第32話 ランディス合衆国の暗躍 ②
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『セレンティア・サ・ガ』
~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~
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――西方世界・北アトランティス大陸・アトランティス帝國
アトランティス帝國ではとうとう国内の内戦に終止符が打たれていた。
国内統一を果たしたノルナーガ公爵は皇帝ポセイドン47世に奏上し天下惣無事令を出した。これによりノルナーガ政権が誕生し、彼が帝國の事実上のトップとなっていた。
今は荒れていた国内を安定させるべく内政に力を入れる一方で、海外進出のために海軍力増強を急ピッチで行っているところである。
ランディス合衆国からの使者が訪れたのは、そんな時期であった。
「さて、貴国の望むは如何なることか?」
「此度はお目通りが叶い、恐悦至極に存じます。中央世界の超大国、神聖ヴァルガリア帝國の件で参りました」
ノルナーガの放つ覇気によって思わず圧倒されてしまう外務補佐官トマス。
列強国たる合衆国の外交を務める者として、少々プライドが傷ついたが、相手も列強国だ。
しかも外務大臣などではなく、トップ自ら出てきたのである。
平伏してしまったのも仕方のないことであった。
「で、あるか」
「は、はい。現在、中央世界の神聖ヴァルガリア帝國が野心を見せ世界制覇の動きがあります。そのため中央世界のみならず我が国の北方世界、そして混乱している東方世界が戦乱の渦に巻き込まれようとしております」
「で、あるか」
「そ、それだけではございません……彼奴らは獅子州連合を使って貴国へと攻め込まんとしております。また中央大陸の各国と手を結び他国へ侵攻の構えを見せております。我が国は帝國と直接戦うつもりですが、手が足りないものと判断しております。つきましては貴国には機先を制して獅子州へと攻め込んで頂きたく」
「で、あるか」
「で……あります……」
無言になり、トマスの目を見つめ続けるノルナーガ。
その圧力に何か言わねばならないのでは?と思わず自問してしまうが、余計なことを言ってしまう訳にもいかない。
だが、ノルナーガは何も言って来ない。
「げ、現在のところ我が国はルジナート連邦、神聖トールドル帝國、大ザナーク帝國、パトリア帝國、スタン帝國、バーラデリ共和国、トナム共和国らと共闘の約定を交わしております。決して敗北することはないかと存じます」
「ほう……貴国はあの神聖トールドル帝國を味方に付けたと申すのか?」
ノルナーガの目が輝いた。
トマスは初めてその厳しい表情が緩んだ気がした。
「はい。色よい返事を頂いております」
「やるではないか。では中央世界と東方世界の現在の状況を聞こうか。何しろ我が国は東方世界とは距離があり過ぎてな?」
喰いついて来たとトマスは心の中でガッツポーズを取る。
ここからが外交官の腕の見せどころだ。
「中央世界は神聖ヴァルガリア帝國が隣国のルジナート連邦、スタン帝國、バーラデリ共和国、そして我が国への侵攻を企図しております。帝國側は獅子州連合とドラゴニアと結び獅子州連合には貴国を、ドラゴニアにには大ザナーク帝國の押さえとし防衛体制を取っております。東方世界につきましてはタイカ大帝國が新興国であるユースティアに敗北し、タイカ民主国となりましたが国内が安定せず、神聖ヴァルガリア帝國が介入の動きを見せている状況です」
「ふむ。包囲網を敷かれておるではないか。我が国の力なぞ必要なのか?」
「もちろんにございます。今こそ列強国たる我々が神聖ヴァルガリア帝國に取って代わり、世界を制するべき刻なのです」
「ほう。今の中央世界の状況でガリアが東方世界に攻め込めるとは思えぬがな」
ノルナーガは何処かこの状況を面白がっているように見える。
「我が国は彼奴らの戦力を過小評価しておりません。長期に渡り世界の調停者を自負してきた地力があると考えておりますので一気呵成に侵攻してくるものと分析しております。それに例え時間を掛けられても国力の高い帝國の優位性は変わらず、むしろ我々にとってマズい状況になるかと」
「で、あるか。それでタイカを破ったユースティアなる国家はどう出るのだ? 東方世界が混乱すれば必ず介入してくるのだろう? 仮にも列強であったタイカを破ったのであれば尚更のこと。現状、タイカ領を占領しておらぬのが不思議でのう」
ユースティアは他国を占領する気がないと聞いていたトマスはそれを信じて、そのまま説明する。
実際、混乱するタイカの地に攻め込まなかった国である。
国土の広さが国力に直結すると考えているトマスはその情報を疑わないし、ユースティアを舐めていた。
「ユースティアについては平和主義国家を自称しており、こちらが攻めなければ動かないと我々は判断しております」
「では、オースティン大陸は荒れるのう」
他人事のような口調がノルナーガの口から漏れるがそれも仕方のないことだろう。
正反対にある東方世界は遠すぎる。
アトランティス大陸を西に進めば待ち受けているのは闇と海が流れ落ちる奈落である。
「その通りでございます」
「あい、分かった。獅子州に攻め込むのは吝かではない。だがこちらには海軍がない。そこで貴国に提供してもらう必要があると考えておるが如何か?」
「我が西方艦隊が大海洋から獅子州の艦隊を叩き出して見せましょう」
「よかろう。陸に上がれば我らの勝ちよ。貴国が制海権を取った暁には我が国が獅子州を蹂躙するであろう」
「は、はい。よろしくお願い致します」
こうしてトマスは十分な手ごたえを掴み、帝都クリティアスを後にした。
城に残るはノルナーガのみ。
交渉が終わった彼は天主閣で暮れなずむ夕日を眺めながら言った。
「愚かなものよ。我が国が調べておらぬとでも思うておるのか? 舐められたものよな。まぁ良いわ。獅子州に少しでも橋頭堡が築ければよい。後は徐々に侵攻するだけよ……。それにしてもユースティアの情報はなかったな。早急に調べさせねばならん。恐らく鍵を握る存在となろう……獅子州を削った後は早期講和も考えておかねばならぬかも知れぬな……」
――南西世界・南アトランティス大陸・神聖トールドル帝國
別名トール大陸。
この場所では反重力物質や未知の鉱物など、他の転移国家の地では見つからないような物が多く発見される。
神聖トールドル帝國はアトランティス大陸中央部のナダル機工国と連携して多くの機械を製作してきた。
この世界の国としては珍しくあまり覇権や植民地に興味がない国家であると言える。科学立国であり、魔導などと言ったオカルトはほとんど信じれれておらず、合理的な思考をする国民性を持つ。
しかし他国と交流はあるものの、鎖国に近い状態であり、もう1つの国民性は知られていない。それは大義のためになら1戦も辞さない気概を持つと言うものだ。
外圧を独力で跳ね返し続けた結果、技術は研ぎ澄まされて現在の科学技術の粋を集めた兵器群が発展した。
ランディス合衆国は、その地力に目をつけたのだ。
白を基調とした無機質な部屋にランディス合衆国外務補佐官コラルドは案内されていた。取り敢えず座って待つように言われただが、何処か心が落ち着かない。
他国と交流はするが、踏み込んだ交渉事までは行わない神聖トールドル帝國に門前払いされなかっただけでも、まずは良しとしようと彼は自分に言い聞かせる。
「この交渉には国家の大事が係っている……何とかせねば……」
入室した際に出されたコーヒーは既に温くなってしまっている。
やはりあまり歓迎はされていないのかと不安になってきた頃、扉が開いた。
「これはご使者殿、遅くなって申し訳なく存じます」
そう言って頭を下げながら入ってきたのは神聖トールドル帝國の外務帝長モンターギュであった。改めて自己紹介をするとコラルドの対面に座る。
「こちらこそ急な訪問となったにもかかわらずご対応頂き感謝の言葉もございません」
実際、北方世界から南西世界へ至るにはかなりの距離を要する。
しかも危険な海域を通る必要があるので危険度は跳ね上がるだろう。
獅子州を西回りした後、アトランティス大陸と中央大陸に挟まれた大海洋をひたすら南下する。
アトランティス帝國とは現在、交渉を持っているが、神聖ヴァルガリア帝國に見つかれば拿捕される危険すらあった。
「それで御用件とは一体どのようなことなのでしょうか?」
「では早速、本題に移らせて頂きます。先日我がランディス合衆国の海上艦隊が演習中に、中央世界の神聖ヴァルガリア帝國の大艦隊に奇襲されてしまったのです。それで――」
コラルドは少々熱弁し過ぎたか?と思うほどに語っていた。
我に返って外交官たる自分のミスを痛感する。
しかしモンターギュは然程気にしていない様子で言葉を返した。
「なるほど……中央世界の神聖ヴァルガリア帝國と言えば、世界の秩序を護る者と伺っていたのですが、そのような卑怯なことを平然と行うとは……」
「そうなのです。今回は何とか退けることができましたが、彼らの脅威はまだ去っておりません。特に北方世界や東方世界ではいつその武力が向けられないかと皆、怯えております」
「対抗できそうな国はいないのですか?」
「はい。現在、我が国を中心に一致団結すべく交渉を行っておりますが、交渉は難航しております。彼の国が触手を伸ばすのは単独で独立を護っている国です。つまりこの南西世界の平和が今、破られようとしているのです!」
「ふむう……それは座視できぬ問題ですな」
「そこで我が国は世界に対して野心を見せた帝國に対抗して、武力を持った国際組織を作るべく奔走している次第です」
もちろん、ランディス合衆国は国際組織など作るつもりなど全くない。
タイカ民主国経由でユースティアからもたらされたことを、そのまま利用しているに過ぎないのだ。そこに大義名分があれば、この国は動くとの思惑からである。
「世界に平和が訪れるのは喜ばしいことです。我が国の皇帝陛下も世界の混乱にはいつも憂慮されております。」
「おお……皇帝陛下が……となれば、是非我々に力をお貸し頂きたい!」
目の前のテーブルに頭を擦りつける勢いでコラルドは頭を下げた。
それに対してモンターギュが難色を示す。
「そうは言われましてもここは中央世界から遠い僻地です。とてもお力になれるかどうか……」
「貴国の科学技術の力を持ってすれば造作もないことでしょう。恐らく帝國は貴国にも派兵すると思われます。その際は我が国が、その背後を突くとお約束致します。その代りに我が国が帝國と1戦交えている際は貴国が帝國へ派兵して頂きたいのです」
「なるほど。我が国はこれまで一部の例外を除いて意図的に他国との接触を断ってきました。もちろん貴国のように平和裏に来られる国もございますが、どうにも虚言を吐いて我が国を喰い物にしようと近づいてくる輩も多いのです。ですから我が国を手の平で操らんとした国には常に怒りの鉄槌を下して参りました。断じて虚言を吐く神聖ヴァルガリア帝國など許すことはできません。我が国としても平和が脅かされる可能性があるのならば戦わざるを得ないでしょう」
「で、では……」
パァッとコラルドの顔が明るいものに変わる。
「はい。この件は必ずや帝國首脳で検討し、皇帝陛下へと上奏致しましょう」
こうして無事に神聖トールドル帝國の言質を引き出すことに成功したコラルドは、しばらくこの異国の地に滞在することとなる。
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