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混沌なる異世界(カオス・ワールド)~様々な異世界国家が集まる異世界の坩堝~  作者: 波 七海
第二章 変わる世界編

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第35話 各国大使集合 ①

いつもお読み頂きありがとうございます。

本日は12時の1回更新です。

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評価★★★★★とブクマをして頂けると嬉しいです!


こちらも読んで頂けると嬉しいです。


『セレンティア・サ・ガ』

~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~

https://ncode.syosetu.com/n3022kp/

 ――神聖ヴァルガリア帝國 帝都ガリア とある酒場にて


 呑兵衛たちが今日の労働を終えて、お疲れ生ですと一杯やっていた。

 最近になって入ってきたビールで帝國のものよりも喉越し爽やかで、弾ける感じが受けている。それはユースティア産のものであった。


 通商条約が結ばれて国家間貿易が始まったため、ユースティア産の製品は神聖ヴァルガリア帝國内を席巻していた。


「しっかしよぉ、前のニュースってホントだったのか? ランディス合衆国にやられたって話が出てたじぇねぇか」


「もうあれから大分経ってるからなぁ……それほど被害もなかったって話じゃなかったか?」


「噂で大敗北したって話が出てたけど、それならすぐに敵軍が押し寄せてくるだろ。来ないってんならそう言うこった」


 神聖ヴァルガリア帝國内では箝口令が敷かれているが、ランディス合衆国が黙っているはずがない。散々、交戦内容と結果を大々的に報道し、他国にも流していたため、既に帝國民たちの知るところとなっている。


 公然の秘密と言う訳だ。

 だがそれを信じるか信じないかは個人の自由である。


「つーかよぉ……やられたらやり返すよなぁ! うちが動いてねぇってことは偽情報なんじゃねぇの?」


「だよな! 政府は何も言ってねぇし、中央世界の覇者たる俺たちが負けるはずがねぇよ!」


 彼らの会話を聞いていた1人のドワーフの男が大きな溜め息を吐くと、口を開く。心底馬鹿にした口調で。


「お前ら本当に底抜けの馬鹿だな」


 それを聞いて酔っ払い共のボルテージが一気に上がる。


「ああん!? 何が言いてぇんだよ! 俺たちのどこが馬鹿だってんだ!」

「そうだそうだ! 馬鹿なのはてめぇらドワーフの方じゃねぇか!」


「だからこの国は駄目なんだよ。負けるはずがない? 根拠のない自信とプライドだけは持っているんだな。やられたらやり返す? 動いてない? お前ら本気でそう思ってんのか? やりたくてもやり返せないほどコテンパンにやられたから動けないと何故考えないのか?」


 そこまで自信満々に言われると一転して弱気になってしまう呑兵衛たち。

 それでも疑問は尽きないようで、ドワーフの男に喰って掛かる。


「ぐぅ……で、でもよぉ……そんなに帝國が大敗北したってんならどうしてランディスは攻めてこねぇんだ?」

「そ、そうだぜ。最初に勝ったなら一気に攻め込むのが普通じゃねぇのか?」


 律儀にもその疑問に答えてやる辺り、ただの一般人ではないようだ。

 ドワーフの男は冷静になれと彼らを宥めつつ自論を展開する。


「勢いに任せて1国だけで攻め込んでも勝てるとは限らないだろ。海で勝っても陸で勝てるか分からんからな。それに周辺国家の状況を考えてみろよ。ランディスが神聖ヴァルガリア帝國に侵攻したらルジナート連邦や獅子州連合が動き出すぜ。あいつらは仲が悪いからな」


「確かにそうみてぇけどよ。せっかくの好機ってヤツなんじゃねぇのか?」

「俺ならルジナート連邦と組んで攻め込むぜ!」


 こいつらも考えれば分かるんじゃないかと男は思いながら、今世界で起きているから予想できることを話していく。


「んだよ。分かってんじゃないか。ランディスは世界中に向けて大勝利を喧伝してる。そして実際に動揺が広がっているんだ。神聖ヴァルガリア帝國は実は張子の虎でしたってな! となると必然的に帝國から離れようとする国も出てくるし中央世界を狙う国だって出てくる。ランディスはそんな国をまとめ上げてから、攻め込もうとしてんだよ! 勝利をより確実なものとするためにな!」


「マ、マジかー!!」

「そいつはやべぇ! 早く逃げねぇと……」

「今更何処へ逃げるってんだよ!!」


 急に及び腰になった呑兵衛たちの言葉に若干引きつつも男ははっきりと明言する。それはもう予言と言っても良い。


「お前らも単純だな……ちょっと心配になってくるわ。まぁ聞けよ。最近はやけに世界が静かだと思わないか? これは恐らく戦争の準備期間って奴だ。嵐の前の静けさってな。俺は神聖ヴァルガリア帝國陣営とランディス合衆国陣営との戦争に突入すると考えてるぜ?」


「お前さんは何モンなんだよ」

「なんだか詳しそうじゃねぇか!」

「何か知ってんのなら教えてくれよな!」


「俺は記者だからな。こう見えて世界中を回ってる。仲間たちと連携してスクープを取るためになぁ!!」


 一記者にできることなら当然、国も分かっていることだと酒場にいる者たちは安心した。たった1度の敗北で国家滅亡の危機に陥るはずがない。

 それに彼らに刷り込まれた中央世界の超大国と言う自負が、そう言う考えに至らせる。


 結局、記者の言葉もなぁなぁになってしまった。

 彼は別に納得させたかった訳でもなかったので、その後は特に口を挟むでもなくそっと酒場を後にした。


 呑兵衛たちの夜は更けていく。




 ◆ ◆ ◆




 ――神聖ヴァルガリア帝國・帝國府大会議場


 帝國の政治の中心である帝國府の大会議場には主要各国の大使たちが集合していた。


 神聖ヴァルガリア帝國の帝都ガリアには多くの国の大使館が存在している。

 それは敵対関係にある国も例外ではなく、必要な時に交渉が持てるようにと外交特権を与える形で在留させているのだ。


「それでは、話を始めさせて頂こう。神聖ヴァルガリア帝國外務大臣のラングラルである。此度は集まって頂き感謝申し上げる」


 この場にいるのはランディス合衆国、ルジナート連邦、獅子州連合、ドラゴニア、パトリア帝國、スタン帝國、バーラデリ共和国、大ザナーク帝國、ムー連邦、タイカ民主国、ユースティアの国の大使たちであった。


 開口一番、激しい口調でラングラルを責めたてたのはランディス合衆国大使とスタン帝國大使。双方とも神聖ヴァルガリア帝國に攻撃を受けた国である。


「一体どう言うおつもりか? 我が国は未だ正式な謝罪と賠償を受けていないのだ。それが行われない限り話すことはないと言ったはずだが?」

「その通りだ! 我がスタン帝國も貴国の一方的な攻撃を受けている被害国である! それを認めて頂きたい」


 それを気にする様子もなくラングラルは帝國の主張を押し通そうとする。

 悪いのはあくまでタイカ民主国へ武力介入しようとして、世界の秩序を混乱させたランディス合衆国とスタン帝國であると。


「今回集まって頂いたのは他でもない。ランディス合衆国が我が国に侵攻せんと国家連合を組もうとしている件についてである。何故そのようなことを目論むのか甚だ疑問だ。我が国には交渉の準備がある。ランディス合衆国とスタン帝國共にだ!」


「一体何のことを言っているのか分からないが、我が国はそちらの交渉に応じている。だが一向に話が進まないのはそちらに話し合いの意志がないからではないのか? まずはそちらの非から認めて頂きたい!」


「我が国も同様だ。我が国がどのような軍事行動を取ろうが貴国には関係がないはずである。急に我が国を空爆してきた件について早急に正当な言い分を聞かせてもらおうか」


 国家連合の話など認めるはずがないランディス合衆国大使と、多大なる被害に対して怒りの治まらないスタン帝國大使が食い下がる。

 スタン帝國大使の言い分に思うところがあったタイカ民主国大使が激しい口調で捲し立てる。


「それに関しては我が国にも言いたいことがある。貴国とバーラデリ共和国軍がタイカの地へ侵攻してきたことを批難するものである! 特にスタン帝國は一時我が国の領土を侵害し基地まで造ろうとしたことは忘れたとは言わせぬ!」


 もちろんそれに同調するのは神聖ヴァルガリア帝國だ。

 正式に国交を結んでいる以上、助けを求められたならば介入するしかない。

 例え、安全保障条約を結んでいなくてもだ。

 それが帝國の基本姿勢であり、超大国としての自負である。


「タイカ民主国大使の言う通りである。我が国はランディス合衆国、スタン帝國、バーラデリ共和国の干渉を受けたタイカ民主国を護るべく動いたに過ぎない。それが正当な理由でなくてなんと言うのか?」


「何を綺麗事を言っているのか? この世界は弱肉強食だ。弱い国は狩られるのみ。いつから貴国が世界のルールになったのだ?」


「貴国が干渉する権利などない。この卑怯者の騙し討ちガリアが!」


 ランディス合衆国大使もスタン帝國大使も激昂して自国の主張を曲げようとしない。それを聞いて怒りが収まらないのはタイカ民主国大使も同様だ。


「干渉する権利がないだと!? ならば貴国が我が国に干渉する権利もない! 我が国が何処に支援を求めようと貴国に文句を言われる筋合いなどないのだ!」


 タイカ民主国大使がそう言うならば、面倒を見ているも同然のユースティアとしても発言するしかない。ユースティア大使は冷静に挙手して発言が認められる。


「我が国としては各国に自重を求めるものである。既に通達したように世界国際会議を行う予定である。貴国らはこの世界で好き勝手にやり過ぎだと言わざるを得ない。我が国は世界平和を実現したいと考える。例え摩擦が生じたとしてもまずは話し合いから始めるべきだ」


 そう言いつつも、これは神聖ヴァルガリア帝國にも刺さる発言だ。

 だがユースティアとしては断じて曲げる訳にはいかない。


「ムー連邦としてもユースティアの唱える国際法?造りは必要ではないかと考えている。少なくとも宣戦布告もなしに攻撃するのは如何なものか」


「それは尤もな話だな。我が国はまさに通告なしの問答無用で攻撃を受けたのだ。となれば悪いのは神聖ヴァルガリア帝國と言うことになるが?」


「我が国も通告なく攻撃を受けている。残念なことであり、これは批難されるものではないか?」


 ムー連邦大使の発言に我が意を得たりとランディス合衆国大使とスタン帝國大使がここぞとばかりに反論する。

 言動不一致なのだから彼らとしては、そこを突いてくるのは当然のこと。


「それは言い掛かりと言うものだ。両国にはタイカ民主国に介入しないように事前通告を行っている。それを無視すればどうなるかは貴国らが1番理解しているだろう」


「当然のことである。そもそも他国に介入することに理由など必要なのか?」


「ルジナート連邦としても貴国と獅子州連合には散々攻められており迷惑している。何とかしてくれるのだろうな?」


 ルジナート連邦大使までここぞとばかりに皮肉ってくる。

 ユースティアもぐうの音も出ないほどの正論で殴りたいところなのだが、味方である神聖ヴァルガリア帝國の日頃の行いの悪さのために持論を展開しづらい状況だ。

 だが、主張しなければ何も始まらない。

 特にこの世界のような前世界の常識が通用しない連中に対しては強く出る必要があるとユースティアは学んでいた。


「何度も言うようだが、そのようなことが起こるからこそ、世界国際組織を創り、国際法を定める必要があると我が国は主張する。我が国はこの世界の価値観を変えたいと考えている」


「そのようなものは弱者の戯言だ。竜人たる我々は強者を尊ぶ。我を通したいならば強くなることだな」


 ドラゴニア大使が余計なことを口走る。

 こいつら1度絞めてやろうかとユースティア大使が苛立ち始めた時、獅子州連合のフリーレンス共和国大使が先に口を開く。


「正直、強い国だけで世界の枠組みを決めてしまえば良い。獅子州連合としては獅子州に対する如何なる攻撃にも反撃するだろう。ルジナート連邦は中央大陸から駆逐してやるし、ランディス合衆国も攻めてくるのなら叩き出してやろう」


「それはちと言い過ぎではないか? 我がドイチェルト帝國としては戦いのない世界になるのならそれが1番良いと考えるがな」


 獅子州連合の中でも意見は分かれるところのようで決して一枚岩ではないらしい。


「ドイチェルト帝國大使の言う通りである。我が国は正義を執行したに過ぎず批難される謂れはないと考えている。しかし、これから世界の秩序を作っていくためにまずは話し合おうと言うスタンスだ」


「だからお前が言うなと言っている! 貴国は自分勝手が過ぎると言うのが分からないのか? 貴国の言う正義など独善的なものであり他国が従う必要などない」


「では1対1で勝負してみるか? 我が国と貴国だけでな。世界中を巻き込む必要など無かろう。貴国が連合を組もうとしているのは筒抜けだと言っただろう?」


「ほう……よくぞ言ったな。またカヌール海戦の大敗北を思い出させてやろうか……」


「ふん。簡単に勝てるとは思わんことだ。徒党を組まねば動けない分際でな」


「(おいおい。お前が勝てるとはうちらは思ってないんだよ……自国を客観的に見れないのは駄目だってよく分かんだね……)」


 ユースティア大使としては頭を抱えるしかない。

 一体その自信は何処から出てくるのかと問い詰めたい。

 大体、この罵倒合戦が国際的な場で行われていること自体がユースティアからして信じられない。超大国が好き勝手やっていた前世界でもここまで酷くはないぞと溜め息しか出ない。


「両国共自重するように。これは話し合いの場である。喧嘩をするために設けられたものではない」


 ようやくこの場を仕切るべき議長が、まともな発言をしたことでユースティア大使は少しばかり安堵した。


 だが、この罵倒合戦、もとい会議はまだまだ終わりそうにない。


 どうやって収めたものかと頭を悩ませるのはユースティア大使のみであった。

ありがとうございました。

また読みにいらしてください。

明日は20時の1回更新です。


面白い!興味がある!続きが読みたい!と思われた方は是非、

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竜人は革のバッグにでもすべきでは…?と、ボブは訝しんだ。 それぞれの国の立場や主張、歴史観なんかありますし話し合いは平行線ですよねー。 無能な働き者と化したヴァルカリア帝国、負けたら強制的に親ランディ…
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