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混沌なる異世界(カオス・ワールド)~様々な異世界国家が集まる異世界の坩堝~  作者: 波 七海
第三章 世界大戦勃発編

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第1話 大戦の幕開け

いつもお読み頂きありがとうございます。

本日は18時の1回更新です。

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『セレンティア・サ・ガ』

~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~

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 ――聖ゼノ暦4216年4月19日(ユリウス歴2570年4月19日)未明


 アトランティス大陸と中央大陸北西部の間の海域――スピナス海にランディス合衆国のロライナ西方艦隊が何の前触れもなく出現した。

 標的となったのは獅子州北西部、スピーニア国の西コルニャ海軍基地。


 海軍基地司令はここまで接敵を許してしまったことに歯噛みしながらも、何とか冷静に指示を出していた。

 これで大北海にいる獅子州西部連合艦隊と、この場所から南にあるスピーニア海軍本部基地に駐留しているスピナス艦隊がロライナ西方艦隊を挟撃する形で動き出したはずである。それまでに遅滞戦闘に努めるのが自分の仕事だと割り切って彼は覚悟を決めたようだ。


「敵戦闘機、上空到達まで5分程度!」


 レーダー士から焦りを含んだ報告が入るが、内地にある空軍基地からの援軍があるまでは基地にある戦闘機50機と対空砲で迎撃するしかない。

 いや、スピナス艦隊には空母もいるのでまだ対応できるかも知れない。

 ランディス戦闘機300機を味方50機と援軍で凌ぎ切る必要がある。

 司令が心の内に溢れ出てくる不安と焦燥を何とか抑えながら、冷静に命令を下す。


「皆、信じるのだ! 我が国の『ビクトリアⅣ』の力を、そして獅子州連合国の戦闘機の性能を見せ付けてやれ!」


 スピーニア国の誇る戦闘機『ビクトリアⅣ』は時速570kmもの速度が出る。

 小型の単葉機であり翼に改良を加えているため旋回性能に優れているが、その装甲は薄い。


 レーダー士が観測を続けていると、とうとう両国の戦闘機が激突する時がきた。


「接敵します。国籍はやはりランディス合衆国! 敵はランディス合衆国です!」


「やはり来たかッ!! となると敵戦闘機は『シアトー597型』か? 速度で多少劣るがパイロットたちの技量を信じるしかあるまい……」


 基地の地下司令室に緊張が走る。

 この戦いが世界大戦の緒戦となることに彼らはまだ気付いていなかった。


 そして国家の総力を挙げて世界中で戦うと言うことの意味を彼らは理解していなかった。




 ◆ ◆ ◆




『オラァ! 聞け! 部隊員たちに告ぐ。小癪こしゃくにも敵、ランディス合衆国は大北海で獅子州西部連合艦隊と戦うことから逃げて、スピナス海に侵攻してきた。卑怯極まりない悪辣な国だと言うことは貴様らも知っているなァ!! 何度も戦ってきた相手だ! いつもの通りにこの海域から叩き出してやれェ!!』


『うおおおおおおお!!』


 西コルニャ海軍基地から飛び立ったスピーニア空軍の部隊長が訓示を行うと、勇ましい雄叫びが無線を通して伝わってくる。

 無線でも気持ちは十分に伝わるのだな……と1人感動の渦に飲み込まれそうになるが、敵はもう目前だ。部隊長は自らに気合を入れ直し、目の前に現れた戦闘機に12mm機関銃を発射する。


 早速海軍基地から3km地点の空域で敵味方入り乱れての乱戦が開始される。

 これまで幾度となく戦い、撃退して来た戦闘機である。

 戦い方は皆の頭に入っているのだ。


『ハァッハァ!! 落ちたぞ! 貴様ら! 戦いは数ではない! 質だ! 気合を入れろォ!!』


 蒼天の空が真っ赤な花火によって彩られる。

 優劣は着いておらず、見た様子では状況は互角。

 これで来援機が来たら大勝利に終わることは確実だ。


『部隊長! 敵機が一部コルニャ海軍基地に向かっているようです!』


『何ィ!? 爆撃機はいたかァ!?』


『いえ、恐らくいないかと……』


『ならば放っておけェ!! 対空砲の餌食になる。我々はこの空域にいる敵機を落とす! それだけだァ!!』


 果てしない空戦が行われる。

 両国の戦闘機が乱舞し、お互いが敵機の背後を取ろうと必死になって高速で飛行している。空のエリートたる彼らは体に掛かるGに耐えながらも、祖国を護るべく心に灯した火を消さぬように奮闘していた。


 しかし――


 航空優勢が崩れ始めたのだ。

 数と質で負けていた『ビクトリアⅣ』であったが何とか踏み止まっていた。

 元々、量でも質でも負けていたのだがら仕方がないとも言える。

 明らかに『ビクトリアⅣ』が撃墜されていくのが分かるのだ。

 それは無線で伝わる仲間からの断末魔の悲鳴であり、目の前で爆発炎上する僚機りょうきの姿のせいであった。


『速い! やはり速い! くそくそくそ! くそおお――』


『何でだ? 今までは優勢だったはずなのにおかしいだろうが! 振り切れねぇガガガガッピー――』


『これは……ぐぅ……うおおおおお! 援軍はまだかああ――』


 次々と爆散していく仲間たちに部隊長は血涙を流して慟哭していた。


『何故だァ! 何故、ランディスは撤退せんのだァ!!』


 今までは戦争と言っても、所謂、限定戦争であったのだ。

 国家による全てを賭けた戦いなど経験がなかったのにもかかわらず、図らずも初手から総力を挙げて攻撃を仕掛けてきたランディス合衆国の勝利であると言える。


『西コルニャ海軍基地へ! 西コルニャ海軍基地へ!』


 部隊長が必死に地下司令室の通信士に無線を送っているが反応がない。

 彼はまだ知らないことだが、海軍基地はレーダー及び、通信機器が徹底的に破壊されていた。


 滑走路なども破壊され尽くし被害が甚大で司令室は混乱の極みに陥っていたのだ。投入されていたのは時速720kmを誇る、あの神聖ヴァルガリア帝國空軍を壊滅させた空の悪魔『シアトー655型』。

 そして爆撃機『ロスエンゼ300型』であったのだ。

 事実上、西コルニャ海軍基地はその機能を停止していた。


『隊長! 基地の方から何か来ます!』


『何ィ!? 来たかァ!! 来援が来たのかァ!!』


 何とか生き残っていた『ビクトリアⅣ』、13機のパイロットたちの胸に希望が満ち溢れた。全ての者が歓喜に打ち震えていた。


『よォし! 反転攻勢だァ!! 散って逝った仲間の仇を討ってやれェ!!』


『うおおおおおおおおおお!!』


 その瞬間、部隊長の近くを飛んでいた僚機が爆散して海上へときりもみ状態で落ちていく。

 海に叩きつけられて更なる爆発を起こし、海の藻屑と消える部下と僚機。


『何が起きたァァァァァァ!?』


 それに応える者はいない。

 空戦が始まってからまだ2時間程度。


『いかん! 我が隊は基地に戻るぞ! 速やかに反転しろォ!』


 そして基地方向から向かってくる戦闘機とすれ違い様――機関銃が火を噴いた。


 更に部隊長は目を見開く。


 戦闘機に描かれていた国旗、それは――ランディス合衆国国旗。


 僚機ではなく敵機『シアトー655型』と『ロスエンゼ300型』であった。

 神聖ヴァルガリア帝國は実際戦ったランディス合衆国の最新鋭戦闘機『シアトー655型』の情報すら掴んでいなかったのだ。

 故にその性能すら共有されているはずがなかった。


『皆殺しだァァァァァァ!!』


 部隊長怒りの咆哮が空気を震わせた。


『やっぱり戦いは数ですよ! 隊長ッ! うわぁぁ――』


『いつもと違――』


『我、散り――』


 夢も希望も絶たれたてしまった者たちは次々と撃墜されていった。

 結局、部隊長は何が起こっているのか理解することすらできずに空に散った。

 最期の言葉を残すことすら叶わずに。




 ◆ ◆ ◆




『こちら獅子州第2航空隊だ。到着したが西コルニャ海軍基地は壊滅。基地機能を喪失している。滑走路も破壊されており着陸も不可能である』


『付近に僚機と敵戦闘機の姿はあるか? どうぞ』


『いや、いない』


『撤退せよ。支援は不要』


『承知した。終わり』


 実際はスピナス海沖50kmほどの場所でスピーニア国の艦隊が猛烈な爆撃に晒されていたのだが、それに気付くことなく、来援機は撤退するとととなった。

 現在は超電磁砲搭載艦を護りながら、『シアトー655型』と『ロスエンゼ300型』合わせて300機が『ビクトリアⅣ』150機と空戦を繰り広げている状況だ。


 これは明らかな怠慢行為であった。

 敵は限定的に奇襲して基地機能を破壊した後、直ちに帰還したと言う思いこみから来るもの。


 今起こっているのは小競り合いではない。

 ある程度、戦力を削ったら引き上げていた過去の戦争とは一線を画すものであった。




 ◆ ◆ ◆




 ランディス合衆国の艦隊を発見すべく、西コルニャ海軍基地から出撃していた小艦隊はスピナス海に展開。

 敵艦隊など撃破して見せると息巻いているジュナ司令の命令に従って基地から沖50kmほどの地点でランディス合衆国の戦闘機に捕捉され猛烈な攻撃に晒されていた。


「巡洋艦〈レアル〉轟沈!」


「閣下! このままでは超電磁砲搭載艦が護り切れません! 撤退を!」


「まだだ、敵艦隊は来ていない。こちらには戦艦も残っているし、搭載艦の装甲も厚い。戦闘機如きに戦艦が沈められるはずがないのは知っているだろう?」


「それはそうですが……超電磁砲搭載艦だけでも逃がすべきです!」


「代わりはスピーニア海軍本部基地のスピナス艦隊にもある。それより空で鬱陶しく飛び回る蠅共を早く叩き落とせ」


 西コルニャ海軍基地に停泊していたのは小規模ながらも戦艦2、巡洋艦4、駆逐艦5であった。

 対空砲で撃ちまくればいずれは落ちると海軍司令は考えていたのだ。

 基本、対空砲は高速で飛びまわる戦闘機には命中しない。

 現に、空に向けて雨霰あめあられ五月雨さみだれに砲弾や機関銃が放たれているのだが、今のところ撃墜できたのは2機だけである。


 来援した『ビクトリアⅣ』150機が、味方からも対空砲が飛んでくる中で何とか空戦を繰り広げている状況なのだ。


「しかし、空軍も当てにならんな……いくら数で負けているとは言え、気合が足らん。このスピーニアの面汚しめが」


 最悪な時には最悪が連鎖するものだ。

 艦隊を率いるジュナ司令は空軍と折り合いが悪かった。

 しかもこれまでランディス艦隊を撃退し続けて来たと言う強い自負を持っていた。


 彼は忌々しい物を見るかのような目で遥かなる虚空を見つめながら苛立ちの混じった声を上げる。


「航空機攻撃だけだと……? ランディスのロライナ西方艦隊は戦う気があるのか?」


「巡洋艦〈モルティ〉大破炎上中です! あっ戦艦〈カロリーナ〉が猛烈な爆撃を受けている模様!」


「ええい! 空軍は何をしているッ! 爆撃機などと言う鈍重な物、さっさと落とせ!」


 当然、ジュナ司令が乗っている旗艦、戦艦〈サラマン〉にも爆撃機が群がっており、絶えず衝撃に襲われて大揺れに揺れていた。


「レーダーに敵艦隊の反応はないのか?」


「ありません」


 レーダー士が素っ気ない態度で答える。

 元々大した探知機能など搭載していないのだからしょうがない。

 しかも敵戦闘機に襲われてからは速力も落ちており進んでいないのだ。


 その時、もう1つの戦艦に大きな水柱が上がる。


「せ、戦艦〈カロリーナ〉被弾! 傾きます!」


「何ッ!?」


 双眼鏡で様子を確認すると海を走る白い波が戦艦に向かっていた。

 ジュナ司令はそれが何か理解できずにじっと目を見張る。


 轟音と共に再び大きな水柱が複数個所に上がった。

 更に船体を傾けた戦艦〈カロリーナ〉はそのまま大爆発を起こし真っ二つに割れて海中へと没していく。


「何だあれは!? 攻撃か?」


「せ、戦艦〈カロリーナ〉……轟沈……」


「そのようなこと、分かっておるわ!」


 不機嫌になった司令に怒声を浴びせられたオペレータが首をすくめる。


「報告。同じような白波がこちらへ向って伸びてきます。その数7」


 ここに至ってようやく彼の心に僅かな恐怖心と警戒心が首をもたげた。

 嫌な予感に従ってすぐに叫ぶ。


「避けろ! 何としても躱せ!」


「取ーりかーじ一杯!」


 しかし全てを躱せるタイミングではない。

 艦長が悲鳴に近い声で皆に注意を促す。


「各員、衝撃に備えろッ!」


 その瞬間、凄まじいまでの轟音と衝撃がして立っていた司令や艦長が投げ出されるようにして床に倒れた。

 艦長は頭をぶつけて流血し意識が朦朧として立つことも叶わない。


「被弾多数! 穿孔せんこうからの浸水を認める!」


「ぐ……すぐに注――」


「間に合いません! 沈みます!」


 突きつけられた現実にジュナ司令が茫然自失となり、顔面は蒼白だ。


「戦闘機に負けるだと……? 有り得ん……」


「総員、退避しろ。急げ……」


 声を掛けても無駄だと判断した艦長は息も絶え絶えになりながらも乗組員の脱出を選んだ。動かない司令を残して艦長は部下たちに引きずられるようにして退避させられていく。


 何とか沈没前に脱出した艦長は助けてくれた部下と共に海上から旗艦が沈んで行く様子を見ていた。荒波に揉まれながら苦々しい顔になってしまった彼から呟きが漏れる。


「何と言うことだ……戦艦が戦闘機に沈められたと言うのか……。ランディスめ、ここまで徹底的にやるとは……」


 ここに至ってようやく従来の戦争とは違うと気付いた者が現れた。


 戦禍は飛び火し、どんどんと広がっていくこととなる。

ありがとうございました。

また読みにいらしてください。

明日は12時の1回更新です。


面白い!興味がある!続きが読みたい!と思われた方は是非、

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モチベーションのアップにも繋がりますのでよろしくお願い致します。

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