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混沌なる異世界(カオス・ワールド)~様々な異世界国家が集まる異世界の坩堝~  作者: 波 七海
第二章 変わる世界編

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第28話 カヌール海海戦 ③

いつもお読み頂きありがとうございます。

本日は12時の1回更新です。

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異世界&現代ファンタジーのダンジョン配信ものです。

異世界に転移させられたんだが、俺のダンジョン攻略が異世界と地球で同時ライブ配信されているようです

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 神聖ヴァルガリア帝國海軍とランディス合衆国海軍の艦隊決戦は佳境に入ろうとしていた。


 空戦ではランディス合衆国の『シアトー655型』が数で圧倒的に上回る『ガリアンヌMKⅡ』に対して優勢に戦いを進めていた。


 一方の海上では互角。


 しかし神聖ヴァルガリア帝國が誇る神聖ガリア艦隊と東方艦隊の統合艦隊からしてみれば、数的優位がありながらの互角である。事態が動けば一変するであろう。




 ――フォルニア東方艦隊


 5時間近い戦いで被害は出ているものの、敵大艦隊を前にかなり善戦している状況だ。


 被害は戦艦小破1、重巡洋艦大破2、巡洋艦大破2、駆逐艦轟沈1である。

 空母は後方に控えており打撃はないし、駆逐艦も多くは空母の警護に当たっているため被害はほぼない。


 神聖ガリア艦隊の大出力の魔導砲の一斉集中砲火を受けてなお無事であるのは、艦隊司令のオマージュの判断によるところが大きいと言えた。

 耐久力の高い戦艦、旗艦を敢えて前に押し出して囮とし、他はロングレンジからの攻撃に留めている。

 重巡洋艦、巡洋艦の砲撃もそれなりに成果を出していた。

 現在は、制空権を取るまで粘っている状況である。


 旗艦〈ディスール〉の艦橋ではオマージュが戦いの推移を冷静に見守っていた。


「『シアトー655型』補給を終えて戦闘空域へ入りました」


「うむ。よろしい。これで一気にこちらに流れがくるだろう」


 通信士からの報告を受けてオマージュが平然とした態度で言った。

 『シアトー655型』の性能を知っているからだけではなく、実際に戦いを目の当たりにして空戦の勝利をほぼ確信していたからだ。

 彼の言動に乗組員たちの緊張が緩む。

 皆、自国の艦隊と戦闘機には自信を持っていたものの、やはり圧倒的な数的不利を前に不安を抱いていたことが見受けられる。


 空からの攻撃はない。

 神聖ガリア艦隊の『ガリアンヌMKⅡ』が空戦に掛かりきりである証拠だ。

 もっとも魔導機関銃程度でどうにかなる艦船ではないが。


「こちらの攻撃は命中しておりますな。これだけ近づけば我らの優秀な砲手員からすれば楽な仕事でしょう」


彼奴きゃつらの魔導砲の威力にも限界があるようだ。命中率は高いが戦艦の装甲を抜くのは難しいようだな」


 戦艦2隻は最前線で全砲門による全力射撃を行っている。

 神聖ガリア艦隊・東方艦隊は確実に轟沈が増えていた。


 オマージュが乗る旗艦も現在集中砲火を浴びて、緑色の魔導砲によって光に包まれているような感覚に陥っている。

 お陰でかなりの衝撃が艦船を襲い、大揺れに揺れており、中々視界が利かないのが困ったところだが、決して大きな被害が出ている訳ではない。


「戦艦〈ディスル〉の右舷に穿孔せんこうを認める。浸水はないようです」


喫水線きっすいせんより上だったか。しかし威力が上がっているのか?」


 神聖ヴァルガリア帝國も別にユースティアのように魔導を解明できている訳ではない。たまたま高出力の魔導砲が重なり合うことで、更に威力が上がったせいなのだが、現場に理解している者はいなかった。


「敵艦隊、1隻レーダーロスト。轟沈した模様です」


 目視で確認できないため電磁レーダーに頼っているが確実に仕留めている。

 逆にここしばらくはフォルニア東方艦隊に轟沈は出ていない。


 後方の空母さえ無事であれば、勝利は決する。

 爆撃機がまだ待機しているのだから。

 オマージュは瞑目しつつ、そう考えていた。




 ―――




 ――神聖ガリア艦隊・東方艦隊


「せ、戦艦〈ガリラル〉轟沈……戦艦〈アノールド〉轟沈。大破していた戦艦〈ガリレオ〉も機関停止したようです。攻撃不可能とのこと」


 ガリア艦隊、東方艦隊問わず被害は拡大していた。

 敵の命中弾は明らかに増えており、魔導強化した装甲も貫いてくるのだ。

 こちらの魔導砲も大出力を保ったままで、敵艦に命中させる必要があるため距離を取ることはできない。


「魔導砲の威力向上が課題だな……何とか減衰・拡散するのを防がねばならん」


 デルムト提督の表情は悪くなる一方で、もうずっと苦々しい顔をしている。

 栄えある神聖ガリア艦隊をたかが、地方艦隊であるフォルニア東方艦隊如きに押されているのが気に入らないのだ。


「閣下、私は夢幻でも見ているのでしょうか? 目の前の光景は悪夢なのでしょうか……」


「現実から目を背けるな。ランディス合衆国海軍は強い。最早認める外ない。後は空の状況次第だと思え」


 神聖ヴァルガリア帝國も全てを魔導に頼っている訳ではない。

 爆撃機『ヴァルガリマンダMKⅢ』に搭載されるのは炸薬が使われており、信管によって爆発するものだ。制空権を取り、爆撃を開始できれば敵戦艦をも轟沈させられるとデルムトは確信していた。


「魔導には限界があるのか……? まさかここまでとはな」


 心の声が無意識の内に口から吐いて出る。

 実際のところはユースティアのように魔導を体系化して原理を理解した上で用いれば、より強力な魔導を扱うことができるのだが、如何せん神聖ヴァルガリア帝國は古代の遺物を解析して現在の魔導技術を作り上げてきた。

 よく分からないままで、使っている技術もあると言うことだ。

 まだまだ伸び代は大きい。

 ユースティアは技術流出を防ぐために、核心技術はもちろん、世界に強く影響を与えると思われるものの輸出は出来ないように法整備を行っている。

 それでも技術交流が進めば、ユースティアにとっては他愛のない技術でも神聖ヴァルガリア帝國にとって大きな進歩となる可能性が大きいのだ。


 開戦当初の戦力はこのようなものであった。

 神聖ガリア艦隊、戦艦5、空母3、重巡洋艦10、巡洋艦12、駆逐艦20。

 東方艦隊、戦艦3、空母3、重巡洋艦6、巡洋艦10、駆逐艦15。


 現在は神聖ガリア艦隊は戦艦轟沈3、重巡洋艦轟沈3、大破3、巡洋艦轟沈4、大破2、駆逐艦轟沈12。

 東方艦隊は戦艦轟沈2、重巡洋艦轟沈4、巡洋艦轟沈6、駆逐艦轟沈8。


 最早、大損害――壊滅的被害を受けたと言っても良い。

 特に最新の技術の粋を集めて創設された神聖ガリア艦隊の被害が大きいことに、乗組員たちの心は打ち砕かれつつあった。

 デルムトでさえそうなのだ。

 提督としての矜持が崩れ落ちそうな体を、精神を支えていたと言ってもよい。




 ―――




 ――上空では


 攻撃隊の第2陣が空戦に加わったことで形成は一気にランディス合衆国側に傾いていた。


 大隊長がコクピットの中で吠える。


「くははははは! 落ちる! 落ちていくぞ! 面白い様に落ちていく!」


 まるで今までのうっぶんを晴らすかのように、どの戦闘機も躍動していた。

 旋回能力で勝る『シアトー655型』には最早、『ガリアンヌMKⅡ』の魔導機関銃など当たることも少なくなり、そもそも速度でも付いて来られない。

 当たらなければ撃墜されることもなく、速度で圧倒して背後からの機関銃掃射で終りだ。


 両国の各機が入り乱れていた開戦時とは状況は大きく異なり、転換点がついに訪れた。


 エネルギーの耐久面で優れていた『ガリアンヌMKⅡ』の動きが明らかに落ちて、落とされるものが続出し始めたのだ。

 魔石エネルギーも無限ではない。ずっと飛び続けられるはずがないのである。

 神聖ヴァルガリア帝國側の戦闘機に補給が必要となった時が転換点となったと言う訳だ。


『こちらフォルニア01大隊。どうぞ』


『通信を許可する。何か? どうぞ』


『敵は遁走を開始した。エネルギーが尽きたようだ。上空には最早邪魔者はいない』


『了解した。オーバー』


 報告を終えた大隊長は僚機にも無線を送る。


『これで勝つ! 我ら戦闘機乗りが勝負を決めた瞬間だ! 皆、よく戦った! 感謝する!』


 生き残りたちからは盛大な歓声が湧き起こった。

 そして戦いを決める空の破壊者たちが低い唸り声を上げながらやってきた。


 爆撃機『ロスエンゼ300型』100機である。

 300kg爆弾を搭載した破壊をもたらす者。


 それが一気に神聖ガリア艦隊と東方艦隊の上空へと侵入した。


 戦場に地獄が顕現する。




 ―――




 ――神聖ガリア艦隊・東方艦隊


「直ちに転進せよ! 飛べる戦闘機は全て上げて撤退支援に当たらせるのだ!」


 デルムト提督が必死に命令しているが、何のことはない。

 原因は彼が引き際を見誤った。

 それだけの話。


 帝國のプライドが邪魔をして撤退ができなかった。

 空戦でも勝負はやや優勢と考えていたのは確かだが、心の何処かで勝てるだとうと高を括っていた。


 圧倒する数が彼の目を曇らせた。


 現在、神聖ガリア艦隊と東方艦隊は猛烈な爆撃に晒されており、旗艦〈ガリア〉も例外ではない。各艦は上空に向けて高角砲から魔導砲が撃ち出されており、嵐が吹き荒れるが如き状況だ。それを躱しながら急降下爆撃が繰り返し敢行され、被害は更に甚大なものになっていく。


 時速700kmにも及ぶ速度で空を飛ぶ爆撃機を落とすのは難しい。

 魔導砲は当たる気配はない。


 何とか再度、空へ飛び立てた『ガリアンヌMKⅡ』も、味方からの高角砲を避けながら敵の爆撃機を撃墜しなければならないので、攻撃は限定的であった。

 既に戻るべき空母もなく、彼らは文字通りの死兵と化すことを強制させられた訳だ。


 艦橋ではオペレーターの悲壮な報告が次々と耳に届く。


「何があっても殲滅されることだけは許されない! 出力を上げろ! 全速力で撤退せよ!」


 もう何度目になるか分からない叱咤が飛ぶ。

 既に出力は最高であり、最大船速である。


 結局、支援要請を受けた神聖ヴァルガリア帝國が援軍の海上艦隊を派遣したことと、『ガリアンヌMKⅡ』、爆撃機『ヴァルガリマンダMKⅢ』の反撃のお陰もあって、神聖ガリア艦隊は帝國北部の軍港ポートノワールにたどりつくことができた。


 カヌール海での一戦の結果は瞬く間に世界を席巻し、神聖ヴァルガリア帝國の威信を大きく低下させることとなった。

 そしてそれは今まで抑え付けられてきた者たちの台頭を意味する。


 神聖ガリア艦隊の提督デルムトは責任を感じ、自刃して果てた。


 影響力の低下に国際会議の開催も危ぶまれる状況だ。


 世界の調停者たる神聖ヴァルガリア帝國の大敗北は、大きな歴史の転換点となる。

ありがとうございました。

また読みにいらしてください。

明日も12時の1回更新です。


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― 新着の感想 ―
合衆国パイロットはなんかキツめのお薬処方されてそうでキマってるw 帝國はあいかわらずプライド高そうだし合衆国はこれでイケイケなっちゃうし 国際会議どーなるー?
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