第5話 再戦!カヌール海海戦 ①
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『セレンティア・サ・ガ』
~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~
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――カヌール海
毎日、曇天模様の空を眺めながらランディス合衆国のフォルニア東方艦隊がひたすら南下する。戦艦5、重巡洋艦7、巡洋艦12、駆逐艦15、空母3。
その威容は他国の海軍から見てもまさに強者を感じさせるだろう。
ただただ海を掻き分けて進むその姿を見ただけで威風堂々とした貫禄を印象付けられる。
フォルニア東方艦隊の提督オマージュは旗艦の艦橋でボヤいていた。
帝國が考えていることは分かっているつもりだが、出撃が遅すぎてもポートノワールが脅威にさらされる可能性が高まるのだ。
そろそろ神聖ガリア艦隊と会敵してもおかしくはない頃合いなのだが。
「もうポートノワールも近いだろうに、帝國は迎撃する気がないのか?」
「流石にそのようなことはないのでは? 如何に我が国の艦隊に恐怖を抱いていたとしてもあの鼻っ柱の高い国のことです。むざむざと重要港を渡すはずはないでしょう」
「当然だ。出て来られなくては困る。恐らくだが帝國は地上からの航空支援が期待できる地点で待ち受けているんだろう」
「なるほど……前回の轍は踏まないと言うことですか」
「軍港が射程に入るなら艦砲射撃で火の海にしてやれば良い」
「そうですな。ですが今回はどれほどの戦闘機を投入してくるのでしょうか」
「分からんが、前回を越えるかなりの規模だろうな。まぁ我が艦隊が敗れても次回は本国海軍の総力を挙げて再侵攻するだろうよ」
「フォルニア東方艦隊が負けると?」
怪訝な顔して問い返す旗艦艦長にオマージュが僅かに顔を緩めるとはっきりと言った。
「馬鹿も休み休み言い給え」
「はッそうですな」
オマージュ提督と旗艦艦長である副官のお喋りはレーダー士からの報告によって中断させられた。
「前方、1時の方向より艦隊が接近中! 神聖ガリア艦隊と思われます」
それを聞いた2人は顔を見合わせるが焦った様子はない。
「数は分かるか?」
「はい。大艦隊と思われます。80隻程度かと」
「よし、艦載機を上げろ。偵察へ向かわせる」
直ちに空母機動隊に命令が通達される。
見つかっても速度で圧倒的に勝る『シアトー655型』であれば簡単に振り切ることができるだろう。
「さぁ開戦だ。大艦隊であれば勝てる訳でないともう1度教えてやろう」
そう言うとオマージュ提督は不敵な笑みを浮かべた。
一方、神聖ガリア艦隊もユースティアから提供を受けたデータを元に、海戦に適した地点へと向かっていた。
戦艦6、重巡洋艦12、巡洋艦16、駆逐艦30、空母5の大艦隊である。
その上、衝突予定の海域は陸の空軍基地からも近いため、前回以上の航空優勢を奪えるだろう。
ただ、前回では空戦は一気にひっくり返されてしまった。
その故の敗戦と言っても良い。
神聖ガリア艦隊の提督となったトゥルクス海軍大将であったが、そのことを考えながら今にも泣き出しそうな曇天を見て不安感が募る。
その時魔導電磁レーダーに反応があった。
すぐさま、状況が伝えられる。
「ランディス合衆国のものと思しき艦隊を発見。会敵予想地点は計画通りかと思われます」
「すぐに本国に航空支援を要求してくれ。空戦が勝負の分かれ目となる」
あれから魔導砲の曲射も可能になったし、砲身を魔導強化することによって魔導砲の大出力化も果たすことができた。
それに加えて最新鋭艦が多い大艦隊だ。
決して敗北など許されないし、必ずやランディス側に痛撃を与えることができるとトゥルクス提督は信じていた。
「一気に勝負の形勢をこちらに引き寄せる必要がありますな」
「その通りだ。大打撃を与えて早期に決着をつける」
「痛撃を与えればあちらも自ずから撤退しましょう」
「ああ、再起不能に追い込みたいものだ」
トゥルクス提督は士気を上げるために全艦隊に檄を飛ばすことに決め、通信士に無線を繋がせた。
『勇敢なる神聖ガリア艦隊の諸君。私は艦隊提督のトゥルクスだ。此度は決して敗北は許されない。だが、我が艦隊は強い! 最新鋭艦を含む大艦隊、そして空前の規模となる航空攻撃。帝國の興廃はこの1戦にあり! 諸君らの奮闘に期待する! ランディス艦隊をカヌール海から叩き出してやれ!』
各艦では雄叫びや喊声が艦内に木霊し、その士気は天をも衝かん勢いにまで上がることになる。
最新の魔導技術を搭載した海上艦、圧倒的な数の航空支援に加え、士気まで上がるとなると決して勝てない戦いではない。
精神は時に肉体を凌駕する。
その際、この最新技術の塊である艦はその力の全てを引き出してくれるだろう。
「必勝だ。勝って世界の威信を取り戻す!」
今まさに艦隊決戦が開始されようとしていた。
◆ ◆ ◆
神聖ガリア艦隊の空母から艦載機が次々と上空へと上がっていく。
本国の空軍基地から支援部隊が到着するため、それに合わせて慌ただしく準備が行われていた。
空母の艦載機は全ては上げずに、第1陣の攻撃部隊の補給時に出撃させる予定である。
補給の隙を突かれては困るため念のためである。
いくら近いとは言え、援軍が空軍基地まで補給に戻るとなると、その間に航空優勢が取られる可能性がある。
もちろん一気呵成に空の戦いには決着をつけたいとは考えているが予定通りに事が運ぶなら、何も考える必要などないだろう。
トゥルクス提督はそう考えていた。
神聖ガリア艦隊の空母から上がった300機と本国から来援した400機が、ランディスのフォルニア東方艦隊方面へ向かっていく。
そしてそれに呼応するかのようにフォルニア東方艦隊からも戦闘機が飛んでいく。その数は300機。
時速720kmを誇るランディス合衆国自慢の最新鋭戦闘機で、14mm速射機関銃を装備した『シアトー655型』が300機。
時速590kmの12.7mm連射魔導砲が主武装の『ガルガンダMKⅢ』700機。その内の約200機ほどはユースティアからの輸入した民間の部品を軍事転用することで時速は660kmまでに上がっている。
本来、ユースティアは魔導・科学共に軍事技術を輸出していないし、民間品の軍事転用は禁止しているのだが、背に腹は代えられぬと神聖ヴァルガリア帝國が勝手に行ったのである。
そして激突の刻――
◆ ◆ ◆
曇天の空が今、空色の『シアトー655型』と緑色の『ガルガンダMKⅢ』で埋め尽くされていた。そしてそれを待っていたかのようにポツリ、またポツリと空から雨粒が落ちてくる。
それは争いを嘆き悲しむ神の落涙なのかも知れない。
果たしてどちらを哀れむ涙なのか。
まだ誰にも分からない。
『すごいな! 壮観だ! 我が帝國の戦闘機の威容を見よ! 負けるはずがないではないか!』
『ガルガンダMKⅢ』を駆り空を行くのは第3部隊長のエースパイロット、ジュドーであった。幾度となく空戦を経験してきた彼であったが、ここまで大規模な作戦行動に加わったことなどない。
そもそもこの規模の空戦自体が起こったことなどないのだから当然なのだが。
『隊長……俺がヤバくなったら助けてくださいよ……?』
『弱気だなぁ……これだけの味方がいれば負けんさ。それに俺の周囲にいれば敵さんは全て落としてやるから安心していろ』
『ランディスの戦闘機は速いと聞いています。それでも勝てると?』
『いくら性能が上でもこれだけの数で押せば負けようがない。まぁ敵さんにも俺みたいなエースがいるだろうから被害は出るだろうけどな』
『辛気臭ぇな! つべこべ言わずに連射魔導砲で落としまくればいいんだよ』
『おっとお喋りはここまでだ。来るぞ! 帝國の強さを恐怖と共に奴らの精神に刻み込んでやれ!』
両軍の戦闘機がぶつかり合う。
初撃でどれだけ落とせるか。
それが空戦の趨勢を決める。
連射されて空に緑色の魔導砲が撃ち出される。
ランディス側の戦闘機の機関銃も同時に火を噴いた。
第1派でお互いに多くの戦闘機が空の塵と消える。
ジュドーは当然の如く、機関銃を躱して『シアトー655型』とすれ違うと、その先でUターンして再度攻撃へと移る。
同じくすれ違った『シアトー655型』も反転しようとするが、そこに上空から垂直に『ガルガンダMKⅢ』が襲い掛かる。
予想していなかった戦闘機が空中で爆散、もしくは羽に魔導砲を受けてきりもみ状態で海に叩きつけられる。
ただの乱戦にはしないために編隊で効率の良い空戦ができるように作戦立案がされていた。
その後、組織的な攻撃を行うもランディス側のパイロットたちの技量も大したものであった。急旋回や急上昇で魔導砲は簡単に躱され続ける。
それに対して帝國側も敵1機につき味方3機で当たるように指示が出されており、そうやすやすとは攻撃に移らせない。
前回の反省が生かされている証拠だ。
両者の思惑が交錯する中、空戦の緒戦は神聖ヴァルガリア帝國空軍の優勢となった。
帝國も学んでいると言う訳だ。
双方の艦橋で、遠く彼方にいるはずの両指揮官が睨み合う。
ランディス合衆国フォルニア東方艦隊のオマージュ提督と、神聖ガリア艦隊のトゥルクス提督が吠える。
『勝つのは我々だッ!!』
果たしてこの後の趨勢はどう動いていくのか。
それは神しか分からない。
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