第25話 世界の調停者たるもの ②
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――カヌール海
ランディス合衆国海軍が編成した大艦隊がカヌール海に展開していた。
全てはタイカ民主国に圧力を掛けるためである。
現在の編成は戦艦2、空母2、重巡洋艦5、巡洋艦8、駆逐艦10である。
だが所詮は牽制であり、ランディス合衆国の国力からしたら微々たるものであった。
「神聖ヴァルガリア帝國の動きはどうなっている?」
ランディス海軍の東方艦隊司令、オマージュ海軍少将が確認のため口を開いた。
無口な彼はあまり自分から話し掛ける方ではない。
「国家情報局からは現在、カヌール海へ向けて大艦隊が出撃したと報告が上がっております。編成は確認中とのことです」
通信士が情報局から送られてきた情報を伝えると、旗艦〈ディスール〉の艦長がのんびりした口調で感想を口にした。
「大艦隊ですか。彼奴らはいきなり決戦する気のようですな」
まさに感想である。
ただ思ったことを述べただけ。
それ以外の何物でもない。
「いつからそのような好戦的な国家になったのだ?」
「ちと分かりませんな」
「我々はカヌール海に……公海上にいるだけなのだがな」
「タイカに圧力を掛けているのは承知しているのでしょうが、随分と直接的な手段を使いますな。我が艦隊を牽制している東方艦隊だけでなく、更なる増派とは……」
「貴様は知っているか? 我が国はアトランティスや獅子州と連携を模索しているらしいぞ」
「初耳ですが……。それにしても今日の閣下はよくおしゃべりになられる」
「ふっ……直接ぶつかるのはいつ以来になるのだろうな。どうやら私は緊張しているようだ」
「またまたご冗談を。閣下のようなお方を猛将と言うのです」
「ぬかしよる」
「お褒めに与り光栄にございます」
2人の会話は特に怒っている様子もなく、そこからは高揚と言った感情も読み取れない。まるで日常会話をしているかのような光景がそこには存在した。
カヌール海上の旗艦からは巨大な入道雲が目に入るが空は青天である。
態々、このような時に戦争ごっこをするなど無粋な連中だとオマージュは考えていた。
合衆国本国からは、牽制に徹するよう厳命が下されている。
さてどうしたものかと考えるも結局はいつもの思考に戻るのだ。
「海上艦隊と言っても所詮は魔導の力よ。我々の装甲はそこらの紙切れではないことを教えてやろう」
オマージュはそう言うと薄い笑みを浮かべた。
その隣では艦長が珍しい物を見たと言う表情をするが、すぐに興味が削がれたのか、特に気にする様子もなく目の前の大海原に目を向けた。
もうすぐカヌール海で艦隊決戦が行われようとしていた。
―――
カヌール海を北上する大艦隊がいた。
最新鋭艦で構成された神聖ガリア艦隊である。
ガリアとは現在の神聖ヴァルガリア帝國となる前の名前であり、今では神聖視されている大事な名称である。
つまりガリア艦隊を名乗る以上、敗北は許されない。
神聖ガリア艦隊は戦艦5、空母3、重巡洋艦10、巡洋艦12、駆逐艦20で編成されている。
装甲には魔法陣を基に設計された魔導回路が組み込まれ、従来の魔力強化装甲とは比べものにならないほどの強度を誇る。
機関には潤沢に採掘される魔石のエネルギーを効率良く取り出して25ノット~30ノットほどの速力を出すことが可能になった。
主砲は40cmの2連装砲2基6門。
距離30kmからの砲撃で200mm~250mmの装甲なら余裕で抜けるほどの代物だ。
マギロンやマギアニウムの力がない場所でも魔石から充填された魔導砲を放つことが可能となり威力は跳ね上がったとされている。
「ついに栄えある神聖ガリア艦隊の初出撃の刻が来たか……」
旗艦〈ガリア〉の艦橋で艦隊提督の海軍大将デルムドが感慨深げに呟く。
ここ何年も艦隊決戦などしてこなかったことにやや不安を覚えるも、進水後の演習ではその実力を如何なく発揮し海軍の者全てに多大なる自信を植え付けたほどである。
経験はなくとも度重なる演習により練度は最高だ。
負ける要素が見当たらない。
ランディス合衆国の東方艦隊の編成程度であれば、余裕を持って叩き潰せるだろうと彼は考えていた。
攻撃に参加するのは神聖ガリア艦隊だけではなく、現在、ランディス東方艦隊と睨み合っている帝國東方艦隊もいるのだ。カヌール海で敵艦隊を撃ち破った後はジーランディア大陸の合衆国本土まで攻め入る計画である。
デルムド海軍大将は帝國総代ナッソスと海軍大臣タイラーの言葉を思い出していた。と言っても古くはアルビオンⅢ世の偉大なるお言葉であると言う話だ。
『我が国は世界の調停者である。我が国の存在こそが世界に秩序と安定をもたらし、戦乱の時代は幕を降ろすだろう』
陸海軍共に軍人なら全ての者の頭に叩き込まれている言葉だ。
いや最早、帝國民すら知っていると言っても良い。
「帝國東方艦隊と敵艦隊との距離は約50kmほどと聞く。直ちに合流し、これを撃滅せんと欲す」
カヌール海の空は魔導砲の淡い緑色で染まるのだろうか?
―――
その頃、ユースティア政府は――
多くの国々と国交を樹立し、安全保障条約は締結していないが、主な重要地域には各大陸への足掛かりとなる滑走路や港などを整備させてもらっていた。
もしもの時に備えるためであるのは言うまでもなく、1年後に開催が予定されている『ゼノ国際会議』に向けて世界各国を参加させるためと言う目的も持っていた。
世界は広い。そのために色々な地域に戦闘機や護衛艦隊群、魔導艦を送る必要性が出てくる可能性を考慮した上でである。
基地ではないが滑走路の使用や船舶の寄港を行えるように、燃料補給拠点の構築突貫作業が行われている。代わりにインフラの整備やコンビナートの形成を行っている。
政府が危惧しているのは世界規模での戦争――世界大戦の勃発であった。
各地で列強国が活動を活発化させているのは、偵察衛星などの軍事衛星で把握している。現在は列強から落ちたタイカ民主国周辺の安定化のため、そして南方世界と東方世界に手を出そうとしているガラベルム帝國への牽制のために全力を挙げている状況だ。
また、野党の追及を躱しながらも、旭日連と協力して護衛艦隊群の増設、戦闘機や新兵器の開発実験は続けて行われているし、魔導艦への誘導弾や迎撃ミサイルなどの実装、護衛艦への魔導強化装甲の実装が進められている。
特に誘導型魔導砲、巡航ミサイル、大陸弾道弾の開発が急ピッチで行われており、転移前から開発が進められていた魔導誘導弾やレールガンは実装が開始されている。
後は法整備が問題として残っている。
集団的自衛権や先制攻撃は未だ、拡大解釈により運用されているだけなので早急な憲法改正が求められる。
転移後のユースティアは多くの戦争や紛争に巻き込まれているため、国民の危機感は上がったと言えるが、問題は幼稚なる反体制を続けるマスメディアと野党の存在であった。
旧世界で大義と誇りを賭けた戦争の敗戦、占領統治の終了からおよそ113年が経過してなお、ごっこ遊びをしている者たちの罪は重い。
むしろ哀れにさえ思えるそのユースティア悪玉論を唱え続けるその姿勢は占領統治下、そして主権を取り戻した後まで続く洗脳染みた教育の成果であろう。
その様子をほくそ笑んでいるのは、旧世界の戦勝国であるアマリア帝國やジナ帝國、ルッシーナ連邦などだけだ。
戦争は悲惨であり、起こさない、行わないのが最善であることなど、ユースティアの誰もが理解している。だが、国家の意志に関係なく起こってしまうのが戦争であり、実際に攻撃された時にどうするかが問題なのだ。
普通の国家であれば国民の生命と財産と誇り、自国の歴史を護るべく戦うだろうが、ユースティアはどうなのか?
攻撃を受け続けているのに反撃すら行わず、話し合いで解決しましょうとほざくだけなのか?
または攻撃されるのが明らかな状況になっても無抵抗に国民に被害が出るのを座視するだけなのか?
その闇は暗く深い。
日本からユースティアに転生した元日本人の外交官――旭日連に所属するオボロ・フジワラからしてみれば、政治家の多くが思考停止の売国奴。国民は無関心。
むしろ積極的に反日……もとい反ユースティアの活動、利敵行為を平然とやっている左翼・リベラル政治家の多いことに戦慄を覚える。
どの国も自国ファーストなのは当たり前なのに、自国がそう言うと外国人差別だとほざき、自国民の受けている被害など無視して、せっかく多くの他国が失敗経験を示してくれた先例を見ることもせず、移民を積極的に受け入れて反体制外国人、反社会的外国人組織、不法滞留外国人をのさばらせて犯罪を抑止しようともしない馬鹿げた政府とこの状況。
ここは一体、何処の国で、お前は一体何人なんだ?と問いたい。
家族や共同体は破壊され、既に2600年の歴史は消されようとしている。
万世一系男系男子の皇帝を断絶?
家族改革庁?男女共同参画?移民受け入れ?
これらは完全に既得権益化し、まともな政策も行われず全く機能していない状況でもある。家族や地域の共同体を破壊しているのに家族改革庁。男女平等社会の実現のためのはずが男性蔑視の女性優遇に走る男女共同参画。多様性のためならユースティアがどうなっても良いかのような移民政策。外国人を護るためならユースティア人に何をしても良いとまで言う政治家たち。
論理的でないから、精神的だから、非科学的だから、考えが古いから、面倒だから、他国がやっていないから、皆がそう言っているから、歴史的背景も考えずにその時の雰囲気が、空気が、ノリがそうだから。
築き上げた歴史や培ってきた価値観は現代人だけのものではない。
現代に至るまでそれを紡いできた先人たちのものでもあることを忘れてはならないのだ。
たかが1度の敗戦で、それを……国家の全てを否定すると言うのか。
あまりにも馬鹿げている。
領土的野心のみで侵攻してきた国を擁護し、侵略された側の国の小さな戦略ミスを重箱の隅をつつくかのように批判して、然も受けた側が悪いように見せる。
たかが客寄せパンダの一匹や二匹を寄越したくらいでコロっと懐柔されてしまう。
歴史を捏造し、他国家の発展に大きく寄与したにもかかわらず、敗戦と共に本土に戻ろうとする国民を殺され凌辱された上に、いつまでも恨み続け謝罪と賠償を求めてくる国にNOと言うことさえできない。
未だに理不尽な政治的圧力と軍事力を背景にした脅迫による解決しか出来ない世界の国々を感化させることができるのは、世界で唯一無二の歴史と価値観、国体を持ち、真に平和的な思考をしてその道を模索し続ける自国しかいない。
そんなオボロは自国の平和と国体護持のため、そして世界の秩序維持のために奔走する。
ありがとうございました。
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