第10話 神聖ヴァルガリア帝國からの使者
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対タイカ大帝國戦争が集結し、無事講和条約の締結にこぎつけることができたユースティア政府は当面の戦争はなさそうだと安堵していた。
タイカ大帝國はタイカ民主国にその名を変え、民主制へと移行。
クレア半島から彼の国の影響力を排除した。
そして割譲された領土――マグナ半島では国防隊基地の建設と資源などの調査、測量などが行われている。
幸い原住民とのファーストコンタクトは成功し、協力も得られそうだと言うことなので統治面の懸念も与野党問わず上がっていない。
現在時点ではあるが、マギアニウム結晶の鉱脈と油田があるらしいとの情報が上がっており資源開発省では忙しい日々が続いていた。
忙しいことは良いことだ。
スレイン総理もそう考えていた。
アルトア王国で行われているドゥーリ共和国との講和交渉も進展の兆しがある。
何と言ってもマギロンの差異にかかわらず翻訳魔法の効果が認められたのだ。
言語の壁に苦戦させられていた現場は大いに湧き立ったと言う。
元アルトア総督のノーラントは本国との調整が大変だと嘆いているらしいが、ユースティア政府としては技術格差の面からドゥーリ共和国側も無茶はしないと想定している。
南の島――ザルツ本島の海戦で戦ったガラベルム帝國も被害の大きさを実感したのか講和をチラつかせてきており、当面衝突することはなさそうだ。
外務省としては彼の国を好戦的な国家であると分析していたため意外な展開に少しばかり憂慮しているが、元より強気な外交をしないことで有名だっただけあってむしろ感心する者まで出る始末である。
一時は三正面作戦へと発展しかけたが何とかそれを回避できたことで、スレイン総理は緊急事態宣言を解除して解散総選挙を行うことを考え始めていた。
後は国交を結び平和的な外交努力で友好を深めていけば良いと議員の誰しもが考えていた。
「神聖ヴァルガリア帝國が親善訪問したいってか?」
スレイン総理は内閣総理大臣補佐官の言葉に思わず間の抜けた声で聞き返していた。
中央世界の最強国家だと聞いていただけに向こうから接触してくるとは思ってもみなかったからだ。
ちなみに表情も少しばかり呆けている。
「はい。そのような要請がタイカ民主国経由で来ております」
補佐官はそんなことなど気にする様子もなく聞かれたことに答えていく。
「その国は世界の調停者と言われてるんだったか……? この世界の超大国だな」
「実力のほどは不明ですが、列強各国に強い影響力を持っている大国であるのは間違いないようです」
「まぁ旧世界のアマリア帝國みたいな横暴な国じゃねぇんだろ? なら好きなだけ我が国のことを知ってもらえばいい。ある程度の国力を……軍事力を見せておかないと舐められるからな……」
「転移したお陰でその認識に至った議員も増えたようですし、良かったのか悪かったのか……」
解散後に新たな後継者が交渉を行うのが妥当だと考えていたスレインだったが、接触があったとなればすぐに調整を開始するべきだと判断していた。
プライドの高い超大国を相手にするには、転移から現在までの経緯をよく理解しておいた方がよいと考えたからだ。
それにこの世界『ゼノ』には国際法が存在しないらしい。
お陰でいつまでたっても戦乱が続いている訳だ。
早期に国際組織を整備して法を作る必要があるだろう。
「あっちは帝政か? ウチと似たような感じだったっけ?」
「立憲君主制に近いかと思われます。帝國総代と言うのが総理のポジションに当たるかと」
「ま、それで調整に入ってもらうか。閣僚には早く共有しないとな。ちなみにどうやって来るんだろうなぁ」
「飛行機があるみたいですよ。どんな物かは不明ですが」
スレインも技術を見ればその国の力が見えてくると思っている。
確か魔法文明だったはずだが。
彼は平和的に進むかどうか心配して外務大臣のユリアスに会うべく席を立った。
―――
神聖ヴァルガリア帝國の親善訪問の日取りが決まった。
予想以上に興味を持たれていたのか、トントン拍子で話し合いは進みユリウス歴2569年7月25日に使節団が訪れることとなる。
「それにしても我が国が態々東方世界の小国に足を運ばねばならんとはな……」
飛行機の中で海軍次官のターリンがやれやれと言った様子で愚痴をこぼす。
それを宥めるのは外務次官のガルレアだ。
彼は外務大臣からユースティア脅威論を聞かされており、決して舐めてかからないようにしようと考えていたのである。
「ターリン次官、国土は大きくないそうですがタイカ大帝國を破ったのですから力は持っていると見るべきでしょう」
「タイカは列強とは言っても炎龍……古代龍の使役で強くなったようなものだろう」
情報管理部長のハウエルとしては何処までが真実なのか理解していなかったためユースティアを侮っていた。上司である情報管理長官インフォータルに厳重に言い聞かされていたにもかかわらず、だ。
「だからその炎龍を落としたのですから警戒するのが自然では? それにあそこは魔導艦を持っていた……他国は保有していないではないですか!」
「魔導砲など我が国の艦隊には通用せんよ。装甲を抜けるかも怪しい。それに戦闘機があれば落とせるだろう」
ターリンはあくまでも東方世界全体を舐めきっていた。
神聖ヴァルガリア帝國はタイカ大帝國と何度か衝突している。
しかし陸での戦いは初めこそ互角だったが、戦況は一気に傾き勝利を収めていた。大陸有数の戦力と見られていた竜騎兵をも駆逐したのである。
これは神聖ヴァルガリア帝國の持つ魔導銃とタイカ大帝國の持つ魔力銃の性能差がモロに出た結果だと言われている。
ちなみにタイカ大帝國の保有する魔導艦がもしユースティアのような側面砲を搭載していれば、結果は全く違ったであろう
空から一方的に地上攻撃が可能になるのだから。
彼らはこの点に全く気付いていなかった。
更に言えば全面戦争になっていれば炎龍が出てきてジ・エンドであったはずである。とは言え、神聖ヴァルガリア帝國には究極の古代兵器が存在するため、それを投入すればどうか?と言ったところではあるのだが。
「大体、魔法文明で魔導艦を持っている。まぁそこは評価しよう。少なくともタイカの魔導艦よりかは強かったのだろうが……聞けば我らを出迎えるらしいじゃないか。何か? 魔導艦で先導する気か?」
「まさか……速度が違い過ぎますよ。この機は時速500kmは出ている。魔導艦など時速300km程度でしょう?」
「と言うか海上を飛んでこれるのかな? マギロンはないんだぞ。魔導艦じゃ飛べないだろうに……」
そう言ってターリンとハウエルは笑い合った。
そんな彼らを見てガルレアは本当に親善、つまり友好を深めることができるのか不安になる。彼は上からしっかり注意を受けていたから政府首脳が危機感を抱いていることは知っていたのだが、その他のメンバーは知らない様子だ。
「まぁいいじゃないですか。何でも。私は魔導艦や魔導兵器が見られればそれで満足ですよ」
能天気にそう言い放ったのは魔導技術部長のライネルだ。
こいつは気楽で良さそうだなとガルレアは少しばかり苛立つが流石に態度に出すことはない。
「しかし遠いな。1万5千kmだったか?」
神聖ヴァルガリア帝國がタイカ大帝國に許可を得て造った滑走路を経由してユースティアまで行くのだがユースティアにまともな滑走路があるのかと馬鹿にする始末。
関係者も巻き込んでの大爆笑が機内に響き渡った。
間もなくユースティアに到着するようだ。
後、500kmほどでザルツ本島の地方都市、クォーカに到着する。
はてさて両国のファーストコンタクトはどのような形になるのか?
ガルレアの心配をよそにその他の連中は未だ大笑いをしていた。
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