第13話 ユースティア政府、腰を低くして使節団を迎えるってよ
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ユースティアの首相官邸の小ホールには内閣総理大臣ノクス・スレインと親善使節団を代表した4人が揃っていた。
普段は総理自らが対応することなどないのだが、相手が相手なだけあって特別対応することとなったのだ。
「皆さん、ユースティア内閣総理大臣を務めております。ノクス・スレインと申します。どうでしたかな? お楽しみ頂けたなら幸いなのですが」
スレインはにこやかな笑みを浮かべながら丁重に来賓を迎えていた。
かなり気を遣いつつ丁重な態度を取っており、普段のスレインを知る者が見たら誰だこいつと思うこと間違いなしである。
彼は右手を差し出して握手を求める。
「態々お出迎え頂きありがとうございます! とても興味深い体験ができた考えております」
4人を代表して外務次官のガルレアが満面の笑みでそれに応じた。
手を握り合いながらスレインは今回は無事に終わりそうだと胸を撫で下ろしていた。
「それならば良かった。段取りが決まるのが速かったですからな。心配していたんですよ」
「我が国もそれだけ貴国に興味があると思って頂きたく思います」
神聖ヴァルガリア帝國としては未だかつてないほどに興味を持っていることは間違いない。
上層部は既にユースティアを脅威と見なしていた。
幸いなのは敵対する危険性を一応は理解する者が多かったことだ。
「それは嬉しいお言葉です。中央世界の覇者たる貴国にそう言って頂けるのは……私共としましては国交の締結、通商、大使の派遣など様々な交流を望んでおります」
中央世界などと言う大層な名前を持った領域を支配している超大国の顔を立てるために、スレインは最大限の努力をして彼の国を持ち上げる。
ガルレアとしてはあれだけの物を見せつけておいて今更とは思っていたが、ユースティア側が面子を護ろうとしてくれていることくらいは感じ取っている。
「総理のお言葉はそのまま責任を持って政府に伝えたいと思います」
ここで大事なことを伝えていなかったと気付いたスレインが提案した。
この感触なら相手も乗ってくるだろうと言う手応えも感じていたためだ。
「ああっとそうだ。もう1つ。この世界にはもっと秩序が必要だと我が国は考えております。聞けば長き刻に渡り戦乱の世の中が続いているとか……国際組織を設立し、その枠組みの中で国際法などを定めていけたら良いのでは?と提案したい」
「国際組織ですか……? ふーむ……確かに世界に秩序をもたらすことになるかも知れませんね」
ガルレアとしても『ゼノ』の世界は秩序立っていない気はしていた。
しかし、スレインと彼の考えには決定的な違いが存在していることに双方は気付かない。
「新秩序を確立することができれば、世界は安定するでしょうな」
「私からも強く意見具申させて頂こうと思います」
2人は意見の一致を見たと考え、表情はにこやかだが、その心の内が全く違う。
スレインは作った国際組織に大小問わず様々な国家を加盟させ、平和で平等な世界秩序を構築することで交流を加速させていこうとする考えだ。
そして旧世界のように欺瞞に満ちたものだとしても、護るべき法を取り入れて遵法精神を芽生えさせようとする狙いであった。
対するガルレアの考える新秩序とは国力や戦力によって国家を格付けし、順位付けることで世界を安定化させると言うものである。
国際法に関しては正直戸惑ったのだが、列強国同士の取り決めや属国化などの扱いについての取り決めだと考えていた。
まさに相成れない国家ばかりが転移してくる世界である。
これでは平和になるはずがない。
1国による世界制覇が可能ならばそれでよいのかも知れないが、そんなことは無理である。とは言え、そう言う考えを持っている国が実際に多数存在する事実こそがユースティアから見れば驚愕に値するのだが。
2人のすれ違いコントは最後まで終わることはなかった。
政府関係者に見送られて使節団は首相官邸を後にして再びザルツ本島のクォーカへと向かうのであった。
「ユースティアにも皇帝がいらっしゃるようですしお会いしたかったですね」
「そうだな。確か2600年近くの歴史があると聞いたが……」
「人間であることを考えると悠久の刻を感じますね。我々のようなハイエルフとは時間の感覚が違い過ぎるでしょうし」
「まぁいずれ両国の皇帝同士が相まみえることも有るかも知れないな」
こうして使節団一行は多くのお土産を持たされて無事、帰国の途に就くこととなった。
若干の火種を残して。
―――
首相官邸では会談を終えたスレインが力尽きそうになっていた。
そんな彼の元にニコライ官房長官がやってくる。
「総理、今日もお仕事お疲れ様でした」
「あったりめぇよ……かなり気を遣ったぜ……」
「後は細かい調整が必要です。正式に国交を樹立し平和的に世界がまとまっていけば良いのですが」
「まったく国家転移してから激動の日々だったなぁ……バーグ王国、ドゥーリ共和国、タイカ大帝國、ガラベルム帝國……ちょっと、いやかなり好戦的な国ばかりだったな」
スレインの愚痴は止まる気配はない。
ニコライもいつものことだと普通にそれを聞き流している。
「これでようやく選挙できるな。野党の解散コールも聞き飽きたことだしなぁ」
「総理は続投される気はないので?」
「当ったり前よ! 新しい時代には新しい指導者が必要なんだ。俺みてぇな年寄りはさっさと席を譲らなきゃいけねぇんだよ」
世代交代の時が一番恐ろしい。
これまで大切に護ってきた物が簡単に壊される。
他の国もやっているから、その方が自由だから、その方が楽だから、その方が便利だから、意味が分からないから、科学的じゃないから、精神的なことだから、歴史なんて必要じゃないから。
自らの頭で理解しようともせず、他人の言葉を鵜呑みにするだけでは国体や伝統、そして歴史など護れない。
「勝てますかねぇ……」
「勝つさ。俺たちは国家転移なんて言う未曽有の大災害を乗り切ったんだぞ?」
「そうかも知れませんね。今のところ順調ですし食糧問題も解決して様々な資源も見つかっていますから」
「何だ? 何か言いたげだが」
「いや何故か嫌な予感がするものでして……」
「またどこかと戦争になるってか? 何なら君がなればいいんじゃないか?」
「私は平和主義者なのでご遠慮させて頂きます」
確かに対ガラベルム帝國戦では、国防隊員だけでなく下手をすれば国民にまで被害が出ていたような命令を下した男である。
スレインだったら決してしなったような決断。
「まぁ戦争を経験してない政治家にやらせる不安はあるっちゃあるな」
旧世界でもそうだったが、この世界は特に相手に舐められると言うことが戦争を誘発しかねないと現政権は学んだ。それを次代の政権にもちゃんと引き継ぎ、強く認識させなければ再びユースティアは戦争に巻き込まれかねない。
だからこそ、今回の使節団にも軍事力の一端を見せつけた。
「世界は広いからなぁ。舵取りは上手くやらなきゃどこかの国に属国化されちまいそうだな」
スレインの悩みはまだまだ尽きそうにない。
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