第37話 世界相剋
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『セレンティア・サ・ガ』
~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~
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――聖ゼノ暦4216年4月17日(ユリウス歴2570年4月17日)
世界各国はその動きを活発化させていた。
結局、世界初となるはずのゼノ国際会議は無期限の延期と決定された。
ユースティアの外交努力が水泡に帰した訳だが、腐っている余裕などない。
目の前で起ころうとしている戦争をしっかりと終結させなければ、仮に国際機関ができたとしても待っているのは前世界のような覇権国家同士の対立だ。
ランディス合衆国は再び、カヌール海海上にフォルニア東方艦隊を派遣。
再編成されたその規模は以前よりも明らかに艦船の数が増加していた。
その動きに伴い、ユースティアから退役目前の艦船を贈与されていたタイカ民主国は北にあるトンク港に集結させていたカホク北方艦隊を動かした。退役目前で更にスペック落とした艦船をとは言え、元は護衛艦であり、高い攻撃性能を持っている。共同軍事演習を行い、実戦に慣れさせるのには時間が掛かったが、それなりに戦えるレベルまでは引き上げられていた。
艦隊の軍艦を兼ねた指導海防隊員が乗船しており、ユースティアに抜かりはない。ユースティア政府にはタイカ民主国を荒れさせたくないと言う気持ちがかなり強いのだ。
それに単なる友好国としては他国からの緩衝地帯となってもらう意図以外にも、油断すると何処にでも現れる共産化の波からの防波堤にもなって欲しいと言う思いがある。
神聖ヴァルガリア帝國はランディス合衆国の動きに対して、タイカ民主国への侵攻は認めないと警告を発し、ポートノワールの軍港の東方艦隊と再編された神聖ガリア艦隊に出撃待機命令を出す。これは何かが起こった時にすぐに対応できるように準備段階に入ったと言うことだ。
ランディス合衆国がタイカ民主国へ向かえば、直ちに出撃して牽制、もしくは攻撃を加える意志を示した。
この軍事行動に世界に緊張が走った。
獅子州連合は聖ルーシ共和国とルジナート連邦との国境沿いの防衛線に張り付いている戦車、対地、対空兵器を持つ陸軍の警戒レベルを上げさせる。
内地の航空戦力にも、常時航空編隊でのスクランブル発進が可能な状態へ移行した。
同時に獅子州北部連合艦隊をブリタンニア王国の北、ルジナート連邦の西にある大北海へ展開。
アトランティス帝國への備えである獅子州西部連合艦隊を獅子州の最西端スピーニア国の北に集結させ準備段階に入った。
だが、大北海にはランディス合衆国のロライナ西方艦隊も存在している。
◆ ◆ ◆
――ユースティア
世界各地から届く急報に首相官邸は騒然としていた。
だが既に厳戒態勢に入っており、事が起こればすぐにでも命令を下すことは可能だ。
「敵さんもこっちから攻撃させようと誘ってるなぁ……しかし俺の代に戦争何回やれば気が済むんだよ」
スレイン総理が相変わらず愚痴を零しているが、相手をするのは国防大臣のユベールくらいのものである。
「世界大戦が起きそうになるとは思いませんでした」
国内を纏めて、外国と友好関係を築いたら非常事態宣言を解除して早期に総理の座を若い世代に任せる気満々だったスレインとしては、想定外の世界情勢であった。それもこれもこの世界の常識が前世界のものと大きく異なっており、全くと言って良いほど話が通じなかったせいなのだが。
「神聖ヴァルガリア帝國とは上手く連携を取るように。後、動いてない国はあるか?」
「やはり陸はまだ動きがない国が多いですね。スタン帝國、バーラデリ共和国、タイカ周辺も現在は落ち着いております。オースティン大陸は無人哨戒機を飛ばしております」
ユベールと共に、国家参謀長官も彼に状況を説明する。
「アトランティス帝國、神聖トールドル帝國、ガラベルム帝國の動きはありません」
哨戒機や偵察衛星、軍事衛星、通信衛星を用いて遠距離の国の動向も探っている。衛星に関しては早期の異常は発見できないが、世界各国の国内の基地の位置や艦隊の移動なども把握できるため役に立っている。
転移後に何とか予算を投入した成果がここに来て発揮されていた。
「しかし、国内も国内だわな。戦争に加わるなと言ってるが、国民が知ってるのは自分で取材した訳でもないマスコミの情報だけだからな。政府の見解を垂れ流しているだけなのが嫌なら自分で取材すべきなんだよ。大体、タイカが落ちればマグナ半島とクレア半島が危険になって、半島が落ちれば本国が防衛線になるんだぞ? そんなことできるかよ。それにしても占領統治の終了から114年か……未だ自縄自縛は解けず。これだけが俺の心残りだよ」
そうなのだ。スレインはユースティアの敵はユースティアだと言う状況を打破したかった。
そのために総理大臣になったのである。
彼の強い想いを知っているユベールとしても何とか力になりたかったと言うのが本音だ。
「過ちを犯したのは敵国なのに、『もう我が国は過ちを繰り返しませんから』とはよく言ったものです。たった1度の敗戦で、ここまで卑屈になれるのは占領政策の賜物でしょう」
「ユースティアにはユースティアの歴史が築き上げてきた思想と価値観がある。国益を第1に考えるのは当然としても、それに反してまでランディス合衆国陣営に加わる訳にはいかないな。俺たちまでこの『ゼノ』に染まる訳にはいかねぇんだ」
「まぁ敗北は必至となれば別でしょうが」
「とにかく、我が国が勝利の鍵を握っているのは疑いようのない事実だ。批判と反対することだけが生き甲斐の奴らの意見ではなく、忖度なしのシミュレートの結果だからな。傲慢になるのはいかんが、あまりに自虐が過ぎるのも問題だ」
間もなく『ゼノ』初の世界大戦、国家総動員の戦いが起ころうとしている。
ユースティアにとっては前世界での苦い敗戦の記憶があるが、それもまた経験として蓄積されている。
今こそ教訓を生かす刻なのだ。
スレインはユースティアの平和と世界の安定化のために奔走する。
◆ ◆ ◆
――聖ゼノ暦4216年4月19日(ユリウス歴2570年4月19日)未明
刻が動き始めたのは北アトランティス大陸と中央大陸北西部獅子州の間の海域であった。
ランディス合衆国のロライナ西方艦隊は、同じく大北海で待ち構えていた獅子州西部連合艦隊を大きく迂回する形を取ったのだ。
低速で獅子州へ向かっていたロライナ西方艦隊は、空母から艦載機を多数発艦させ、獅子州最西端の国家スピーニア国付近で捕捉される。
突如として出現した敵艦隊にスピーニア国の西コルニャ海軍基地は大いに混乱した。
「敵戦闘機多数!! 数はおよそ300です!!」
レーダー士から悲鳴のような報告が飛んだ。
それを聞いた基地司令は思わず悪態をつく。
「ええい! 西部連合艦隊は何をしていたのだッ!! いや……それより何故レーダーで捕捉できなかった!?」
「げ、原因不明であります!」
レーダー士を怒鳴りつけようとしていた司令に副官が割って入る。
「司令、原因の究明は後にして直ぐに対処すべきです。後方の空軍基地から戦闘機の派遣要請を!」
「分かっとる! 対空砲用意!! 通信士はすぐに航空支援を要請しろ!!」
『こちら西コルニャ海軍基地、我、戦闘機による攻撃を受けつつあり! 敵国は不明!! 緊急事態につき航空支援を要請する!!』
「すぐにこちらもあるだけ上げろ! 艦隊も全て出して遅滞戦闘に努めるぞ! 後は西部連合艦隊にも連絡を取れ!!」
この世界は平面である。
つまり海にはまったく遮蔽物はなく、高出力の電波は遠くまで届く。
大北海にいるはずの西部連合艦隊とも通信は可能である。
「司令、超電磁砲搭載艦は如何しますか?」
超電磁砲とは前世界で言うところのレールガンではなく電磁パルス攻撃に特化した砲のことである。
巻き込まれれば周辺全ての電子機器はその動きを止めるだろう。
「対アトランティス用だからな……沈められる訳にはいかん」
「あれは単艦での運用を想定していますからね。下手をすれば味方も全て行動不能になってしまいます……」
「仕方なし……艦隊は超電磁砲搭載艦を護るように展開しろ。粘っている間に戦闘機を叩き落として、敵艦隊にぶっ放してくれん!!」
ここに世界大戦勃発のきっかけとなる戦闘が開始されようとしていた。
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