第29話 波及する大混乱
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――ユースティア
南タイカ海空域戦にて、タイカ民主国を援護し共にバーラデリ共和国の魔導艦隊を撃破。これはせっかく一致団結して民主化へ向かおうとしているタイカ国内を再度戦乱状態にしないための処置であった。
その戦果を聞いた閣僚からはやり過ぎだとの声が上がったが、スレイン総理の直接会見もあり国民の支持を得られたこともあって政権は現在落ち着いている。
スレインは現在のタイカ民主国の状況を説明。
その国内が不安定であり、内外からの刺激があれば崩壊しかねないことを強調した。内には地方軍閥が独自の軍を持って中央政府の打倒を狙っていること、外からは隣国のランディス合衆国、スタン帝國、バーラデリ共和国などから干渉されていることも説明。
そうなると賠償金及び資源が得られなくなること、何よりユースティアがその国内問題に引きずり込まれかねないことを詳細に説明した。
そのお陰もあって国内世論は、政府の判断に理解を示すこととなった。
最大の懸念事項であった南方世界のガラベルム帝國に釘を刺した結果、その動きは沈静化した。情報調査省の見解ではまだまだ水面下で、諜報や煽動を行っているらしいが、他国への侵攻は止まっている。
ここまでは良かった。
その凶報が舞い込んできたのは聖ゼノ暦4215年8月29日(ユリウス歴2569年8月29日)。
4日前に中央世界の超大国であり、世界の調停者を名乗る神聖ヴァルガリア帝國がカヌール海海上で、ランディス合衆国と激突した結果、空前の大敗北を喫したと言う。帝國はその事実を必死に隠蔽しようとしているようだが、ユースティア独自の調査とランディス合衆国が大勝利を喧伝していることもあり、すぐに裏付けは取れた。
そのせいで今まで抑え付けられてきた国家や、動きたくても動けなかった国家が動きを活発化させ始める。
神聖ヴァルガリア帝國にタイカ侵攻を断念させられたスタン帝國は空軍の再編成に入り、陸軍を国境付近へ進めている。
バーラデリ共和国は魔導艦の製造を急ピッチで開始、同じく神聖ヴァルガリア帝國との国境へ陸軍を送り様子を見ていた。
元タイカ大帝國時代の朝貢国家であるタイシンなども窺う姿勢を見せている。
中央大陸の最北端に広大な領土を持つルジナート連邦も、これまで神聖ヴァルガリア帝國と獅子州連合に牽制され、更に北の北方世界の列強であるランディス合衆国の存在を警戒していたため動けなかったのだが、ここに来て国内で新たな動きがあったようだ。
影響はもちろんタイカ民主国にも及んでいる。
まだまだ安定化にはほど遠い状態であり、神聖ヴァルガリア帝國とユースティアの支援と後ろ盾がなければ、一瞬で崩壊し内部分裂してしまうだろう。
そして待っているのは戦国時代の到来である。
となるとマグナ半島を得たユースティアとしても他人事では済まされない。
必ずや敵味方問わずに様々な勢力が接触してくるだろうし、巻き込まれるのは確実だ。「まったく大陸に関わると碌なことがない」と言うのは、とある旭日連の元日本人の談である。
取り敢えずはタイカ民主国関連については積極介入するが基本は双方の仲介を行うものとする。
神聖ヴァルガリア帝國関連についてはランディス合衆国との停戦のために仲裁を試みると言うことが決定された。
まだまだ国際的な影響力の低いユースティアが果たしてどこまでやれるのか?と言う疑問があるのだが……。
――獅子州連合
常に神聖ヴァルガリア帝國と連携して周辺国家に対抗してきた獅子州連合も大混乱の最中にあった。
中央大陸の北西部に突き出る大陸のような場所に多くの国家が乱立しているのだが、国力は高く強力な軍事力を保有している国家が多い。
獅子州もかつては戦乱の時期が非常に長く続いていた。
だが、すぐ西側の巨大大陸に建国されたアトランティスの国家――アトランティス帝國が纏まりだしたこと、そして北西にある中央世界の雄、ルジナート連邦の圧力を受けていつしか一致協力するようになったと言う歴史を持つ。
最近の西方世界の情勢の変化により、近年乱世の中にあったアトランティス帝國が纏まろうとしている。
それは獅子州連合にとって座視できない状況であった。
また、それに合わせるように北方世界のランディス合衆国が水面下で動いている。
そんな中での神聖ヴァルガリア帝國の大敗北の報である。
すぐに盟主国家であるフリーレンス共和国の連合本部フローラで緊急会議が行われていた。
「現在の状況はかなりマズいと言わざるを得ません」
いきなり頼りなさげに言い出したのは、今年の議長国である聖ルーシ共和国の外務大臣であった。顔色が悪く、ことを深刻に捉えているのは間違いないが、少なくとも責務を堂々と果たしてもらいたいと各国の代表たちは思っただろう。
「そのようなことなど皆が分かっていることである。我々の取るべき行動を決めなければならない!」
「いや、共通認識として敢えて確認させてもらいたい。獅子州連合は神聖ヴァルガリア帝國の友邦として有り続けるか否か? そして西方世界のアトランティス帝國、北方世界のランディス合衆国、中央世界の我々の東に位置する大国、ルジナート連邦にどう対応するか? それが問題だろう」
逸る若手外務大臣にブリタンニア王国の外務大臣がまず現状を共有することの大事さを説いた。
すぐに各国から意見が出されていく。
「神聖ヴァルガリア帝國と縁を切る訳にはいかない! 幾度となく共に戦ってきた関係であり、助け合って他国の圧力を跳ね除けてきたのだ。それをたかが1度の敗北で見捨てると言うのか!」
「落ち着きなされ。お若いの。誰もそんな極論など考えておらん。神聖ヴァルガリア帝國の力が一時的にでも弱まった今、我々は如何に外圧から祖国を防衛するのか? それを考えねばならんと言うことだ」
「我が国の諜報部はランディス合衆国が様々な国にコンタクトを取っていると示している。恐らくだが帝國包囲網を築くつもりだと分析している」
「その情報は我が国も同様に得ている。少なくとも獅子州の周辺国家は全て反ガリアだと言うこと……そしてその旗手はランディス合衆国であると言うことだ」
「アトランティス帝國は纏まりつつはあるが、まだ国内に火種が残っている。それに彼の国の海軍力は脆弱だ。海で勝てば良い。ランディスはガリアに向かうだろうが、そちらにも注意を向けておく必要がある。問題は――」
ブリタンニア王国の外務大臣がそう発言し、続けて盟主国のフリーレンス共和国の外務大臣が後の言葉を引き継いだ。
「ルジナート連邦だな……陸続きである以上、そう簡単に凌ぎ切れるとは思えない。大量の陸軍が国境を超えるだろう」
「その通りです。我が国はルジナート連邦に最も近く、国境を接している。あの国は残虐で理性と言うものを持たない。必ず我が国は蹂躙され虐殺と凌辱、略奪が起こるだろう。そこで早急な軍事支援を要請したい」
聖ルーシ共和国外務大臣が苦々しい表情で続ける。
国内で暴虐の限りを尽くされるのは目に見えている。
できることなら国内で戦いたくなどない。
「連中が国境を越えようとするならすぐに出撃して国内から叩きだし、防衛線を国外に置きたいと考えている」
「我が国としては、その考えに賛同する。言い方は悪いが、貴国には防波堤の役割を担って頂きたい」
ルジナート連邦は海軍に比べて陸軍が圧倒的に多く強力である。
それも同じ中央大陸の神聖ヴァルガリア帝國と獅子州と隣合っており、北方大陸からのランディス合衆国の南進に苦慮しているせいであった。
幾ら近年は戦争が起こっていないとは言え、国境を長らく死守し続けているのだ。ランディス合衆国の攻撃も海で負けても上陸された後に勝っているので、その陸軍の精強さが窺える。
緊急会議の結果、以下の内容が確認された。
・引き続き神聖ヴァルガリア帝國と連携していく。
・対アトランティス帝國方面連合艦隊を編成する。
・対ランディス合衆国方面連合艦隊を編成し牽制する。
・聖ルーシ共和国をルジナート連邦からの防波堤とし、侵攻に備えて防衛線を構築する。
・以上を1週間以内に完了するものとする。
――アウストラリス皇国
南方世界にはフロンティアが広がっていた。
メガラニカ大陸と言う巨大な大陸が南北に分かれて存在しており、接続部は僅か1kmにも満たない狭さである。
列強国であるアウストラリス皇国は南大陸を掌握しており、高度な文明を築いているが、北大陸に関しては違っていた。
大航海時代を通して、現在の帝国主義の時代の到来と共に北メガラニカ大陸のほとんどは植民地化され、獅子州の国々やレムリア大陸、ゼムリア大陸の諸国によって争奪戦まで起こっているほどである。
アウストラリス皇国の皇都アウストでは皇帝であるテラ・アウストⅦ世がご満悦な笑みを浮かべていた。笑いが止まらないと言った顔付きで、日頃の威厳もどこへやら表情は緩みっぱなしであった。
それもこれも中央世界と言う大それた名前を付け、その大陸を中央大陸とまで呼んだあの神聖ヴァルガリア帝國が大敗北を喫したためである。
「うはははははははは! アルビオンの阿呆が負けよったわ! 流石は自分が世界の中心だと思い込んでいる勘違い集団なだけはある!」
笑い過ぎて涙を流すほどで、とても皇帝の所業とは思えない。
それを側でこめかみを押さえながら見ていた侍従長が苦言を呈す。
「陛下……いくら仇敵とは言え、お戯れが過ぎますぞ」
「はははははははァァ!! これが笑わずにどうしろと言うのだ? 中央大陸の覇者が大敗北とか……だーっはっはっはっは!!」
アウストラリス皇国は、神聖ヴァルガリア帝國と同じ世界から、この世界『ゼノ』に国家転移してきた。つまり、前世界からの深い因縁があると言う訳だ。
「前世界でも思っておったが、滑稽な国よな! 所詮は世界第3位程度の国家だったのにもかかわらず、この世界に来た途端に世界一の超大国を自負するなど……だはははははは!」
前世界では神聖ヴァルガリア帝國――当時はガリア帝國――の国力は世界第3位、アウストラリス皇国は第4位であった。
より強大な国家が2つも存在していたのである。
それが目の上のたんこぶが消えたと知って、世界一を自称するなど滑稽と言わず何と言うのか。
アウストラリス皇国が国家転移して来たのは、今から132年前のことだ。
当時は大混乱が起こり、暴動や略奪の横行による治安の悪化、更には一時内戦状態にまで陥ったのだが、それを乗り切って今の皇国がある。
そしてこの世界のことが知れるにつれ、文明レベルの低さに驚かされたものであった。更に同じ世界出身のガリア帝國が存在し、しかも1番最初の転移国家だと知った時には驚きを通り越して何の因果かと思ったほどだ。
ガリア帝國が突如として前世界から消失してから、こちらの世界の時間で4000年近く経っていると言う。ほとんど進歩していないその姿を確認した時には心底呆れさせられたものであった。失望したと言っても良い。
「さぞ俺、強えええええ!!をしてきたんだろうな。さて此度、馬脚を現した訳だが……」
急に真面目な態度で話し始める皇帝テラ・アウストⅦ世。
あまりの急変振りに家臣たちが困惑する中、彼は言い放った。
「我が国は転移以来、特に領土的野心を持たずにやってきた。北大陸も本来は我らの領土ではないから放置してきた訳だ」
真剣な言動に周囲は皇帝本来の姿を見た。
聡明で真面目、更にはカリスマ性まで兼ね備えたその姿を。
「何度も我が国に侵攻してきた馬鹿どもがいたが、全て退けてきた。それも最低限の武力行使で、だ!」
皆畏まって話を聞いている。
「技術も何もかもを独力のみで進化させてきて現在の我々がいる。思えば転移した時の皇帝陛下テラ・アウストⅥ世は国内の混乱が終息したら俺、世界を統一するんだと仰っていた……」
ここまで聞いて家臣たちも言わんとしていることを理解したのだろう。
中には目から止め処なく涙を流している者までいる。
「その刻来たれり! 俺は皇国の総力を挙げて世界に宣戦布告することを宣言する!!」
テラ・アウストⅦ世が玉座から大仰に立ち上がると右拳を突き上げた。
周囲から大きな歓声が上がる。
「見せつけよ! あのガリアのハイエフルどもに! そして我々を亜人と蔑む人間どもにも! 皇国の偉大なる力をな!」
ダークエルフの浅黒い肌に陽光が射して煌めいた。
列強国、アウストラリス皇国が遂に起つ刻が来た。
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