第1話 化外の地・マグナ半島
第2章開始です。
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――化外の地・マグナ半島
「今日も空が青いなぁ。遠くまで澄み渡ってる感じがするよ」
ここマグナ半島にはかつて名前はなかった。
タイカ民主国(旧タイカ大帝國)が領有していたものの化外の地として長年放置されてきた、どうでも良い半島だったのだ。しかし敗戦によって支払う金がないならいらない領地などくれてやれと言うことになりユースティアの領土に組み込まれることとなった。
陸防隊のリクト・カザマ1等陸尉は半島調査の名目で第5調査隊を率いてひたすら西進していた。
マグナ半島はクレア半島と同じくタイカ民主国の東部から南東に伸びており、領していたタイカ民主国自体どんな場所か把握していないと言うユースティアから見ると訳の分からない地域である。亜人が多くを占めると言われており推定になるが人口は5万人ほどしかいないとされているらしい。どんな資源が眠っているかすら不明なので、まずは調査をと言うことになった訳だ。
「しっかし何も見つかりませんねー」
「そりゃそう簡単に見つからんやろがい」
第5調査隊――第5調には亜人好きが何人か所属していたため、今か今かと彼らとの出会いを熱望しておりかなり落ち着きがない。民族や文化などの調査も含まれているので間違いではないのだが、女性隊員の目は厳しい。
「たーいちょ! 速く亜人ってのを見てみたいですね。ファンタジーに出てくるような存在がいるなんて夢のようですわー」
「あんまりそればっか言うなよな。サイトーとオカダが変な目で見てくるぞ?」
先程から隊長であるカザマに絡んでいるカーネル1等陸曹が嫌そうな顔をする。
ゼロム曹長も何言ってんだと言う顔でカーネルを叱り飛ばしていた。
「ちゃんと前見ろ。こんなところで立ち往生なんてできんぞ?」
高機動車を運転しているカーネルが慌てて前方を確認し集中し始める。
本当に何もない荒野が広がっている。
アルトアを独立させ国交を開設して通商条約を結んだお陰で食糧問題の大部分は解消されたと言っても良いが、未だ資源は油田とガス田が1カ所見つかっただけである。早急な発見と採掘が急務であり、異世界ならではの新資源の発見があれば儲けものと言った感じである。
「でもなぁ大陸なんかに領土持っちゃっていいのかねぇ……」
島国であるユースティアは上陸される前に海上艦隊や空の魔導艦隊で敵を撃滅することで身を護ることができた。
言ってみれば天然の緩衝地帯が海と言う存在である。
「どんどん防衛線が前に押し上げられていって気が付けば大陸の奥深くで泥沼戦ってのは勘弁願いたいねぇ」
現在、突貫作業でマグナ半島の最南西端に軍事基地を構築しているが、いずれはタイカ民主国との国境近くにも拠点に適した土地を見つけなければならないだろう。
タイカ民主国が朝貢国として認めていた国家群は特筆すべき軍事力を持っていないようだが、陸戦は空海戦と違って軍事格差がでにくい。
心情的にはドンパチやらかす事態は避けてほしいところである。
カザマは本国政府に向けて柏手を打つ。
「(スレイン総理が倒れて、今じゃ軍事行動に消極的って話だろ? 資源なくなりゃ詰むってこと理解してんのかね……?)」
「カザマ隊長、変な顔してますが悩み事でもあるんですか? まぁどうせ碌でもないことでしょうけど」
サイトー1等陸曹が全然心配していませんよと言った表情で心配事があるのかと尋ねてきた。俺でも心配事の1つや2つあるんだよと言い掛けてカザマは口にするのを止める。
「うっせうっせ! 俺は政治的な問題をだな――」
「あーはいはい。了解です。隊長はこの半島にご執心ですからねー」
確かに亜人を見てみたいと言う思いはあったし、何より自分の体で異世界を感じてみたかったと言うのが本音だ。
だが面倒な問題もある。
まずは言葉の壁。
世界共通言語は気合で頭に叩き込んだが、タイカ語は知らないし周辺国家のことなんてほとんど何も分かっていない。
亜人がどんな言葉を話し、どんな価値観を持ち、どんな神を崇拝しているのか。
「あ、隊長! あれ見てください! 集落ですかね?」
「んー? ああ、何か燃えてるみたいに見えるな」
双眼鏡を覗くとそこには集落があり、あちこちから煙が上がっている様子が確認できた。あの規模で考えると村と言ったところか。
「何かに襲われてる可能性がある。カーネル! 飛ばせよ!」
「サーイエッサー!」
高機動車2台とY63式装甲車1台が昼間の荒地を爆走する。
ガタゴトと揺れが半端ないが、治安維持も活動の名目にはなる。
急がねばなるまい。
「お前らちゃんと掴まってろよ! カーネルもコカすな!」
「当たり前ッス! 安定と信頼のユースティア製ッスからね!」
一気に距離を詰めるとそこにはそれなりの村があった。
ただ何やら状況はひっ迫しているらしく、村を囲う板塀付近で得体の知れない怪物と争いになっているようだ。
襲われているのは人間。亜人ではなかったがとにかく戦闘を止める必要がある。
だが武器の使用はなるべく控えるよう通達がきている。
また中途半端な政府方針が国防隊の命を危機に晒す。
「襲ってるヤツらがこっちに向かってます! 隊長!?」
「威嚇射撃しろッ!」
魔導小銃から銃弾がダダダッと言う爆音と共に連射され怪物たちの足下に着弾する。聞きなれない音に驚き戸惑っていた怪物たちであったがカザマたちの仕業だと判断したのか一斉に向かってくる。
その顔を狂気に染めて。
「あれってケンタウロスとかそう言うヤツじゃないッスか!?」
「(化物はやる気満々じゃねぇかッ! しゃーない!)武器使用を許可ッ! 目標はあの馬みたいヤツだ!」
それぞれが持つ銃火器が火を吹く。
銃弾をモロに喰らって倒れ伏す怪物たち。
一斉射撃を受けた彼らが崩れるのは一瞬だった。
散り散りになって逃げていくが追う必要はない。
無用な殺生は避けて然るべきだ。
村の外に誰もいなくなったのを確認して攻められていた村の門から少し離れたスペースに高機動車を止める。
もちろん警戒させないためだ。
「取り敢えず、ゆっくりと近づくぞ。携行品は魔導小銃のみ。たぶん武器だとは思われんだろ」
遠くから観察して見ると村人が手にしているのは昔ながらの剣や槍、農具のような物を持っている者さえいる。向こうも突然現れた国防隊員が近づいてくるのを見て警戒している様子が窺える。
「弓矢も持ってるな。一応警戒しろ」
それでも撃ってこないのは先程まで村を襲っていた魔物をカザマたちが撃退したのだろうと予測しているからだ。
どうやって倒したかまでは理解していないだろうが。
やがて村の門前までたどり着くと両手をひらひらと上げて敵対する意図はないとアピールしてみる。取り敢えずは世界共通言語を話してみたが全く反応はなくカザマはさてどうするか?と自問自答する。
「確か、魔法でも言葉が通じなかったって聞いたしな……」
第5調査隊の中にも魔導士が所属しているので駄目元で試してみるかと彼女を呼び出した。
ユリ・オカダ2等陸曹である。
早速、翻訳魔法を使ってもらうが一瞬で夢は破れた。
「隊長……やっぱり通じないみたいですね」
「うーん。どうしよ」
それでも困った時のジェスチャーよ。
大昔の人間たちも言葉が通じないところから努力して会話できるようになってきたのだ。
不可能なはずがない。
長い時間がかかるけど。
カザマは殺した魔物を指差しながら色々と身振り手振りで何とかコミュニケーションを取ろうと試みる。村人たちも目の前の人物が何かを伝えようとしていることくらいは理解できたようで何かを話し掛けてくる。
一向に問題が打開されない中、カザマが諦めかけた頃、村から1人の少女が歩み出てきた。どうやら彼女が外に出ようとするのを必死に止めている感じであるが、何か考えでもあるのかと訝しむ。
第5調査隊のメンバーに緊張が走った。
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明日は14時の1回更新です。




