第30話 講和斡旋
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『セレンティア・サ・ガ』
~ゲーム世界のモブに転生したはずなのにどうしてもキャラと本編が逃がしてくれません~
https://ncode.syosetu.com/n3022kp/
ユースティアが神聖ヴァルガリア帝國とランディス合衆国の停戦講和を斡旋する。
神聖ヴァルガリア帝國がランディス合衆国に大敗北を喫した後、ユースティアはまだ交流のなかったランディス合衆国に対してタイカ民主国経由で交渉を打診した。
受け入れられないだろうとの見解が多数あった中、ランディス合衆国は交渉に応じた。ユースティア情報調査省はランディス合衆国が水面下で複数の国家に対して接触を持っていることを掴んでいたため、急ぎ根回しを行い、神聖ヴァルガリア帝國の北にあるポートノワールで会談が行われることとなった。
恐らくはランディス合衆国は周辺国家と連合しての侵攻を計画していると思われ、交渉が妥結するまでの時間稼ぎだと考えられるが、神聖ヴァルガリア帝國が態勢を立て直すくらいの時間は稼ぐべくユースティアも全力で交渉に当たる必要に迫られた。
――ポートノワール
この天然の良港に造られた軍港にユースティア、神聖ヴァルガリア帝國、ランディス合衆国の代表が集まっていた。
ユースティアからは外務大臣のユリアス、神聖ヴァルガリア帝國からは外務大臣のラングラル、ランディス合衆国からは国防長官のモスロー・フォラルと外務長官のリハネス・ジェキンスが参加。
会談はユリアスの一言から始まった。
「此度は両国にとって残念な軍事衝突があったことを非常に遺憾に思います。既にゼノ国際会議の打診をしている通り、世界は新秩序の構築と国際法の制定による平和の実現を目指すべく動き出しております。我が国としては今は両国が相争っている場合ではなく、世界平和に向けて一致協力すべきであると判断し、今回の講和仲介を起こったと言う訳です。両者共に言い分もあるでしょうが、ここは穏便に収めて頂きたい」
すぐに口を開いたのはランディス合衆国の国防長官であるモスロー・フォラルであった。彼は厳粛な態度で主張する。
「此度のカヌール海戦は公海上にて演習を行っていた我が国の艦隊に対して行われた一方的な攻撃であり、断固抗議する。神聖ヴァルガリア帝國には明確な謝罪と賠償を要求する」
それに対して神聖ヴァルガリア帝國の外務大臣、ラングラルも黙ってはいない。
「我が国としても誠に遺憾である。不運な衝突となったのは事実だが、貴国がタイカ民主国に対して圧力を掛けて侵攻しようとしていたことは明白であり、我が国としては座視できなかったと言う正当な理由がある」
帝國側としてはカヌール海戦を偶発的な衝突にしたいようだが、その言い分が通用するとは思えない。
ユリアスは苦しい主張だと感じる。
事実、ランディス合衆国もすぐに反論の言葉を口にした。
外務長官のリハネス・ジェキンスは断固として自国の建前を正当なものとすべく発言する。
「それは甚だ心外であり、言い掛かりであるとしか言えない。我が国はタイカ民主国内の混乱のため、大使等政府関係者と在留邦人を保護する義務がある。そのためにタイカ民主国に早急な治安の回復を要求していたに過ぎない」
「それに関しては我が国からも言わせて頂きましょう。タイカ民主国の安定化はユースティアにとっても至上命題と考えております。とは言え混乱していると言っても内戦が起こっている訳でもなく、国内では話し合いによる協議が持たれており、平和裏に進んでいる状況でした。それがスタン帝國とバーラデリ共和国の武力介入と貴国の圧力により余計な混乱を生んだと考えております。貴国らの行動は軽率であり我が国としても批難せざるを得ません。干渉がなければタイカ民主国が安定するのは確実であり、圧力を掛けたランディス合衆国に対して軽挙妄動を謹んで頂きたいと考えております」
ユースティアとしてはタイカ民主国への介入を断じて認める訳にはいかない。
今、オースティン大陸を列強、準列強国の草刈り場にする訳にはいかないのだ。
ユースティアにとってタイカの地は大きな緩衝地帯であり、それを護るために介入し過ぎず、放置し過ぎずの対応をバランスよく行う必要があった。
泥沼の戦争に巻き込まれる訳にはいかないのである。
「なるほど。我が国としては正当な要求であり、圧力を掛けた事実はない。タイカ民主国に直接武力侵攻したのはスタン帝國とバーラデリ共和国のはずだ。そちらに対して軍事行動を取るのはまだ分からないでもないが、我が国に問答無用で襲い掛かっておいてこちらに責任を押し付けられるのは見当違いも甚だしいと考えるが?」
「問答無用ではない。タイカ民主国に対して不当に圧力を掛けた事実を我が国は掴んでいる。それを阻止すべく海軍が動いたのは確かだが、これは我が国の総意ではない」
モスローはあくまで神聖ヴァルガリア帝國が奇襲してきたと言いたいのであり、ユースティアが何を言おうと関係はない。
標的は未知の国家であるユースティアではなく、因縁の帝國だということだ。
「ほう。貴国の軍は政府のコントロール下にないと言うことか? まずは我が国に対して外交的アプローチを取るべきであろう。そもそも不当な圧力を掛けたと抗議するならばまずはタイカ民主国側からあるべきだが?」
確かに軍を統制出来ていない(帝國の嘘だが)時点で近代国家としてどうなのか問題しかない。その気持ちも分からんでもないし、糾弾の口実を与えた帝國が迂闊であったとは思うが、引く訳にはいかない。
「それは聞きづてならないですね。タイカ民主国が貴国に対して抗議を行ったことは我が国も確認している。それを無視してカヌール海に展開しておいて軍事的圧力を掛けていないなどと言うのは厚顔無恥であると言わざるを得ない」
ユースティアはタイカ民主国側から事情を聞いているため、当然、外交関係は把握している。
事情を知るユリアスとしては、口を挟まざるを得ない。
だがリハネスは強い口調で反論を捲し立てる。
「貴国が言うべきことではない。そもそもこの場にタイカ民主国代表がいないこと自体がおかしいだろう。そんな自国のことも他国任せのタイカ民主国が果たして独立国と言えるのか私は疑問だ」
「タイカ民主国からは委任状を預かっている。我が国は治安の回復を要請されており正当に介入している。戦争で疲弊している国に全て自力でやれと言う訳にはいかないでしょう。そんな国を放置していれば、貴国やスタン帝國、バーラデリ共和国のようなハイエナが餌を求めてやってくるのは目に見えているし、宣戦布告もせずに実際に武力で侵攻してきた以上、我が国としても座視することなどできるはずがない。我が国とタイカ民主国は講和条約により現政権とは協力関係にあるのですから」
ユースティアとタイカ民主国とは独立国家として承認し合い、国交の正常化を行っているため、ランディス合衆国の主張など難癖レベルである。
帝國としてもユースティアとタイカ大帝國の戦争後、タイカ民主国を新たな国家として承認している。
「我が国としてはオースティン大陸の不安定化を見過ごす訳にはいかなかった。そのため、スタン帝國に対して武力懲罰を行ったに過ぎない」
「スタン帝國に対して何を行おうが我が国は、一切関知しない。我が国の主張は一貫している。神聖ヴァルガリア帝國が何の通告もなしに我が国の艦隊に行った攻撃を批難するものであり、謝罪と賠償を求めるとな」
「我が国としては列強国同士で戦えば、戦禍を拡大する恐れがあると考えております。両国が国家総力戦に突入する前に講和して頂きたいと思っています。神聖ヴァルガリア帝國は警告を行わず戦闘を仕掛けたこと。そしてランディス合衆国はタイカ民主国に対して不当な圧力を掛け、侵攻しようとしたことは明確な事実であると言えましょう。幸いなことにランディス合衆国の被害は軽微であると聞いております。神聖ヴァルガリア帝國は軍を統制できなかったことと宣戦布告なく戦闘を仕掛けたことを謝罪し、損害分を補填すべきだと考えますが如何でしょうか? またランディス合衆国も誤解を生じさせる行動があったのですからそこは何らかの譲歩をすべきだと考えますが?」
ユリアスとしても神聖ヴァルガリア帝國の面目をなるべく潰さずに、ランディス合衆国の怒りを治める必要があるので交渉は慎重にならざるを得ない。
帝國が一部認めた点はランディス側の要求と合致するするところもあるし、帝國が介入したのもランディスの不当な圧力のせいでもあるので両国がそこを認めてくれれば何とかなるはずである。
問題は常識が通用しない異世界であると言う点だ。
ユースティアとしてはこのまま帝國が国力を大きく落とすことになられては非常に困る。
「まぁ良いでしょう。すぐに帝國の言い分を信じるつもりはないし、もしかすると当方にも誤解を招く行動があったのかも知れない。まぁ我が国はそう考えていないがな。だがユースティアの顔を立てて講和交渉を継続することには賛同しても良い」
リハネスが譲歩の姿勢を見せる。
恐らく時間を稼ぐつもりなのだろうが、同じくユースティアと帝國にとっても貴重な時間ができる。
後は帝國がどう出るかなのだが――
「良いだろう。我が国にも思うところはあるが、責任を一方的に押し付けるほど落ちてはいないのでな。協議は続けるつもりだ」
ラングラルも不承不承と言った様子だが了承した。
何とか最初の交渉を終えることができ、ユリアスはホッと胸を撫で下ろす。
恐らく両国は国家総力戦を経験したことがない。
それがどれだけの惨禍を招くか、想像すらできていないのだ。
ランディス合衆国が裏で引き入れようとする勢力以上に、ユースティアと神聖ヴァルガリア帝國は味方を引き入れる必要がある。
時間との勝負になるのは間違いない。
ユースティア外務省の最も忙しい刻が始まろうとしていた。
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