第8話 ボーア危機 ①
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本日は12時の1回更新です。
商談自体は割とあっさり終了したのだが、カザマたちは腐っても調査隊である。
マグナ半島の情勢を聞くために様々な人間や亜人たちに声を掛けて回った。
分かったのは政府が考えている以上に人口が多いのでは?と言うこと。
族長が把握しているだけでも5つの大都市が存在するらしい。
亜人だけでなくマグナ半島に昔から土着している人間の原住民がいるようで頻繁に交流していると言う。
北――マグナ半島とタイカ民主国の国境付近に行くほど集落は少なくなるのだが、それはタイカ民主国から地方軍閥が略奪を行うために攻めてくるからと言う話だ。訛りはあるが完全な別言語を読み書き、話しているものの識字率は低いようである。最初にノルンたちに出会っていなければハードな調査になっていただろうことは想像に難くない。
「隊長ー今日はここで野営ですか?」
第5調査隊の1人がカザマに尋ねた。
既に空は暗くなりつつあり、態々危険な外にいるよりはマシだろう。
それとも後数日は聞き込みに費やすか?
そう考えながらカザマは全員に指示を出した。
「ああ、今から外に出てもな。真っ暗闇の中になるだろうし危険だろ。全員、今日はここで野営するから準備に掛かれー」
野営とは言っても広場でテント生活をする訳でもないので高機動車2台とY63式装甲車1台の分乗して我慢だ。取り敢えず戦闘糧食を食べていると待ち行く人々からジロジロと見られている。
そうされても仕方ないことをしているので文句などない。
態々宿を取る訳にもいかないし、そもそも路銀がないのだ。
想像した通り、ボーアの街での夜は速いようで家から灯りが消えていくのが分かる。夜明けと共に起き、日没後は仕事を内職をしつつ早めに寝ると言った中世的な暮らしだ。そんな訳でカザマたちもさっさと寝ることに決めると見張りを残して休むこととなった。
ようやく眠りにつき、刻は払暁――
そんな彼らを叩き起こしたのは、街中に響こうかと言う大音声であった。
「敵襲だッ! 人数が多い! 恐らくタイカだッ!!」
その声に第5調査隊の面々が全員跳ね起きてカザマの指示の下、武器の確認に入る。状況を把握するためにエンジンを掛けてライトを付けると早くも家から飛び出した人々の影が踊っていた。手には剣や槍などの得物を持っているが、敵がタイカ軍閥となれば武装もまともなものだろう。
「戦闘用意! 俺たちも出るぞッ! ネルーナは族長のところに行って状況の確認をしてきてくれ!」
「了解です!」
「たいちょ! 戦ってもいいんですか!?」
「一応、我が国なんだぞ! 治安維持活動に当たるのは当然だ! サイトーは陸防基地へ連絡、座標を送っておけ!」
「地方軍なのでしょうが、タイカからとなると抗議が必要でしょうな」
ゼロム曹長もカザマの意見に同意する。
住民たちがまだ認めていなくてもマグナ半島の領有権はユースティアにあるからには防衛せねばいけないし、降伏したはずのタイカ民主国軍であれば抗議するのが当然である。
ボーア市民たちは北の方へ向かっている。
戦闘は北門で行われているのだろう。
そのうちに喊声が聞こえてきた。
「隊長……大丈夫でしょうか……?」
「何度もタイカ軍閥の攻撃を跳ね除けてきたんだろ? なら大丈夫だと思う」
戦闘準備を終えて待機しているとノルンがカザマに近づいてきた。
表情に一切変わりはなく至って冷静だ。
「私も魔法使いの端くれ。戦いに参加する」
「ノルンはお留守番だ。怪我でもされたら困るからな」
「カザマたちも戦うのだし、私もこの半島に住む者として戦うのは当然」
「いやいや。ノルンは国民なんだよ。まだ予定だけど。俺たちは国民を護るのがお仕事なの!」
カザマがノルンを説得しているとネルーナが戻ってきた。
「戦闘は北門で起こっているそうです。族長方も出ると。支援は不要と言われましたが拒否しました」
「それでいい。全員で向かうぞ。乗車しろ」
昨日に族長たちにはマグナ半島の状況やタイカ民主国との戦争、原住民はユースティア国民になれる権利があることは伝えてある。
ネルーナによると、最終的には渋々ながら承諾したそうだ。
今まで襲撃者を撃退してきたと言う実績から自信があるのだろう。
防衛に走る住民たちを回避しながら高機動車で北門へ向かう。
戦いは既に始まっており防壁上から侵入しようとするタイカ軍閥兵とそれを阻止しようとするボーア市民たちが剣を交えていた。
敵は魔導砲も持っているようで時折、防壁付近で淡い緑色の閃光が煌めいている。城門や防壁にも砲撃しているらしく鉄門に打ち付ける音と防壁の崩れる音が耳に入ってくる。
「防壁上で機関銃ぶっ放してこい。クロスファイアで撃ちまくれ」
「隊長、城門の回りに防柵がありますね。いつも城門は抜かれているのかも知れませんね」
威力のほどは不明だが、敵が魔導砲を持っているなら城門やレンガ造りの防壁など容易く破壊されてしまう。毎回の戦闘ではボーア市民たちは乱戦に持ち込んで勝利を得て来たのだと推測される。
「残りの者は城門か防壁が破壊されたら侵入してくる敵を撃て! 乱戦になる前にな」
防壁に上り配置についた隊員たちが機関銃で一斉掃射を行い始めたようで喊声の中でダダダと言う轟音が鳴り響き、その音に驚き戸惑っている者もいる。
カザマは城門内で指示を出しながら待ち構える狼人族の族長を見つけたので、周囲の兵を少しばかりどけてもらおうと話し掛けた。
「ナルピム族長! 俺たちも参戦するので一部をどけてもらえませんか?」
「戦う? 武器は持っているのか?」
「ええ。これとあのY63式装甲車――鉄の車で戦います。乱戦になる前までは俺たちに任せてください」
これとは魔導小銃である。後はY63式装甲車の12.7mm重機関銃と7.62mm機関銃で対応する。
「それはタイカの魔導砲のような物か? しかし何故戦う? お前たちはここに住む者ではないだろう?」
「そんなもんです。この半島は我が国の領土になったと言いましたよね? 我々が戦うのは当然のことですから」
「我らはまだお前たちの国の民になると決めた訳ではないぞ? 抵抗するとは思わぬのか?」
「我が国と戦ったらマズいことになると思って頂けると思いますよ。俺たちとは仲良くした方がいいってね」
カザマの言葉を聞いてナルピムは大声で笑い出す。
大言壮語に聞こえたのだろうが、確かに実際戦っているところを見ていないのだから仕方がない。
「防壁の上でさっきからダダダッて連射音がしてますよね? アレは我々の攻撃です」
「あの音はお前たちの攻撃の音だったのか……何をやっているのだ? 魔導砲を撃っているのか?」
「魔導砲とは違いますが、鉄の弾丸を魔導の力で撃ち出して敵を薙ぎ払っています。強力ですよ」
ナルピムは防壁の上に目を向けるが確かに敵の勢いが弱まっていると認識した。
そして装甲車とカザマたちのスペースを空けるように指示を出した。
攻撃の圧力は減ったようだが、相変わらず城門と防壁への魔導砲射撃が行われているらしく防壁全体が揺れていた。
「おい! もう防壁が崩れるぞ! 退避しろぉ!!」
経験則からか限界がきたのを察したボーア市民たちは口々に呼びかけると防壁から撤退を始めた。それに伴い陸防隊員たちも踵を返して地面に降りようとするが、逃げる人々が邪魔で降りられない。仕方ないので弾丸が尽きるまで撃ち続けることにしたようで再び連射音が聞こえてくる。
そして城門の隣の防壁が崩れて穴が開いた。
我先にと侵入してくる敵軍。
「引きつけろ! 市民を巻き込むなよ?」
住民の犠牲者はできるだけ減らし、かつユースティアの力を示さなければならない。次々と殺到する敵兵たちに照準を定めていたカザマはついに命令を下した。
「よし! 撃ってぇ!!」
各隊員が一斉にトリガーを引き地獄が現れた。
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