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混沌なる異世界(カオス・ワールド)~様々な異世界国家が集まる異世界の坩堝~  作者: 波 七海
第二章 変わる世界編

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第24話 世界の調停者たるもの ①

いつもお読み頂きありがとうございます。

本日は12時の1回更新です。

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 ――オースティン大陸・南西部


 誰も邪魔されることなく、スタン帝國海軍は上陸し橋頭堡きょうとうほを築いていた。

 突貫工事で整備は行われ、次々と帝國陸軍の戦車が運び込まれる。


 現在は特に滑走路の整備が級ピッチで行われていた。

 

 スタン帝國の制空型戦闘機である『スタン-Ⅴ』は時速540kmを誇り、これは神聖ヴァルガリア帝國の『ガリアンヌMKⅡ』とほぼ同等である。

 更に爆撃機『オードカザフⅧ式』の配備も進められている状況だ。

 滑走路が完成を見ればすぐにでも空軍は動き、タイカ民主国南西部の大都市セートに侵攻を行う計画である。

 もちろん地上からは戦車部隊が投入される。


 ただ南西部は断崖絶壁などが多く、非常に地上侵攻が困難な土地であり、戦車を送り込むためには大きく迂回しなければならない。

 守るに易く攻めるに難い地域だが、制空権さえ取れれば、後は爆撃で地上部隊を殲滅し占領部隊を送り込めば良いとスタン帝國首脳は考えていた。


 しかし――その野望は速くも打ち砕かれることになる。


 神聖ヴァルガリア帝國が動いたのだ。


 空を行くのは最新鋭の制空型戦闘機『ガルガンダMKⅢ』。

 その数100がスタン帝國の領空へと突如として侵入したのである。

 更に遅れて爆撃機『ヴァルガリマンダMKⅢ』が空へ飛び立たんとしていた。


 領空に入られたことを知ったスタン帝國首脳は狼狽した。

 警告はあっても、こんな分かり易い形で直接介入してくるとは思ってもみなかったのだ。帝國の防空システムは整備が進んでいないため、最初に反撃できるのは高射砲だけであったが、それがまた当たらない。

 

「ええい! 当たらんのか! このままでは爆撃機が来るぞ! 死んでも当てろッ!!」


 高射砲を指揮する部隊長が叱咤するも精神論で何とかなるはずもなく、命中率は一向に上がらない。


 スタン帝國が何とか戦闘機を出撃させた頃には、帝國領の南西部の軍事都市ザスタンは猛烈な爆撃を受けていた。ザスタンから20km地点にあるペギム基地から『スタン-Ⅴ』50機が飛び立つも、爆撃機の護衛に就いていた『ガルガンダMKⅢ』50機がそれを迎え討ち、たちまち空戦へと発展する。


 神聖ヴァルガリア帝國が投入した戦闘機は先行した100機だけではなかったのだ。


 空へ舞ったスタン空軍兵は自慢の『スタン-Ⅴ』があれば十分に勝機があると考えていた。

 何しろ戦闘性能は変わらない上、速度もほぼ同じ。

 事前の戦力分析ではまず問題はないと判断されていたのである。


 しかし――


『クソッタレッ! 何が互角だよ! 追いつけねぇ! うおおおお――』


 『スタン-Ⅴ』が高度5000mで爆散する。

 次々とからりと晴れ渡った空に色とりどりの華が咲く。


『速過ぎんぞ! ガッデム! 後ろを取られた! やられる!』


 後退翼がついた先進的な姿をしながらも低速しか出せない神聖ヴァルガリア帝國の戦闘機だが、スタン帝國の戦闘機を落とすには十分であった。


『粘れよ貴様ら! ここが壊滅すれば近隣都市は全て炎に包まれるんだぞ! 負ける訳にはいかんのだッ!』


 部隊長が無線を使って鼓舞するも落ちていくのは僚機のみ。

 彼の目からは知らず知らずの内に無念の涙が滂沱の如く溢れ出していた。

 空で負けて制空権を取られれば、地上はひとたまりもない。

 今まで保っていた戦力にとうとう差がついてしまったのだ。


『――ザスタンが空爆により壊滅的打撃を受けている。至急援軍を求む。繰り返す、至急援軍を求む』


 ノイズ混じりの無線が届くが最早、彼の耳には入っていなかった。

 如何に追尾から逃れるかで精一杯の状況だ。

 12.7mm連射魔導砲が淡い緑色の弾丸となって撃ち出される。


『くそがぁ! 何故魔力の充填がこんなに速いのだッ!? チャージ時間が奴らのネックだったはず――』


 凄まじい速度で連射される魔導砲を翼と機体に浴びせ掛けられて、部隊長が乗る戦闘機はきりもみ状態で落ちていく。

 そして地上にぶつかる前に爆散。

 脱出すらできずに部隊長は戦死した。


 ―――


 一方、スタン帝國の帝都ヴァイスタンでも悪夢が空を飛んでやってきていた。

 流石に帝都上空で空戦をやらかすことはなかったが、迎撃できたのは帝都まで僅か10km地点であった。

 帝國の各軍事基地からも増援が向かっているが、その領土は広大であり、とても間に合うとは思えない。


 帝都からでも見える上空が赤く染まる頃、地下司令部では政府首脳による激論が交わされていた。


「何故、ここまで劣勢に立たされているのかと聞いているッ! 空軍は一体何をしていたのだッ!」


「あれほどの予算を食い潰しておいてこの体たらく……どう責任を取るおつもりか?」


 鬼気迫るほどの剣幕で問い詰められる空軍長官は、次々と届く報告に頭が真っ白になっていた。

 浮かぶのは何故?の言葉ばかり。


 両国の航空戦力に差はなかったはず!

 それが圧倒的なまでに押されている。

 そして一方的に落とされている。

 何故だ!? 一体何が起こっている!?

 ここで空軍長官は責任の転嫁先を見い出した。


 今は責任を押し付け合っている場合ではないと気付くこともなく。


「そもそも情報局は何をしていたのだ! いきなりこのような戦力を送り込まれては対応などできんわ! それに金喰い虫は開発局だろうが! 航空優勢を取られている責任は全て最新鋭機の開発を怠ってきた開発局にある!」


「なッ……!!」

「……!!」


 突然責任転嫁されて2人は驚くばかりで二の句が継げないでいた。

 しかし、言っていることはおおむね正しい。

 情報局は神聖ヴァルガリア帝國の介入を否定していたし、開発局がここ10年ほど戦闘機のアップグレードをできずにいたのは事実である。


「報告。帝都より10km地点の空域にて行われた空戦で我が国の戦闘機は壊滅。敵戦闘機の撃墜は7機とのことです」


「はぁぁぁぁ!? 何故、そこまでの差が出るのだッ! このままでは帝都が爆撃されるぞ!」

「もしかすると地上部隊も送り込んでくるやも知れませんな」

「国内が蹂躙される!?」


 帝國総大臣が最悪の未来を幻視して悲鳴を上げたせいで、司令部は阿鼻叫喚と化してしまった。

 これではもう機能していないのと同じである。

 とは言え、機能したところで打開策など見つからなかっただろうが。


「あべこべに機甲部隊に国境を超えさせては?」

「そんなもの、ガリアの方も押し出してくるに決まっておろうが! それに睨み合っている内に爆撃されて終わりだよ」

「バーラデリ共和国に援軍を依頼しては?」

「あそこもタイカへ侵出している。こちらに回す力はないだろうよ」

「共闘すべきでしたな」

「獅子州連合を動かせないか?」

「獅子州は神聖ヴァルガリア帝國と連携しとるだろ。態々(わざわざ)敵対するはずがない」


 そこへ、とある報告がもたらされる。


「報告です。神聖ヴァルガリア帝國から警告がありました。『タイカ民主国より直ちに撤兵せよ! さもなくば全てが更地と化すだろう』とのことです」


 騒がしかった司令部に沈黙が降り、短くない時間が流れる。


「帝都には他国の要人もいるのだぞ? 爆撃するような真似はしないと思うのだがな」

「限定的な爆撃を行う可能性は否定できないのでは?」


 再び、始まった話し合いにまたもや邪魔が入る。


「報告! タイカ民主国からです。『南タイカ海空域にて我が国とユースティアの魔導連合艦隊がバーラデリ共和国魔導艦隊を撃滅した。速やかなるオースティン大陸からの撤退を求む。貴国の賢明な判断に期待する』だそうです」


「バーラデリが敗れた? 大艦隊で攻め入ったと聞いているが?」


「東方世界に現れたユースティアなる国家が介入したせいで、バーラデリ魔導艦隊は大損害を被り、再侵攻は不可能な状況だそうです」


「ユースティア? 確かタイカを破った国だったな……それほど強いのか?」

「実は炎龍を隠していたとかではないのか?」


 一向に打開策が見つからない中、とうとう帝國総大臣が発言した。


「ランディスだ。あの国を動かす。列強と組んで対抗するのだ。彼の国もカヌール海に展開しているはずだな?」

「そのような情報を得ております」


 情報局長官から確認が取れたところで、帝國総大臣が勢い良く立ち上がり吠えた。


「止むを得まい。せっかく作った橋頭堡だが……撤兵して偽装した軍事基地へ戦力を送れ。今は耐える時だ。一旦停戦協議に入り、油断させてランディス合衆国と連携し、再度開戦する。アトランティスにも連絡しよう。そして包囲網を築くのだ。神聖ヴァルガリア帝國のな!」


 タイカ侵攻計画が第1歩目でつまづかされたのだ。

 この恨みはらさでおくべきか。

 彼の目には狂気が宿っていた。

ありがとうございました。

また読みにいらしてください。

明日も12時の1回更新です。


面白い!興味がある!続きが読みたい!と思われた方は是非、

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列強世界大戦じゃないですかぁー やだぁー
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