第15話 獅子州連合の火種
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――獅子州連合
中央世界の北西部に突き出た大陸の国家群の総称である。
盟主国家はフリーレンス共和国。
加盟国は16か国にも及ぶ。
国土は神聖ヴァルガリア帝國などとは比べものにならないほど小さいが、1国1国がかなりの国力を誇る。
大航海時代を経て各国が世界各地を植民地化したお陰で、本国は非常に潤っている状況である。主に南東世界の南東諸島や北アウストラリス大陸の多くが植民地化されており、徹底的な収奪が行われ本国が富を吸い上げていた。
西にアトランティス帝國、北にランディス合衆国の2大列強が存在するせいで常に両国からの圧迫を受けているものの、獅子州連合として対抗し侵攻を幾度となく跳ね返している。
逆に内乱状態のアトランティス帝國北部に圧力を掛けることもあり、経済行動、軍事行動共に活発であった。
南にはスタン帝國と中央世界の最大列強国、神聖ヴァルガリア帝國が大きな存在感を示しているが後者とは同盟関係にあり、スタン帝國を共通の敵としている。
しかしその強固な結束に今、亀裂が入ろうとしていた。
原因は植民地争奪戦で後塵を拝した国家が不満を持ったこと、そして最新の国家転移で世界情勢に変化が訪れたことなどが挙げられる。
連合の中央部に位置するドイチェルト帝國もそんな国の1つであった。
―――
――ドイチェルト帝國・帝都ドルチェ
「列強が落ちて世界のバランスが崩れている……このまま獅子州連合の1国家として終わる。それでよいのか?」
帝王ヴィルムⅥ世は獅子州連合発足前に獅子州を席巻したヴィルムⅠ世の遺言を思い出し、自問自答していた。
やれることはやっている。やってはいるのだ。
獅子州の国家は海外進出のため多くの予算を海軍に投じている。
そんな中、ドイチェルト帝國は陸軍にもかなりの額を割いて技術を磨いてきた。
『必ずや獅子州の覇権を握るのだ。そして列強国に名を連ねよ』
ヴィルムⅠ世の遺言――
「現状を考えるととても建国王に顔向けできぬ……」
タイカ大帝國が列強の座から転落して以降、ヴィルムⅥ世は眠れぬ夜を過ごしていたのだ。そんな偉大なる帝王を側で見てきた侍従長は心を痛め、時の政府首脳へと相談する。事態を重く見た政府は緊急で御前会議を開き、帝王たるヴィルムⅥ世の意向を拝聴することにした。
御前会議――
「タイカ大帝國が敗れたことによって神聖ヴァルガリア帝國やランディス合衆国、スタン帝國の目はタイカの地、オースティン大陸へ向いております。まさに好機と存じます」
口火を切ったのは帝國宰相エックハルトであった。
彼は時代の変化を肌で感じており、現在の状況に閉塞感を抱いていた。
「だがアトランティス帝國はどうするのか? あそこは貧弱な海軍しか持たんが、あのロボット技術は侮れんぞ?」
「いや、あの国はいつも内乱中であろう? こちらに戦力を向けることなどできぬのでは?」
ここで帝國情報部より発言の許可が求められ、許される。
立ち上がった情報部部長は冷静にならざるを得ないような情報をもたらした。
「それについては情報部より発言させて頂きます。彼の国はノルナーガ侯爵によって統一寸前であり、本人も海外への進出に乗り気であると掴んでおります。もし獅子州が戦乱状態になれば介入してくる恐れがあると分析しております」
情報部の信頼性の高い情報に場が騒々しくなっていく。
アトランティス帝國が内乱に終止符を打てば、その目が海外に向くことは必至だ。
「確かにあのオートマトンは脅威の一言に尽きる……」
「わしから言わせればアンドロイドも十分脅威だがな。サイボーグはまだ何とかなるだろうが、倒したと思った兵士がサイボーグ化されて戻ってくることを考えるとそれもどうかと思う」
オートマトンは死を恐れぬ兵士。
その力こそ特別な能力は左程ないが攻撃を受けても、何の痛痒も感じずに前進しくるのは陸軍兵士にとってかなりの恐怖の対象となるだろう。
「海で迎撃して上陸させない他ないのではないでしょうか? あの国は海軍の整備が遅れておりますし」
海軍大臣としてはごくごく普通の考えだ。
アトランティス帝國の現有海軍は決して強いとは言えず、獅子州連合国家に軍配があがるだろう。しかし万が一にでも上陸されれば、あちらに優位性があるのは間違いないことであった。
「以前、情報部から頂きました兵器の資料に関して分析した結果、オートマトンやアンドロイド、サイボーグには超電磁砲が有効なのではないかと報告させて頂きます」
それを聞いて皆の顔が訝しげなものに変わる。
そんなものは初耳だとでも言わんばかりである。
ちなみにここで言う超電磁砲はレールガンのことではない。
「かなり強力な電磁パルスを発生させることができます。電子系統を破壊することも可能であるかと存じます」
兵器開発大臣が覗かせる自信に、皆の表情が期待に染まる。
次々と質問が飛び、彼がそれに回答していった。
「それはどう言ったものなのかね? 戦艦の主砲にでも取りつけるのか?」
「そうです。海上艦及び戦車に搭載可能です。ただ軽量化できている訳ではないので小銃には無理でしょう」
彼の発言から陸軍大臣がしばし瞑目して考えると何か思いついたかのように目をカッと開く。
それはまだ想定されていなかった運用法。
「爆撃……爆弾にの搭載可能か?」
「なるほど……そのような使い方ですか……可能です。そちらはまだ実装しておりませんが上空で起爆させれば広範囲に障害をもたらすと考えます」
「興味深いですな。それがあれば戦いを優位に進められる」
「あべこべにアトランティス帝國を併呑すらできるのでは?」
「だが友軍がいる場所では使用できまい。こちらにも損害が出るぞ。諸刃の剣だ」
会議が熱帯び、出席者たちの興奮が高まる。
帝王ヴィルムⅥ世も満足げに頷きながら何やら思案しているようだ。
速い話が核の電磁パルス発生能力のみのバージョン兵器なのだが、ゼノの世界ではどの国も核兵器を開発していないのが現状だ。
「まぁアトランティス帝國については良いだろう。捕らぬ狸の何とやらだ……問題は獅子州各国を敵に回して勝てるのかと言うことだ」
国防大臣としては攻め込んだはいいが、反攻されないか不安なのである。
当然の懸念事項と言えるが。
「そのために機甲部隊を創設し鍛え上げてきた。我が国に負けはない」
「中央部にある我が国では周囲全てが敵となり前線となるんですよ? そう容易にいきますまい」
「宣戦の詔勅があれば、陸軍は全力を持って応えるだろう」
「精神論を聞いているのではない。実際に戦略はあるのかと聞いている」
国防大臣と軍務大臣、陸軍大臣が一触即発の事態になった時、不意に発言する者が現れた。
帝王ヴィルムⅥ世である。
「良い……元々獅子州連合は一枚岩ではない。我が国と同じ思いをしておる国は多いのだ。彼の国と組んで立ち上がれば決して負けるとは思えぬ」
国家元首として胸襟を開いて語り合える王族が各国には存在した。
獅子州の各国が未だ完全な民主制ではないことから可能な芸当である。
ヴィルムⅥ世も水面下で信用できる他の王族を調べ親善訪問と言う形で接触していたのだ。
自分ができることをしようと言う意志を持って。
「御意にございます」
事実上の戦争許可である。
帝王の判断は全てにおいて優先されるべき事項だ。
「わしの意見に同調している国と連携し、戦争を前提に協議を開始せよ。これを機会に我が帝國は更なる発展を遂げるだろう」
『ははッ!!』
ヴィルムⅥ世は建国王ヴィルムⅠ世が抱いた夢を現実にせんと欲す。
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