので、現実から目を逸らしたくなるのも当然と言えた。
あれだけの威容を誇っていたガラベルム帝國第3艦隊が壊滅していたのだから。
ただ戦艦がまだ1隻だけ大破炎上している状態で、辛うじて轟沈を免れていた。
ルーブリスが乗る旗艦も合わせると2隻だけ。
「戦艦の装甲は抜けない? だが数を喰らえばいかん……」
敵艦隊の方を眺めると、また何かが射出される瞬間を目の当たりにするルーブリス。
戦っている相手との圧倒的なまでの技術格差に気付いて愕然としてしまう。
もう十分に驚き尽くしたと思っていたが、更に驚かされるとは。
ルーブリスは心の中で自嘲気味に笑った。
圧倒的な射程。
圧倒的な命中精度。
圧倒的な威力。
そして帝國が誇る戦闘機『64式ガルマキラ』を圧倒的に速度で上回る戦闘機。
勝てない。
勝てるはずがなかった。
挑もうとすること自体が無謀であった。
間もなく旗艦であるこの戦艦も沈むだろう。
情報だけは届けねば。
この世界は平面で、電波の延伸距離が長い。
最寄のラスタル植民行政府になら大出力で送信すれば届く可能性がある。
伝えねば。
最早、その意志のみが傷付いた体を動かしていた。
ぐったりしている通信士を押しのけて、ルーブリスは機材を操作し始める。
そして去来する――絶望。
「敵は……ユースティアは天さえも味方に付けたか」
直後、戦艦〈デルムドー〉に幾つもの対艦ミサイルが突き刺さった。
ルーブリスの意識はそこで完全に闇の中に閉ざされた。
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