第4話 難民キャンプ・立ち上げ!
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基地へと帰還した第5調査隊には早速仕事が待ち構えていた。
もちろん病気感染者たちの隔離と身寄りのない者たちへの支援である。
飛龍戦で家族を失った老人や女、子供たちの面倒を見なければならない。
カザマは基地から3kmの場所にある森林地帯周辺に難民キャンプを作ることに決め、対応に乗り出した。
多くの書類との戦いは彼を連日徹夜に追い込む。
とにかく様々な許可を取る作業に手間取りカザマはそれだけで疲労困憊だ。
森林地帯を切り拓き土地を広げて当面ははテントで暮らしてもらうことになるが、いつまでもそうしておく訳にもいかない。
プレハブ小屋の設置も並行して進めていく。
食事は戦闘糧食を出して賄うがいつまでも偏った食事を与える訳にもいかないし、いずれは基地内で出ているような健康面に配慮した食事を出す必要があるだろう。更にカザマは難民キャンプを運営する資金にも頭を悩ませることになる。
その姿を見ていたノルンたちは自分たちも何かできないかと模索を始める。
大きめのテントの中でバルドルとノルン、そして数人の村人が集まって話し合いを行っていた。
「ユースティアの国防隊にはかなりお世話になってしまった。このまま迷惑をかけ続けるのは避けたい」
「そうじゃのう。しかし金がない」
「いつ追い出されるかも分からないわ……」
「そもそも病気が治るのかしら……?」
ノルンは何かを始めようと考えていたが、師匠であるバルドルの言う通り元手となる資金がなければ何もできない。
その他の者は不安感のみが先行し何かを考える余裕もないように見える。
しかしノルンは焦らない。
彼女は常に考え続ける。
「カザマたちはどうやらこの地を調査する任務を負っているらしい。それに協力して資金を得るべき」
「つまりわしらを雇ってもらおうと言う訳じゃな?」
「そう。ここは彼らの基地の近く。村を作って得た資金を元手に商売を始める」
村人たちは言語を話せないし、いちいち翻訳魔法を掛けてもらう必要がある。
そう上手くいくのかと懐疑的な視線をノルンに向けているが彼女もそれは重々承知の上であった。
「まずは私たちが言語を教えつつ、この地の調査に協力する。見たところ、ユースティアは労働にはしっかりと対価を持って報いる誠実な国だと考えられる。師匠には皆に翻訳魔法をかけてもらい言語の習得の教師をしてもらう。それと翻訳辞書も作ってもらう」
「ちと老人を酷使し過ぎな気もするがのう……」
「大丈夫。師匠はまだまだイケる」
「ま、確かにまだイケるがの」
バルドルが厭らしい笑みを浮かべ妄想を始めたようだ。
それはもう神々しいほどのセクハラ顔をしている。
いつものことなのでノルンは華麗にスルーしつつ淡々と説明した。
その言葉には自信に裏打ちされた力強さがあった。
「この地には多くの種族が存在する。彼らを集めて大きくなれば、また人が集まり村は街へと変わる。それの繰り返し」
―――
ノルンは話し合った内容と都市建設の構想を持ってこの地の国防隊基地トップであるヒロタカ・コノエ陸将に面会して、それを伝えた。
数日後、ノルンの案は了承されてノルンたちは現地協力者と言う形で採用される。給料は何とか頼み込んで前借りさせてもらった。
これでユースティアの通貨テアを得る。
ノルンは第5調査隊に案内役として同行することとなり高機動車に乗って北進を開始した。
構想としてはマグナ半島の原住民が組織している幾つかの軍閥や村々を訪ねて、新しくユースティアに編入されたことの意義を説きこれからの展望を話す。
そしてこれからの時代はユースティアの通貨テアが価値を持つこと、その重要性を教えてテアをマグナ半島で流通しているタイカ銀と交換する。
流通レートを定めタイカ銀を資金源にして人を集め、原産品、特産品などマグナ半島でしか手に入らない物を売る。レートと言ってもいずれは完全にテアに変わるのでそこは暫定的なものとする。
ノルンは全てをタイカ銀に変えることはせず、残したテアでユースティア本国から珍しい品物を輸入する段取りを始めた。
珍しい品物と言ってもどれもがマグナ半島では入手できない物ばかりなので売れることは間違いないと彼女は確信している。要は、マグナ半島産の品物を国防隊員に売り、ユースティア本国の品物をマグナ半島の原住民に売ると言う感じだ。
後のことはバルドルに任せてノルンは出発した。
第5調査隊の高機動車の中で案内しながら彼女は少しでも情報を得るべくメンバーたちと交流を図っていた。
「これは地図? かなり精巧。どうやって作った?」
ユースティアがマグナ半島に進出してまだ間もない。
地図を作製する時間などないと考えていた。
「これは空撮と測量隊が調べて作ったんだよ。まだまだ精度を高めたいね」
「十分な精度。信じられない」
「(好奇心の塊だな。この娘は……)」
カザマが感心していることなど全く気付くことなくノルンは話し続ける。
「この辺りには大きな魔力反応がある」
「マギアニウムですかね?」
「あったらいいッスねぇ。この世界初の発見ですし魔導艦を使えますし助かります」
「まぁタイカにも魔導艦があったらしいからマギアニウムがあってもおかしくはないよな」
魔導炉に使用され魔導艦の出力機関を支える貴重な資源な戦略物質なので空の優位性を保つためには必要不可欠である。
やがて特に大きな魔力反応がある地点に到着すると位置情報を取得し記録する。
既にGPS衛星は12機打ち上げられている。
まだ世界全土をカバーしきれていないため、まだまだ打ち上げる必要があり計画も進んでいた。
「うわ、魔力反応でっか!」
魔導士の血を色濃く受け継いでいるオカダ2等陸曹が叫ぶ。
魔力感知器を使うまでもなく彼女には感じ取れるのだ。
カザマにも一応、魔力はあるが非常に少ない部類であり当然魔法など使えない。
「確かに反応でかいな……これは絶対あるぞ?」
記録は取ったものの念のため報告だけは上げておく。
さて次だと頭を切り替えたカザマがノルンに尋ねた。
欲しいのは油田だ。
話ではザルツ本島の南に出現した島嶼で発見された1か所のみらしい。
「なぁノルン、燃える水とか見たことない?」
「燃える水? 見たことはないが聞いたことならある」
「マジ!? どこで?」
「ここからはかなり遠い。半島の最北西端辺りにあるらしい」
なら後回しにするか他の部隊が見つけるかだろう。
カザマたちは既存の資源だけでなく未知の新資源の発見も期待されている。
異世界なのだからあってもおかしくはないだろうと言うのが上の見解だ。
「それより、この辺りに大きめの都市がある。そこにいる商人と商談したい」
ノルンの目的の1つはこれから流通する通貨テアの価値を示し信頼を得ることにある。その都市は亜人が多く暮らしており武装組織が存在している。
これはタイカ大帝國の地方軍閥が度々半島に侵入してくるためで、あくまで自衛組織なので規模としてはあまり大きくはない。
「何て名前の都市なの?」
「ボーアと言う。翻訳魔法も通じるので安心して欲しい。それにカザマたちが侵略者ではないと説明する」
「おお……それは是非頼みたいわ。いきなり襲撃されるのは勘弁だな」
ノルンの案に乗る形でカザマは次の目的地をボーアに定めた。
旧世界では見られなかった亜人と呼ばれる未知の存在。
間もなく訪れるであろう邂逅に第5調査隊の面々はそれぞれに思いを抱くのであった。
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