第18話 ユ・ド講和会議再開
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アルトア沖海戦でユースティアは圧倒的な勝利を収めドゥーリ共和国政府からは講和交渉再開の申し出が打診された。
暴走して独断で大規模艦隊を送った挙句の大敗北である。
海軍長官のジョナサンと国防長官のランスは更迭され、罪を問われることとなった。これにより非戦派が政府中枢の一致見解となり、国民にも大敗北の報は正確にもたらされた。同時に世論誘導も行われ、心を折られた人々の心は一気に講和支持へと傾いていた。また、ユースティアが敵国にもかかわらず共和国海軍の者たちを積極的に救出していたことが知れ渡ったお陰もある。
だが、それでめでたしめでたしとは行かなかった。
何故ならば――
ドゥーリ共和国艦隊の砲撃を被弾した駆逐艦級護衛艦で死者が3名と言う最悪の事態が起きてしまったからだ。
転移後に起きた戦争では初の犠牲者が出てしまったことになる。
これにより政府は野党の厳しい追及を受けることとなり、マスメディアが大々的に報道。作戦立案に問題があったのではないか、更には何故魔導艦隊を送らなかったのか、などが大きく取り立たされ世論が割れる。
『何で圧倒的な戦力で勝った国とまた戦いになってんだよ。交渉失敗した政府の責任だろ』
『魔導艦隊を使わないとか舐めプし過ぎだろ。だから戦死者なんか出すんだよ』
『態々海上で艦隊決戦とか正義のヒーローにでもなったつもりか?』
『とんだ無駄死にの件』
『つか転移してから戦争ばっかりやってね?』
『資源と食糧確保のためなんだから仕方ない』
『国防隊に入った時点で覚悟はしておくべき。だからやむを得ない』
『仕掛けられた戦争だろ? 舐められてんだよ、この国は』
『政府が相手の心を折る必要があったって言ってたろ。それが全てだよ』
『旧世界の常識が通用しないんだからもっと軍拡すべき。世界のほとんどが覇権国家なんだからな』
このような発言がSNSで日々交されている状況だ。
政府も首脳も頭を痛めていた。
「本当に想定外だなぁ……相手が交渉の席についたのは成果だが圧倒的格差がある国との戦いで戦死者が出ちまったとなるとな」
まさかの想定外。
最初の作戦を承認すべきだったのか、口出しすべきではなかったのか。
スレイン総理は内心、自問自答を繰り返していた。
「この責任問題は大きな火となるでしょう。不信任案を出す動きもあるようですし」
「国防隊の犠牲は仕方ないことでしょう。戦争なんだから――」
「それは失言ですよ! 人の命をどう思っているんですか!」
不謹慎な発言にカノッサ法務大臣がいつものように噛みついている。
「俺としては解散して総選挙する気だったから、心構えは出来てたんだがな」
「支持率下がりっぱなしですよ? 解散したら負ける可能性すらある」
「ひょっとしたらひょっとするかも知れませんね」
「野党が政権なんて握ったら最悪なことになりかねないですよ? 平和と友愛を語るしか能のない連中ばかりですから」
一部の過激派はドゥーリ共和国に侵攻しろと声高に叫んでいる。
流石にそんな舵取りをするつもりなど誰にもないが、報復を望む者が一定数いることも事実。
「任期はまだあるがいつまでも非常事態宣言を出しっぱなしな訳にもいかねぇ。新しい問題も起こってないし俺としては解散して新しい指導者が我が国を導いて行って欲しいと思ってる」
「確かにそうですが……議席減りますね。大幅に」
「何か大々的な成果があればいいんですが、何かないんでしょうか?」
じっと話を聞いていたユベール国防大臣が意を決したかのように口を開く。
覚悟を決めた男の顔だ。
「そもそも心を折ると言い出したのは私です。私が辞任すれば多少は収まらないでしょうか?」
「賛同したのは俺も一緒だ。気にすることはねぇさ」
「次は任命責任がーって言われるだけですよ」
転移後に起こった戦争に関わり続けてきた功労者である。
誰も責めるようなことはしなかった。
「成果だ。目に見える成果を出すしかないだろうな」
・既存の資源ではない、ゼノ固有の新資源の発見。
・国交締結国を増やす。
・国際秩序の構築をリーダーシップを取って成功させる。
・人道支援、インフラ整備などを行う。
一番分かり易いのは外交の成果だろう。
それが為せれば安全保障の観点からも支持される可能性が高いと言える。
ユースティアと言う国家の存在をアピールし、無くてはならない重要な国家と認識させることが必要だろう。
―――
一方アルトア王国では――
言語理解が進み、交渉が再開されたことで円滑に会議が回るようになっていた。
ドゥーリ共和国側からは元総督のノーラントだけでなく、外交長官のドメストまでもが足を運んでいた。まだ外務官僚たちによる詰めの段階で外交のトップが交渉の場に現れることは珍しい。
少しでも自国が有利に働くように態々やってきたのだ。
敗戦国なのだから尚更であった。
それを聞いたユースティアのユリアス外務大臣もアルトアの地へ飛んだ。
緊急で事前の根回しなしの話し合いが行われることとなる。
場所はアルトア王国の迎賓館。
格式高い壮麗な建物で、歴史を感じさせる造りになっている。
特にドメスト外交長官は見慣れない光景に目を奪われている様子だ。
「とても美しい建築物ですね。思わず見とれてしまいそうですわ」
「全くです…我が国にはこのような建築様式などありませんからね。正直少々興奮気味です」
その発言に場が和んだ。
通訳がユーモアも交えて翻訳したのだろう。
あくまでも非公式な会談なので少し緩めである。
そのせいもありアルトア王国が用意したお茶とお菓子だけでなく、ユリアスが持参したりユースティアのお菓子も並べられている。
ドメストは甘党らしく双方に興味を抱いているようで、早速手に付けている。
「こ、これは失礼を……しかしこれほど美味しいお菓子があろうとは……これだけで外交長官になった意味があったと言うものです」
「気に入って頂けたようで何よりです。講和交渉がまとまって国交開設となれば、いずれ我が国の製品も輸出することになるでしょう」
「貴国の寛大な心に感謝致します。この度の軍部の暴走を止められなかった責任は当方にあります」
そう言ってドメストは頭を下げる。
慌ててそれを止めるユリアスであったがそれも当然の話だ。
非公式とは言え、国家の外交トップが頭を下げる意味を理解していないはずがない。
「我が国が望むのは平和です。この世界に転移して来た時には驚いたものですが、ここは少しばかり戦争が多い」
「た、確かにそうですな。我が国のあるゼムリア大陸の国々も海外に領土を求めて海軍を派遣していますし……恥ずかしながら我が国もでしたな」
自嘲気味に述べた言葉であったが周囲から笑いが漏れる。
ドメストも特段気にすることもなかった。
「我が国は神聖ヴァルガリア帝國と接触し、国際秩序の構築とその組織作りを提言しております。法を作り世界から戦争をなくす道を模索するために」
「私も賛同致します。まだまだ海外進出を行う意志を持つ者は多いですが、私個人の意見としては戦争よりも貿易で相互扶助の関係を構築できたらと考えております」
「素晴らしいお考えかと存じますわ。それに海外を植民地化して富を吸い上げても国家運営は最終的には赤字になるでしょう。そこに利などありません」
「なるほど……そうなのですか。貴国も歩んできた道と言う訳でしょうか?」
「旧世界では我が国も血塗られた歴史を歩んでまいりました。それ故に平和がどれだけ大切で得難い物なのかも理解しているつもりです」
「そのようなことが……技術格差があるとは聞いておりましたが、勝てないはずだ……国家が理想を語るのは無意味、ただ国益のみを追求しろと言われたものですが、そのような理想なら共に進みたくもなると言うものです」
「ありがとうございます。我が国はそれを希求することを止めないでしょう。例え他国と国益がぶつかり合ったとしてもまずは話し合いでの解決を望みます」
「高潔な考えであると思います。我が国も……私もそれを胸に刻みましょう」
短時間ではあったがユースティアとドゥーリ共和国との外交トップによる非公式会談は無事終了した。これに感化された外交長官ドメストは親ユースティアになり、今後の国家運営に大きく関わっていくことになる。
両国共に戦争の犠牲者に対する哀悼の意を交わし合ったことだけが報道された。
そのお陰か、ユースティア国民の溜飲も多少は下がったようである。
以後、ドゥーリ共和国はユースティアの友好国として発展していく。
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本日7/21(月)から新連載を開始します。
タイトルは以下の通り。
『異世界に転移させられたんだが、俺のダンジョン攻略が異世界と地球で同時ライブ配信されているようです』
https://ncode.syosetu.com/n3681ku/
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異世界と地球(世界)の両世界でダンジョン攻略の様子を同時実況配信されてしまうお話。
主人公が天国と地獄の勢力争いに巻き込まれていきます。
6話目からですが、水晶球のサフィさんの実況解説動画を是非ご覧ください。
投稿開始は18時からで本日は3回更新予定です。
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