第16話 アルトア沖海戦 ①
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対ドゥーリ共和国対策本部に急報が舞い込んだ。
『ドゥーリ共和国海軍、大艦隊を持って南下す』
その数は戦艦10、装甲巡洋艦25、巡洋艦17、特務艦(補給艦等含)25である。
すぐに対策本部にスレイン総理を始め、そうそうたるメンバーが集まった。
「敵さんは講和交渉を打ち切ってきたのかい?」
スレイン総理がすぐに切り出した。
いつにもなく真面目な態度で会議に臨んでいる。
「いえ、すぐに問い合わせたところ、元総督のノーラント氏は与り知らぬ話だと。ただ恐らくは海軍長官を中心とした継戦派による暴走だろうと……寝耳に水と言うことでしょう」
「軍部が暴走したのか……対応はどうなってるんだ?」
「はい。ノーツ本島のアセム空防基地から魔導艦隊を派遣する作戦を立案しました」
相手の戦力を考えたら普通はそうするよなとスレインも同じことを考える。
「ではご説明させて頂きます。ドゥーリ共和国海軍は蒸気機関による海上艦隊だと思われます。燃料は石炭でしょうか……。前回の戦いで魔導戦艦の側面砲で装甲が抜けることは確認済みです。アルトア王国接触時に確認されたのですが、速力も15ノットから20ノットと言ったところです。負ける要素はありません。アルトア派兵時と同様に空からの対地砲撃による攻撃で勝負は付くかと思われます。派遣するのは魔導戦艦2隻、魔導巡洋艦3隻。現在の進路から敵艦隊はアルトア王国王都を直接狙ってくると推測されます。アルトア――アルクセイ大陸を反時計回りに進んで来るものと思われますので王都沖、アルトア沖でぶつかることとなるでしょう」
今日のスレインは何処か冴えていた。
浮かんだ疑問を思いついた先から口にしていく。
「首都に直接? 何処か……北部に陸軍を上陸させるってことはないのか?」
「非戦派から情報提供を受けております。陸軍は継戦に消極的であると。それに揚陸艦も見当たりませんし」
「アルトアにいるドゥーリ陸軍は撤退してないんだろ? そこんとこはどうなんだい?」
「海軍が撤退させるための艦船を出さないようです。ですがアルトアのドゥーリ陸軍は完全に武装解除されており問題はないかと思われます」
「それでも例えば包丁とか農具とか、最悪、竹槍みたいなので蜂起したらどうするんだ? アルトア国民に犠牲が出るぞ?」
そのことに気が回っていなかったのか、説明していた参謀総長の顔色が悪くなる。更にユベール国防大臣が作戦に口を出した。
「確かに魔導艦で挑めば一方的な戦いになるでしょうが、それでドゥーリ共和国の継戦派が納得するでしょうか? 私はまだまだ大人しくならないと思うんですよね。ですからここは敢えて海上艦隊による艦隊決戦で勝利を掴み、相手の心を折るのが重要だと考えますが如何か?」
「……なるほど。魔導ではなく科学で勝てと言うことですな」
「そうです。魔導などと言うドゥーリ共和国にはない技術のせいで負けたのではなく、圧倒的な科学技術格差があったから負けたんだと認識させるべきだと考えますね」
「同じ土俵に立てと……直ちに作戦を再検討致しましょう」
その後、作戦が変更され承認されることとなる。
・ドゥーリ共和国の海上艦隊をアルトア沖で迎え撃つ。
・戦力は戦艦級護衛艦5、巡洋艦級護衛艦8、駆逐艦級護衛艦14、潜水艦5。
・護衛艦隊群の主砲ではドゥーリ共和国海軍艦隊の装甲を抜けない可能性を考慮して念のため潜水艦も随行させる。抜けない場合は護衛艦および潜水艦のハープーンによる対艦ミサイルで撃沈する。
・アルトアに新たに陸防隊1個連隊を派兵し治安維持に当たらせる。
・ドゥーリ共和国が保有していない戦闘機は使用しない。
「しかし主砲で抜けませんかね? 54口径127mmですけど……」
「装甲巡洋艦ぐらいならいけそうじゃないか? まぁ対艦ミサイルがあれば十分だろ」
直ちにノーツ本島に戦力が集められる。
―――
――ドゥーリ共和国・海上艦隊
曇天の中、アルトア奪還のために大艦隊が海上を進む。
空は暗く今にも泣き出しそうだ。
進んでも進んでも海しか見えない。
かつてアルトア王国へ向かった者たちも同じ感想を抱いただろうか?
答えは否。
初の海外進出の高揚感で士気から何から違っていただろう。
かと言って決して士気が低い訳ではない。
艦隊司令に任命されたジェリム海将はこの戦争にあまり乗り気ではなかった。
聞かされた話によれば、アルトア攻略戦の際に艦隊を率いたクロウラ提督は敵である空飛ぶ船――魔導艦の圧倒的な艦砲射撃により戦死。
艦隊も海の藻屑となり今や海底に眠る粗大ゴミとなってしまったと言う。
「なんで俺が……どうせなら継戦派のジョナサン海軍長官かランス国防長官が行ってくれればいいものを……」
そんなことをぶつぶつと呟いてみるが、そうしてみたところでどうにもならない。
なるはずがない。
彼はノーラントと交流があり敵国――ユースティアのことを聞かされていた。
圧倒的な魔導艦隊による空からの一方的な攻撃で海軍は壊滅。
陸軍も見たこともない兵器で撃破。
何故、非戦派の自分にお鉢が回ってきたのか上層部に小1時間問い詰めたいくらいであった。
「ジェリム司令、敵艦隊は空を飛ぶそうですが、如何して勝つおつもりですか?」
戦艦〈ドーロス〉の艦長が陽気な声で尋ねてくる。
よくもまぁ、のうのうと言えるものだとジェリムは殺意を覚えた。
殺意で人を殺せたら……そう本気で思ったほどだ。
「貴君は何も知らんようだな。海上から砲撃しても空を飛んでいる物になど当たらんよ」
「何を弱気なことを! あの勇猛果敢なジェリム海将とは思えませぬな。何のために対策をしたと言うのです!」
「(ああ、アレのことか……)上空に向けた急造の砲が当たるはずがなかろう。突貫で取りつけたせいで船体の重要区画からバランス……何から何まで変わっているのだぞ? 今の状態で撃ってみろ。船体の方が自壊するわ」
上空に砲弾を撃ち出す兵器が必要なのはよく分かる。
一応、発射試験はしたと聞いているが、あの構造で砲撃でもしようものなら衝撃で船が壊れるのは必至。
よくもまぁアレでGOサインが出たものだと感心さえしてしまうほどだ。
それに陸軍でも大口径の砲を積んだ鉄車がアルトアで無双したと言うではないか。
ノーラント氏が見たのは魔導などと言うものではないのではないか?
話によると砲弾が飛んできて爆発したと言う。
となると火薬を使った弾丸を撃ち出したのではないかと思う。
恐らく我が国と同じ科学技術を基にした兵器だ。
ジェリムの頭の中では最悪の予想が次々と浮かんでは消え浮かんでは消えを繰り返していた。
「ノーラント氏は圧倒的な技術格差があると仰っていたな……」
「そんな敗者の弁など聞く必要などありませぬぞ!」
艦長のお気楽な態度を見て、ああ俺もこいつのように考えられたら!
とジェリムは自分のまともさを呪った。
いっそ狂ってしまえれば楽になれただろうに。
ジェリムは人生の終焉を悟り遠い目をして絶望した。
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