第9話 ボーア危機 ②
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隊員たちの魔導小銃やY63式装甲車の12.7mm重機関銃と7.62mm機関銃が一斉に火を吹いた。
凶弾は誰に対しても平等にその命を奪っていく。
侵入者たちは何が起こったかも分からずにあの世へと旅立つのみ。
それでも死体を乗り越えて突撃してくるタイカ軍閥兵たちだが、その火力に太刀打ちできるはずもなく次々と倒れ伏し制圧されていった。
「撃ち方止めッ! 必ず引きつけてから撃てッ! 無駄玉使うな!」
何度か掃射しては引き付け、掃射しては引き付けを繰り返す。
空はもう白み始めていた。
「カザマ隊長! 敵が多過ぎます。恐らく1万近くいるのではないかと思われます!」
「はぁ!? 1万? マジで言ってんのか?」
「防壁上から見た感じ、かなりの数かと……」
その報告に反応したのはカザマだけではなかった。
声を上げたのはナルピムとその他の族長である。
「それは真か? 今までそんな大軍など来たことはなかったぞ!?」
「今まではどれほどでした?」
「千くらいだろうな」
全然規模が違うじゃねーかとカザマは独り言ちる。
彼は知る由もないが、タイカ大帝國が解体されて煽りを喰らった地方軍閥が本腰を入れてマグナ半島へ侵攻したと言うのが理由だ。
地方の考えなんて中央政府のことなんぞ知ったこっちゃない、である。
「(タイカ民主国は何やってんだよ。国内統制できてないし条約違反だろ。コレ)」
「大変だ! 族長、敵軍の一部が東門の方へ向かってる!」
「何ッ!」
敵大将はそれほど統率に優れた奴ではないようだ。
聞けばボーアの人口は高々5千ほどらしい。
最初から複数の方角から同時攻撃を仕掛けられていたら今頃は陥落していたかも知れない。聞いていた者たちはそう考えて背中に冷たい汗が滴るのを感じて肝を冷やす。
「曹長と4人は高機動車で東門へ向かってください。俺は援軍を要請します。残りはここを維持しろ!」
「了解!!」
すぐに命令に従って各隊員が動き出した。
同時に市民兵たちも兵を分けるようで族長たちが大声で指示を出している。
「第5調査隊からマグナ第1陸防基地へ。どうぞ」
『こちらマグナ第1基地。何があった?』
「現在、ボーア市にいるがタイカ民主国に攻められている。その数およそ1万。原住民保護のため援軍を求む」
『敵軍の武装はどうか?』
「剣、魔力銃、恐らく小型の魔導砲だと思われる」
『了解した。座標を送り指示を待て。終わり』
敵は相変わらず無謀な突撃を繰り返しているが、弾薬には限りがある。
このままでは突破され乱戦になるのは確定事項だ。
カザマが湧いてくる焦燥を抑え込みながら戦場の状況把握に努める。
彼は自分は隊長なのだと言い聞かせると共に平時の自分のように気楽に振る舞おうとする。
『マグナ第1陸防基地から第5調査隊へ。どうぞ』
「こちら第5調査隊」
『援軍に攻撃ヘリを派遣する。到着まで20分は掛かるが保つか?』
「保たせるさ。では頼みます」
『了解した。健闘を祈る。終わり』
魔導小銃の弾丸が尽きても最悪、魔力短銃があるので何とかなるとは考えているが個人の魔力を使用するため威力に個人差が出る上に疲労が激しい。
現在ではかなり改良されて、大気中のマギロンを取り込んで魔導短銃の魔力弾を形成できるようになったらしいがまだ実戦配備はされていないのが実情だ。
「状況はどうだ?」
「魔導小銃の威力にビビってるみたいで攻撃が鈍っています。ただ弾切れが近いかと……」
「よし! 節約して使えよ。弾切れになったら魔導短銃で対応する。援軍が来るまで防壁内に入れなければ勝ちだ」
腐っても国防隊員。
平和の中で惰眠を貪りながらも訓練をしてきた。
今までは海と空の戦いばかりだったが、大陸に領土を得た以上、陸防隊にお鉢が回ってくるのは当然のこと。
カザマたちは仕事をするだけだ。
国益のために人を殺すと言う仕事を。
それは同時に国民を護ることにも繋がるのである。
北門と東門で壮絶な戦いが始まった。
北は防壁に穴が開いたものの陸防隊からの集中攻撃を受けて兵が怯んだお陰で、一旦内部への侵入はなくなっていた。
タイカ軍閥はまずは一気に大軍が雪崩れ込めるように、城門と残る防壁の破壊を優先したようで今は魔導砲の攻撃音のみが辺りに木霊している。
防壁が崩壊するのも時間の問題であった。
東はまだ防壁や城門が破壊されていないためすぐには突破されないだろうが、何分人数が少ない。
その少人数を防壁上に張り付かせ越えようとしてくる敵兵を叩く。
拮抗した展開がジリジリと続き兵士たちの精神力を奪っていく。
北は城門が突破される可能性を考慮して唯一、防柵を備えているため足止めしながら戦える。飛び道具を使うカザマたちだけでなく、槍などの原始的な武器で戦うボーア市民たちも優位に働くはずだ。
東から喊声が聞こえてくるので大激戦になっているのは間違いないだろう。
事実、その圧倒的な数の暴力によって防壁を乗り越えようとしており、そうはさせじと戦うボーア市民たちも限界以上の力を出して奮闘していた。
ゼロム曹長も防壁への直接攻撃はないと判断し、すぐに防壁上へと駆け上がると一斉掃射を行っている。
魔導小銃の威力は北門での戦いで身に染みて理解させられたタイカ軍閥の兵士たちは及び腰になっていた。
そしてとうとうその刻がやってくる――
北の防壁が大きく崩れ去り瓦礫の山と化したのだ。
「来るぞ! 引き付けて撃てぇ!!」
突撃しかしてこないので助かった部分もあるが、カザマたちはタイカ軍閥兵を圧倒していた。
その展開を打開すべく敵がようやく動く。
前面に人の手で持ち歩ける小型の魔導砲を押し出してきたのだ。
「少しは頭を使ったか! 魔導砲だッ! 撃たせる前に殺れッ!」
魔導砲に淡い緑色の光が集まり強くなっていく。
だが旧式なのか、発達が遅かっただけなのか、発射するまでに時間が掛かっている。
魔導小銃の速射性と連射性、射程距離を考えれば余裕があった。
そのため砲撃を受ける前に圧倒的な火力で制圧することとなる。
「クソッ……弾切れか」
「こっちもですッ!」
「もう撃てぬのか……?」
ナルピムが察したようで沈痛な面持ちで尋ねてくる。
更にはノルンも人ごみを掻き分けてカザマの方へとやってきて無感情な声で言った。
「私も魔法で戦う。いざゆかん」
「いえ、まだ魔導短銃があります。敵は多い……自重してください。ノルンもだ」
後は魔導短銃だけだ。
魔力さえあればほぼ無限に撃ち続けられるが、拡散・減衰して威力は落ちる。
武器を切り替えて撃ちまくろうと覚悟を決めた、その時――バラバラと高速で動く回転翼の音が聞こえた。
待望の援軍だ。
ボーア市民たちも一体何事だと空を見上げており、ポカンと口を開いて呆けている者が多い。
勝ったなガハハ。
それを見てカザマたちは勝利を確信した。
地上に地獄の雨が降る。
ロケット弾が大地を抉り地面ごと兵士を吹き飛ばし、機関砲の斉射が雨霰となって襲い掛かる。
北と東の城門付近の地上は死屍累々。
土が空へと舞いあがり、大地にクレーターを生み出して、地上は血で染め上げられる。
圧倒的暴力。
そこに存在するのは血の暴風であった。
―――
結局、多くのタイカ軍閥兵たちが戦死し何とか生き残った者も士官クラスは全員捕らえられた。旧世界のユースティアならいざ知らず、国家転移で混乱を体験したことで政府内で危機感が高まった。
それにより政府はこれを地方の暴走だとは考えなかった。
この一件によりタイカ民主国はそれなりの代償を払うこととなる。
「よく粘ってくれた。カザマ一等陸尉」
「いえ、ノーチス一等陸佐こそ、迅速な援軍ありがとうございます。もう少しでこの街は落ちてましたよ……お陰で生き延びられました」
「住民に怪我人が少ないのが救いだな」
「まぁ我々が先頭に立ってましたからね……」
防壁上での攻防以外は魔導小銃と機関銃で凌いだようなものである。
第5調査隊の面々と援軍に駆け付けた攻撃ヘリの空防隊員たちはボーア市民から強く感謝され熱烈な歓迎を受けることになった。
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