第21話 緊迫する三大陸
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異世界に転移させられたんだが、俺のダンジョン攻略が異世界と地球で同時ライブ配信されているようです
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中央世界、東方世界、北方世界の緊張は増々高まっていた。
中央大陸、オースティン大陸、ジーランディア大陸間の国家がタイカ大帝國改め、タイカ民主国へ干渉すべく動き出したのだ。
オースティン大陸への進出を目論むのは中央世界のスタン帝國、バーラデリ共和国、オースティン大陸のタイカ大帝國の元朝貢国タイシン、ジーランディア大陸のランディス合衆国だ。
三大陸の間にはカヌール海が存在するが、中央大陸とオースティン大陸の間の海はかなり狭く100km程度しかない。そのためスタン帝國とバーラデリ共和国は、在留国民保護の名目ですぐに海軍を派遣。
神聖ヴァルガリア帝國としてもすぐに海上艦隊を派遣したかったのだが、西方艦隊を呼び寄せるまでに時間が掛かっており実行できずにいた。東方艦隊は、ランディス合衆国の海上艦隊を牽制しており身動きが取れない状況であったからだ。
タイカ民主国はユースティアとの戦争で壊滅的な打撃を被った竜騎兵をマグナ半島付近の地方軍閥の討伐へ向けており、中央世界の両国を迎え討つ余裕などない。
そこでマグナ半島とクレア半島に駐留しているユースティアに支援を要請。
タイカ民主国の読み通り、大陸が荒れることを嫌ったユースティア政府は魔導艦隊を派遣した。
スタン帝國は科学立国、バーラデリ共和国は魔導立国でありお互いが対立していたが、共通の餌を目の前にぶら下げられては争っている場合ではない。
両国は結託して陸軍を対神聖ヴァルガリア帝國のために南下させ、海上艦隊、魔導艦隊を北上させた。
スタン帝國の海上艦隊は何の妨害も受けることなく、オースティン大陸の南西部に上陸し橋頭堡となる基地を築き始める。
バーラデリ共和国も一応は海上艦隊を保有していたが、より速度が出る魔導艦隊のみを派遣しており同様に南西部に到達。この南タイカ海と呼ばれる海域にはマギロンが存在し空中艦隊でも飛行が可能なのである。
しかしこちらは思う通りには行かなかった。
タイカ民主国にはまだ残存している魔導艦隊があったためである。
大いにその数を減らしたものの、牽制にはなる。
ユースティアに敗戦する前は両国の魔導艦隊はタイカ大帝國の方が量も質も上であったが、現在はバーラデリ共和国の方が数で圧倒している状況だ。
そこでオースティン大陸南西部の南タイカ海上空で睨み合いとなる。
圧倒的な数的有利により勝利を確信していたバーラデリ共和国であったが被害を恐れ、魔導艦隊による攻撃はかなり慎重に行われたことでタイカ民主国側が遅滞戦闘に成功する。
両国が軽微な被害で魔導砲の撃ち合いをしていた時、東からユースティア魔導艦隊が出現した。
編成は魔導戦艦2、魔導巡洋艦3、魔導駆逐艦5。
突如として現れた魔導艦隊に驚かされたバーラデリ共和国軍であったが、あまりにも小編成であったため溜飲を下げる。
ここに南タイカ海空域にて、魔導艦隊決戦が行われることとなった。
―――
「敵は大艦隊だな。壮観壮観。しかしタイカもよくもたせたな」
マグナ半島の空防基地から飛び立った魔導戦艦〈マグナ〉内で艦隊司令のレコア・キルス空将が感心したように艦長に話し掛ける。
「タイカ大帝國時代は量でも質でも負けていたようですからな。慎重になったのでしょう」
「物量で押せば勝っていただろうな」
「多少は被害が出たでしょうが、それを恐れたのでしょう」
バーラデリ共和国の魔導艦のデータはタイカ民主国側から提供を受けて把握している。シミュレートした結果、負ける要素はなく被害なしでの勝利は間違いないと出た。
「射程に入る頃だ。タイカの魔導艦ではこちらの装甲は抜けなかったらしいが念のために装甲強化を展開しろ」
「万が一にも落とされる訳にはいきませんからな」
ユースティアが誇る装甲魔導強化障壁は2つの技術を複合させている。
敵の魔導砲出力を算出し逆位相の膜のようなシールドを展開することで魔導砲の威力そのものを減衰させて弱体化させる。その上、直接強化も行う魔導障壁だ。
「魔導強化障壁を展開。出力上昇中……」
「敵の魔導通信を傍受しております。頻りに通信している模様。魔導波の解析中です」
キルス空将の下に次々と報告が上がる。
戦闘指揮所にて全艦の情報が統合されて把握される情報管制システムはしっかりリンクされていた。
「バーラデリ共和国魔導艦隊の魔導波の解析を完了。装甲強化を行います」
オペレータが淡々と作業をこなしていく。
全てが効率化されておりシステムには無駄がない。
「装甲の魔導強化及び、魔導強化障壁の展開を完了しました」
「よろしい。では敵軍へ最後通告を行う。通信開け」
キルス空将が通告内容を口頭で述べる。
通信士がそれを復唱、魔導通信を敵艦隊へ算出した周波数で送信した。
「魔導通信を行う……こちらはユースティア魔導艦隊である。バーラデリ共和国艦隊に告ぐ。ここはタイカ民主国の領空内である。直ちに撤退せよ。これは最後通告である」
「こちらはユースティア魔導艦隊である。バーラデリ共和国艦隊に告ぐ。ここはタイカ民主国の領空内である。直ちに撤退せよ。これは最後通告である」
通信士は敵艦隊からの通信を待つ。
キルス空将らも冷静に報告を待っていた。
例え技術格差があろうとなかろうとユースティアは戦闘を望まない。
しばしの刻が流れる。
「通信ありません。呼び掛けますか?」
「よろしい。ならば戦闘だ。今回の派兵は安全保障条約に基づいたものではなく、あくまでタイカ民主国の混乱を抑えるためのものだ。過剰な攻撃はこれを禁止する。タイカ艦隊へ内容送れ。向こうが攻撃し次第こちらも攻撃に加わる」
「アイ、コピー」
『こちらユースティア魔導艦隊旗艦〈マグナ〉。敵艦隊はこちらの通告を無視した。戦闘になれば加勢する。以上』
タイカ民主国魔導艦隊が前進を開始すると敵艦隊にも動きが見られた。
お互いに確実な有効打を与えられる距離まで近づくためだ。
「敵艦隊、我が方へも展開中。魔導戦艦5、魔導巡洋艦10、魔導装甲巡洋艦12、魔導駆逐艦24」
「タイカ民主国艦隊が攻撃を開始しました。敵艦隊も反撃を開始した模様」
「よし。全艦に通達。主砲、副砲の全砲門を持って反撃せよ。側面砲は使うな。油断はするなよ」
キルス空将が冷静な口調で命令を下した。
ユースティア魔導艦隊の全砲門が開かれる。
―――
――バーラデリ共和国・魔導艦隊
「新たに出現した艦隊の国籍はユースティア。2時の方向よりこちらへ向っています」
バーラデリ共和国魔導艦隊旗艦〈デリー〉で艦隊提督のスパルタンが吠える。
「あのような小部隊に我が艦隊が負けて堪るか!!」
「提督閣下、あのような艦隊にタイカは負けたのです。油断は禁物かと」
艦長が警告することで冷静さを取り戻す。
そして前進してタイカ魔導艦隊へ
「何をちまちまと攻撃してくるのかと思っていたら援軍があったか。しかも敗れた敵国に援軍を要請しただと? プライドがないのか?」
「現実は厳しいのでしょう。恐らくこの空域にいる艦隊で全てなのでは?」
「そうだな。つまりアレを殲滅すればタイカ上空の制空権を握れる訳だ」
「地方軍閥にも魔導艦を持つ勢力があります。それらも撃破せねばなりますまい」
タイカに付いたからには撃破せねばならない。
ユースティアは小規模艦隊であるのでスパルタンはこの程度で抑えられると計算し、彼の思考は抑えの艦隊の選別に入っていた。
「ユースティア艦隊より魔導通信が入りました」
「読め!!」
「こちらはユースティア魔導艦隊である。バーラデリ共和国艦隊に告ぐ。ここはタイカ民主国の領空内である。直ちに撤退せよ。これは最後通告である」
考えを強制中断させられたスパルタンが豪快に嗤う。
身の程を知らない連中があの程度の戦力で偉そうなことを言うものである。
いっそ清々しいほどだ。
「こちらも艦隊を分けるぞ。ユースティア艦隊には魔導戦艦5、魔導巡洋艦10魔導装甲巡洋艦12、魔導駆逐艦24を当てろ。射程に入り次第沈めてやれ!!」
その命令が正確に全艦隊へと伝達され、統率の取れた動きでタイカ艦隊とユースティア艦隊へと進んで行く。
初めに砲撃を開始したのはタイカ艦隊であった。
「ふん。装甲は強化済みだ。いつまでも技術的な優位があると思わんことだ。直ちに反撃せよ!」
タイカの魔導艦隊とは幾度となく衝突して来たことで、バーラデリ共和国魔導艦隊の技術は磨かれその水準は上がっている。
それに加えて現在は数的優位な状況だ。
負けることなど有り得ない。
「魔導巡洋艦〈ン・ドール〉被弾。魔導装甲巡洋艦〈ン・ドラ〉被弾。いずれも損害は軽微です」
空中に淡い緑色の雨が降る中、各艦は上手く攻撃を回避しているようだ。
魔導砲はそれほど命中率が良いものではない。
スパルタンはいけると言う顔になり、いよいよ意気盛んだ。
「敵艦に命中。轟沈します!」
『おお!!』
どよめきが艦橋の中に広がる。
スパルタンもここぞとばかりに叫んだ。
「敵艦隊の唯一の魔導戦艦を狙え! アレを落とせばタイカの士気は落ち指揮系統も乱れるぞ!」
通信士が全艦隊に魔導通信で指示を送る。
後は吉報を待つのみ……と思っていたスパルタンに耳に衝撃の報告が入った。
「ユ、ユースティア艦隊が砲撃を開始しました!!」
「それがどうしたッ!? こちらも打ち返せと伝えろ!!」
「こちらの射程圏外からです!」
「何ぃ!?」
スパルタンが思わず目を剥いて驚愕する。
射程が上回ると言うことは威力に自信があると言うこと。
「(減衰が少ないのか!? まさか威力が上だと言うのか。いや大丈夫だ。まだ我が艦は落とされていない!)」
「魔導巡洋艦〈ン・グプル〉ご、轟沈!! 魔導巡洋艦〈ン・ストラ〉轟沈!! 各艦から最期を伝える通信が入っております!」
「あの距離からそれほどの威力があるだと!? 馬鹿なことを!!」
「提督閣下、応援を出してユースティア艦隊の側面に回り込ませては?」
「よし、ユースティア方面に援軍を出せ! 敵側面より攻撃!!」
前方とタイカ艦隊とは一進一退の攻防が繰り広げられているが、その一方では轟沈報告が次々と上がってくる。このままでは抑えが全滅してしまう。
「速く回り込ませろ! 魔導戦艦も回せ!」
「タイカ魔導戦艦に命中多数! 傾いています!」
「よしッ!!」
「魔導戦艦〈ン・コータ〉被弾! タイカ側も戦艦を狙い撃ちしてきます」
「構わん!! 数で押し潰せ!!」
南タイカ海空域戦は3か国の砲撃が飛び交い、予断を許さない攻防が続いていく。
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