第34話 動き出すユースティア
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『セレンティア・サ・ガ』
~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~
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聖ゼノ暦4215年12月13日(ユリウス歴2569年12月13日)。
ユースティアは中央世界と東方世界の国家群に対して大がかりな諜報活動を行っていた。技術力はさておき、まだまだ未成熟な国家であるスタン帝國やバーラデリ共和国からは比較的容易に情報が得られている。
スタン帝國は空軍を再建中で、陸軍を神聖ヴァルガリア帝國との国境付近と南タイカ海にほど近い陸軍基地に集結している。
バーラデリ共和国はユースティアとタイカ民主国連合に魔導艦隊を撃滅されたため、こちらも再配備を急いでいる状況だ。
またスタン帝國と同様に陸軍は神聖ヴァルガリア帝國国境沿いに展開中である。
これらに対してはタイカ民主国の南西部――南タイカ海に位置するタイト港に護衛艦隊群を2つ派遣している。両国共に海軍も保有しているので牽制のため、と言うのもあるが、ランディス合衆国が動いた時にカヌール海に出られるようにするためでもある。
また東方世界の大東洋の諸島やパトリア海の南東諸島には海防基地及び、空防基地、補給施設を作らせてもらいそれぞれ1個護衛艦隊群と戦闘機を配備している。
これはパトリア帝國とガラベルム帝國への牽制のためである。
中央大陸とオースティン大陸は南タイカ海で隔てられてはいるが、魔導艦でも渡れるため、これもタイト港に魔導艦隊を派遣済みだ。両大陸に魔導艦隊を送り込めるのはユースティアにとっては、かなり有利に働くと言える。
迅速な援軍派遣が可能になるからだ。
神聖ヴァルガリア帝國がランディス合衆国陣営と互角に戦えるとは考えておらず、押されに押されるだろうと予測している。いくら帝國がユースティアの想定を下回る軍事力だとしても、世界に与える影響力は依然大きいのだ。
滅ぼされてしまっては困ることになるのは目に見えている。
タイカ民主国についてはかつての朝貢国家が独立し、元宗主国に牙を剥こうとしているためクレア半島、マグナ半島にも以前と変わらず常駐させている。
周辺国家である元朝貢国とは国交を開設しているため、タイカ民主国内の混乱に乗じて攻め込まないように要請しており、情報調査省としては有事の際にも動きはないものと分析しているが念のためだ。
タイカ民主国へは国内の地方軍閥の動向にのみ注視、警戒するように提言しているので、事が起これば一気に国内を掌握できる可能性はあるだろう。
アトランティス大陸に関しては遠すぎるため、現地諜報員が主だが、アトランティス帝國はランディス合衆国に同調して獅子州連合に侵攻するだろうと予測している。また南アトランティス大陸の神聖トールドル帝國の動きは未知数だが、こちらも現地諜報員を中心に状況を見守っている。
どちらも高い軍事力を保有しているため、海上艦隊や魔導艦隊の派遣が検討されたが、やはりその距離がネックであった。
ルジナート連邦はこれまで北、西、南が全て敵であったことから、ランディス合衆国の策に乗る可能性は高い。
北からの圧力がなくなれば、南下できるからだ。
ユースティアとしては中央世界の周辺にも、軍事的に介入したいところなので、そのように要請したのだが中央世界は神聖ヴァルガリア帝國の領分だと断られてしまった。相変わらず、今まで築き上げてきた面子やプライドが邪魔をしているのだろう。
ドラゴニクとは国交あり、神聖ヴァルガリア帝國の古くからの同盟国だと言うことなので問題はないだろうが、軍事力の面では不安が残る。
神聖トールドル帝國が中央大陸へ侵攻すれば、抑えられるとは思えないのだが、彼の国も竜人だけに人間より強いと言うプライドを持っているようなので交渉は中々に難しいのだ。滑走路と補給施設を造る許可が下りただけでも僥倖であると考えなければならないだろう。
ユースティア政府は世界大戦規模の戦争が起こっても、緒戦で痛撃を与え終結に持ち込むことは出来ると判断していた。その強力な魔導科学を生かした軍事力は世界屈指だと考えているが、如何せん数が少ない。
特に現在の陸防隊の規模では中央大陸に手が回らないだろう。
魔導と科学を融合させた兵器や艦船などはかなり整備して保有しているものの、それを使用する人員がいないのだ。募集は常に掛けているのだが、志願制では急激な増加は期待できないし、今でも国防隊に入隊する者は増えてはいるのである。
故に、交渉で進める。
戦争の結果はよっぽどのことが起こらない限り始まる前から決まっている。
事前の準備をどれだけ周到にしたかによって勝負は決まるのだ。
――パトリア帝國
中央世界の東部を領しており、東方世界、南西世界に睨みを利かせているパトリア帝國にオボロ・フジワラは訪れていた。
最近、と言うかずっと扱いが酷いのではないかと思うオボロであったが、次々と降りかかる問題に仕方ないとも思ってしまう。
一応は神聖ヴァルガリア帝國の同盟国であるようだが、そこまで良好な関係ではないようだと情報調査省から報告が上がってきている。
それはユースティアが転移する前からの確執なので、それ以前からゼノに存在する国家ならその事実を認識しているはず。
ランディス合衆国が味方に引き込むべく接触している可能性は大いにある。
ならば、ユースティアが取る選択肢は1つ――釘を刺しておくことだけ。
美しい白塗りの壁に、部屋に置かれた歴史を感じさせる逸品の数々。
外交の場としては過度に飾り過ぎず、殺風景でもない最適な部屋にオボロは通された。待たされることもなく、時間通りに外務帝大臣のガッバーナがやってくると握手を求める。
好感の持てる良い国だと言うのがオボロの第一印象。
「此度は我が国との交渉の場を持って頂けたことに感謝申し上げます」
「いえいえ、私共の方こそ、お声掛け頂き光栄です。我が国としてもまたご連絡を差し上げようと考えていたところでして」
「それは重畳です。この頃は世界が緊迫した様子ですから国際協調と言う考え方も必要ではないかと思っております。神聖ヴァルガリア帝國とも交流がある貴国とは友好的な関係を築きたいものです」
「なるほど……国際協調ですか。確かに帝國と貴国から国際組織を作り出すとの打診もありましたな。それに我が国としても貴国とは友誼を結びたいと考えております」
最初は軽い牽制から。
お互いがお互いの認識を共有する。
「ははは。これで両国の友好は約束されたようなものですね。しかしそうなると懸念点が出てきますね」
「む? それは如何なることでしょう?」
そして切り出すの本題だ。
オボロは別に味方になれと言いに来た訳ではない。
釘を刺しておくだけなのだから。
「ランディス合衆国のことですよ。世界の秩序を乱さんとする国を放置しておくことなどできようはずがありません」
「ほう……貴国は列強国と事を構えるおつもりかな?」
ガッバーナもただの大言壮語とは思わない。
まだユースティアの国内状況も不明だし、タイカ大帝國との戦いも見たわけではないが、あの生物最強である古代龍をも落とした国である。
「世界の繁栄も考えず、自国のことしか考えていない国とは共存できませんね。我が国はあくまで交渉を続けるつもりですが、あちらに引く気がないのであれば是非もありません」
「確か貴国はタイカ大帝國を破った国だったが、再び列強国を落とそうと言うのですか?」
「別に落とすなど言う考えは持ち合わせておりませんが、戦争への介入も止む無しと判断がなされれば、少なくとも中央大陸からは叩き出そうと我が国は考えております」
「そのようなことが可能なのですか? 彼の国は多くの国家を味方に引き入れていると聞きますが」
然も簡単なように平然と言ってのけるオボロから感じられるのは余裕。
だからガッバーナも思わず聞かずにはいられない。
「我が国は出来ないことを出来るとは言いませんよ。ただ貴国の動き次第ではもっと楽になると言う話です」
「……!!」
ガッバーナは目の前の男が何処まで事態を正確に把握しているのか気になった。
パトリア帝國の動向は筒抜けなのかと勘違いしてしまう。
「とにかく神聖ヴァルガリア帝國と我が国は国際秩序を護り、平和を維持すると言う共通の認識を持っております。彼の国が敗戦の憂き目に遭いそうならば介入する意志があるとお伝えしておきましょう」
「何故、そこまで言い切れるのですか……? ランディスの陣営に加わる国は多い……不利だとは考えないのですか?」
実際は両国間で国際秩序の考え方に相違があり、そこにはユースティアは気付いていないのだが。
「我が国が希求するのは平和です。そしてそれを国是として歩んでまいりました。しかしそれを求めるのには武力が必要なのも知っております。我々にはそれを為すべき力があると言っておきましょう」
ここまで大口を叩くのだから相当な自信だ。
いや、我が国を巻き込むための強気な発言に過ぎない。
2つの思いがガッバーナの脳裏をよぎる。
彼が考えるのはパトリア帝國を敗戦に導かないこと。
ユースティアは自国の勝利は元より世界平和のために戦うと言っているようなものだ。オボロの態度からは慢心ではなく、自信と覚悟が感じられる。
「(皇帝陛下の仰った通りかもしれない。ユースティアはただの平和主義国家ではない)」
「ちなみに1つお伝えしておきましょう。貴国がガラベルム帝國と開戦直前までいったのは我が国も承知していることです。では何故帝國が突如として引いたのか。それは我が国が圧力を掛けたからです。我が国は既にガラベルム帝國海軍と戦い、これを撃滅した経験があります」
「そ、そんなことが……。我が国が帝國と衝突寸前までいったこともご存じだったのか……」
オボロは味方する気がないのなら、傍観しろと言っている。
それを理解したガッバーナはその意図に気付き、大した覇気を纏っているでもない目の前の男から発せられる得も知れぬ気配を嗅ぎ取った。
「委細承知した。貴国の意図は必ずや皇帝陛下へ上奏し、政府にて検討することを約束しましょう。もちろん国交交渉も並行して行いたいと考えております」
「それは我が国としても望外の喜びです。これで私も本国に安心して戻れると言うものです」
両者は最後に再び固い握手を交わした。
両国が手応えを感じる有意義な会談となったことは双方の首脳たちは満足するだろう。
「ランディスが動くのは速いだろう。ガリアが態勢を立て直す前に軍事行動を起こすはず……ユースティアの自信の源泉を確認せねばならない」
会談後、皇帝トラヴィスⅢ世と政府統合帝大臣マイルスの待つ部屋への道すがら、ガッバーナはそう考えていた。
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