第2話 天才魔法少女
いつもお読み頂きありがとうございます。
本日は14時の1回更新です。
ここはオドーア村。
師匠によればオースティン大陸の東から伸びる半島にある村の1つだそうだ。
それに半島には国家が存在しないとも聞いている。
半島から出ると大きな国がいくつも乱立しているらしいが実際には行ったことがないので詳細は不明らしい。
村で原因不明の病が流行し多くの人が臥せっている状況で、魔物の群れに襲撃されて何とか防いでいたところに初めて見る何かが現れた。
あれは亜人?
魔物?
いや、変な服を身に纏っているが人間族のように思えた。
少女の名前はノルン。
オドーア村に師匠と共に厄介になっている魔法使いであった。
目の前の人間たちは健康な者が総出で当たっても負けそうになっていた状況をあっさりと覆した。杖のような道具で爆裂魔法にも似た何かの力を行使してケンタウロスやオークなどの大軍を壊滅させ、死を免れた魔物は我先にと逃亡を図った。
彼らは荷車のような物で村の門へ近づくと何やら不思議な踊りを踊っていたが、しばらくするとしょんぼりした様子になり踊るのを止めた。
ノルンには彼らが何者かまでは分からなかったが、何をしたか、何をしたいかは理解することができたので、危険はないと判断し話してみることに決めて村から出ようとする。
しかしそれは村人たちに止められる。
何故かと尋ねると訳の分からない連中に接触するのは危険だと思ったらしい。
そう言われてもこのままでは埒が明かないのは自明。
ノルンは無理を通して門前の人間に声を掛けてみた。
翻訳魔法を行使して。
「私の名前はノルン。ノルン・ノルニル。ここオドーア村に住んでいる魔法使い」
目の前の人間たちが慌て始めた。
どうやら驚き戸惑っているらしいが、何が起こったのか理解できずただただ茫然と立ちすくんでいる者もいる。
「ななな……何で言葉が通じるんだ!?」
「あ、あ、あたしに聞かれても知れませんよ!」
「え? 世界共通言語を話しているんじゃないんですか?」
世界共通言語とは何だろうか?
言葉が通じている理由が分からないとなると魔法を使えない者たちなのか。
そうノルンは考えたが、いくらマギロンが存在するからと言えども魔力を持たない者には翻訳魔法は通じない。それを思いだす。
「私は翻訳魔法を使って貴方たちに話し掛けている。マギロンと魔力があれば会話は可能」
「ええ!? でもマギロンがあっても中性子が違う同位体だと魔法が効かないって話のはず……」
「チュウセイシ? ドウイタイ? それはどう言った物?」
「あうう……要は同じマギロンのようでも僅かな違いがあるの。完全に同一のマギロンがなくちゃ翻訳魔法は効かないのよ」
マギロンの存在を知っていると言うことは目の前の人間たちも魔法の知識があるのだ。そして魔力も。
ノルンの目には彼らが理知的で国から来た話が通じそうな人間に映った。
「私は魔法の理に干渉してマギロンの核そのものに働きかけている。摂理が分かれば多少構造が異なっても魔法は通用する」
無表情で平然と言ってのけるノルンにまたまた多くの者が驚きを見せ、先程、疑問を唱えた女性に至っては「有り得ない……」と呟きが漏れている。
ノルンはまるで何か問題でも?と言う感じで簡単に言ってみせた。
多くの者が動けない中、1人の柔和な顔をした男性が前に進み出る。
「理解しました。俺の名前はカザマ。ユースティア国防隊のリクト・カザマ一等陸尉と言います。この半島について調査しているところなんですが協力して頂けませんか?」
「リクトカザマイットウリクイ……さん? いい。こちらも魔物を退けてくれて感謝している。よろしくと言いたいけれど今、村はで病気が流行っている。うつると危険」
「それはどんな病気? どれくらい患者さんがいますか?」
「イチコロ病と言う。罹患すると咳が出始める。2週間で発熱。1か月でぽっくり逝く」
「うつるんですね? それは接触感染? 飛沫感染? 空気感染? 媒介物感染?」
「……? よく分からないけれど咳が出始めるのが兆候。ただ回復魔法である程度は症状を抑えられる」
ノルンはカザマの言った意味が何となくしか分からなかったが病気の目安を教えておいた。
何故色々聞いてくるのかも。
もしかしてと言う思いはあったが。
「曹長、ウチって転移してすぐに防疫施設造って色々研究してましたよね?」
「ん? ああ、そう聞いたことはありますな」
その質問の意図を察したのか、少し離れた場所にいた男性がカザマに詰め寄ってきた。
「まさか隊長……保護する気じゃないですよね……?」
「え? その通りだが?」
「その通りだが?じゃなーい! 下手すりゃ拉致とか言われますよ!」
「基地内にも病院と研究棟建ててるし何とかなるやろ。それに希望すればマグナ半島の住民にはユースティア国籍が与えられるって話だ。俺たちは国民に愛されるべき国防隊だぞ」
「それはまだまだ先の話でしょーが!」
マグナ半島の住民が望めばユースティア国籍を与えるのは既に政府が決定していることだ。急にやってきて急にユースティア国民に編入されると反感を買うと議会で激論が交わされたようだが、あくまで望めばとと言う結論に至った。更に言えば、マグナ半島の市、町、村に当たる集落に5年間根を降ろすとの条件もあるのだが、カザマは触れなかった。
「風土病かも知れんしクレア半島にもある病気かも知れん。今、クレア半島にも拠点造ってんだろ? それに俺ら調査隊も危険ってことだし何人かサンプルに連れて帰っても問題はないんじゃないか?」
それを聞いた男性隊員は二の句が継げなかった。
カザマと言う男はちゃらんぽらんに見えて言い出したら結構頑固なのである。
「病気を治療したいから俺たちの拠点に連れて行ってもいいですか? ここから40kmぐらいなんだけど」
「行ったら治る? 連れて行くのは何人?」
「治るかは分からないですね。全員連れて行く訳にもいかないから2、3人ってところかな」
「村長に聞いてくる」
ノルンはそう言って村の中へ戻って行った。
時間がかかるかもと思われたが村長の決断は意外と速いものであった。
今度は村長と師匠のバルドルと一緒だ。
「聞いてきた。連れて行って欲しい」
「了解。じゃあ、男、女、子供が1人ずつにしようか。サイトー、マスク用意して!」
「それと私も連れて行ってほしい。後、師匠も行きたいと言っている」
「良いよ良いよー歓迎しますよー」
カザマとしてもノルンと言う少女の頭の良さには気付いている。
言葉の壁をぶち壊す、もしくはハードルを下げるくらいはできる可能性が高いとの判断だ。
「あんた方が魔物を退治してくれた人たちか。助かった。感謝する」
「いえ、大変でしたね。魔物はよく襲ってくるんですか?」
「頻繁にではないが、度々起こることじゃ。ここでの日常は死と隣り合わせなんじゃよ。気にせんでくれ」
村長に謝意を受けるが困っている人を助けるくらいユースティアの国防隊員として当然のことであり、見捨てるのは名が廃る。
また魔物の襲撃があるかも知れないので高機動車1台に患者3名と魔法使い師弟、そしてカザマ含む第5調査隊の数名が乗り込み東へと転進した。
残りは念のため置いていくことになった。
臨時基地には無線で通達済みなので問題はない。
基地から離れた場所に患者を隔離し経過観察しつつ並行して病原体を採取と調査を行う。
「じゃあ、さっさと行ってこようかね。曹長しばらく指揮の方頼んます!」
マグナ半島での第1村人との接触は天才魔法少女のお陰で平和的に行われることとなった。
ありがとうございました。
また読みにいらしてください。
明日も14時の1回更新です。




