第42話 激震 ①
もうじき第2章突入なのでお楽しみに!
いつもお読み頂きありがとうございます。
感想を頂いたり、評価やブクマ、リアクションも増えてきたりしているので非常に感謝しております。
これからもよろしくお願い致します!
(๑•̀ㅂ•́)و✧
本日は11時の1回更新です。
人の口に戸は立てられぬと言うが世界中にタイカ大帝國敗北の報が伝えられるのは速かった。
――中央世界・神聖ヴァルガリア帝國・帝都ガリア
神聖ヴァルガリア帝國、帝國府では首脳陣たちによる会議が行われていた。
議題はもちろん、タイカ大帝國敗戦の件である。
口火を切ったのは政府統括大臣テスラートであった。
日本で言えば官房長官に当たる。
「ではタイカ大帝國の件についての会議を行いますが、まずは事実確認から。情報管理長官、ご説明ください」
話を振られた情報管理長官のインフォータルが全員に資料を配りつつ説明を始める。
「はい。えー東方世界のオースティン大陸から伸びるクレア半島、つまり東方世界が戦場となっております。経緯ですがバーグ王国が極東の島国であるユースティアに侵攻。その報復としてユースティアがバーグ王国の国王を逮捕、謝罪と賠償を要求したところから始まります。それに対して――」
「ちょっと待った。国王を逮捕? 何故逮捕なのかね? 侵攻ではなく?」
陸軍大臣のスミスが口を挟む。
「逮捕です。事情はまだ不明ですがユースティアは軍事行動ではなく国王を捕らえる方法を選んだと言うことです。えー続きですが国王だけでなく後継ぎの王子まで逮捕されたようで親族の男が新王に即位致しました。先程も申し上げた通りユースティアは謝罪と賠償を請求し新王もそれを飲んだそうです。しかしタイカ大帝國が懲罰のためクレア半島に魔導艦隊と竜騎兵を送ったことで状況は変わりました。バーグ王国は取り交わした覚書を破棄、王都周辺にてユースティアとタイカ大帝國による武力衝突が発生した結果、ユースティアが一方的な勝利を収めております。それに激怒したタイカ大帝國は再度、大魔導艦隊と竜騎兵、それに加えて炎龍を投入した模様です。しかしこれもユースティアに撃破され本戦争はユースティアの完全勝利に終わりました。現在は講和条約締結に向けた話し合いが行われているようです」
長々と説明したインフォータルが着席し質問を待つ。
そんな中、困惑した様子で海軍大臣のタイラーが口を開いた。
「その話は本当なのかね……? 彼の国が飛行する魔導艦隊を持っているのは知っていたがユースティアはどうやって落としたのだ? 我々でも容易ならざる所業だぞ? それこそ古代兵器を投入しなければ……」
神聖ヴァルガリア帝國の魔導艦は全て海上艦であり飛行するタイプは存在しない。飛行する兵器を敢えて挙げるなら、古代兵器『キリル・エア』くらいのものであるが今まで実戦投入されたことがないためデータもない状態だ。
一応、制空戦や爆撃などを行える多目的魔導戦闘機『ガリアンヌMKⅡ』が最新鋭の航空機として実戦配備されている。
「ユースティアも飛行魔導艦を所持しております。また海上艦も確認しておりますので単純にタイカ大帝國の飛行魔導艦隊よりもユースティアのそれの方が優れていたと情報省では見ております」
「確か魔法文明だったな……しかし海上艦からの砲撃が空を飛ぶ物に命中するとも思えんが……」
「報告では魔導艦隊決戦では海上艦は攻撃に加わっていないようなので仰る通り当たらないと判断して何もしなかったのでは?」
内偵の手は当然バーグ王国内にも入っている。
神聖ヴァルガリア帝國は多種族国家だが主となる民族はハイエルフ族だ。
そのため大抵が現地民の協力者であった。
「となるとユースティアの飛行魔導艦はかなりの強さを持っていることになる。侮れませんね」
外務大臣のラングラルの言葉はどこか苦々しい。
「しかし魔導艦の速度はせいぜい時速300kmを超える程度だと言う話ではないか。海軍航空隊のガリアンヌMKⅡでも落とせるのではないか?」
「可能かも知れませんが……今まで戦闘機によって轟沈させられた魔導戦艦はありませんからね。飛行魔導艦の強度が同じなら落とせないと考えられるでしょう」
スミスの考えは即座に否定される。
この世界では戦闘行動中の魔導戦艦が戦闘機によって沈められることがないと言うのが常識なのだ。
実際に実例がないので誰もがその可能性を頭から捨て去る。
何よりこの世界の調停者たる自負を持つ神聖ヴァルガリア帝國以外の国、しかも極東に出現したばかりの国家にできるとは思えなかったのだ。
「ユースティアは戦闘機は持っていないのかね?」
「戦闘機のようなものは確認されておりますが、攻撃していたかは不明です。何やら飛行魔導艦の周囲を飛んでいただけと聞いております」
実際はかなり速度を落とした状態で対空誘導弾を撃っているのだが、この報告は彼らのユースティアに対する戦力分析を誤認させることになる。
Y-15が速度をかなり落としていて飛んでいたこと、そして攻撃手段である対空ミサイルが速過ぎて捉えることができなかったことが原因である。
「まぁよろしかろう。確かにタイカ大帝國の飛行魔導艦を沈めたのは大したものなのかも知れぬが、我が国にできぬはずがない。それよりも問題はアレであろう。炎龍じゃ」
帝政大臣のテオ・ラルラが最も重要なことに話を変えた。
出席者がハッと顔を上げるがどれも真剣なものに変わっている。
タイカ大帝國の皇帝――龍の血を宿すとされる者のみが扱える秘儀中の秘儀。
龍の使役である。飛龍などの亜龍とは違う真の龍を操るのだ。
タイカ大帝國が列強国として認められていたのもこの力の影響が大きい。
「一番肝要な点だ。しっかりと見ていたのだろうな?」
「報告では炎龍の火炎放射や火炎弾はユースティアの飛行魔導艦にダメージを与えていたようですが轟沈した艦は確認されておりません」
全員の顔が引き締まり緊張が走った。
「ではユースティアの魔導艦隊は無傷で炎龍を撃退したと言うのかッ!?」
「いえ、無傷ではないようです。ただ内偵していた者もよく分かっていないようでして……」
「ええい! もったいぶらずに速く言い給え!」
「飛行魔導艦隊から淡い緑色の……まぁ魔導砲でしょう。それが放たれ炎龍に直撃した瞬間、大爆発を起こしたとのことです。よく見えない不可視の攻撃とでも申しましょうか。白煙を残して炎龍に命中したようなので魔導砲のような何かだと思われます」
「何かとは何だ。何かとは! それを調べるのが貴官の役割だろう!」
「そうは言われましても確度や精度の欠く情報を上げる訳にはいきません」
インフォータルはタイラーからの口撃に対して一向に動じる様子はない。
ただ判明した事実を淡々と述べるのみだ。
それが彼に与えられた職務なのだから。
「ふむう……では炎龍はやはり撃退ではなく撃破されたと言うことか……」
ラルラはそれでも信じられないと言った表情で腕を組んだ。
「両国の動きはどうなっているんですか?」
「ユースティアは軍をバーグ王国の王都に集結させたまま動きはありません。タイカ大帝國は飛行魔導艦を1隻送ったようです。恐らく講和のためかと」
「確か正統政府を立ててそれを承認したんでしたよね? となるとバーグ王国はユースティアの傀儡、タイカ大帝國も戦争被害と賠償問題で国力を大きく落とすことになりますね……」
ラングラルはそう言うと細い目を増々細くして何やら考え始めた。
「となるとジーランディア大陸の列強、ランディス合衆国が黙って見ているとは思えんな」
「その通りだ。ゼムリア大陸からもどこかの国が手を伸ばしてくるかも知れない」
スミスとタイラーの危惧するところは同じようだ。
それの意見に頷きながらラルラが同調する。
「となれば我が国も座視することなどできぬ。丸裸のタイカ大帝國が草刈り場になる前に介入する必要があろう」
今まで黙って耳を傾けていた帝國総代シリアル・ナッソスは決断を下す。
それが彼の役割だから。
「皇帝陛下に上奏する。海軍、北方艦隊はカヌール海に展開しランディスを牽制。陸軍も北部、東部方面部隊を増強する。外務大臣はタイカにランディスが動けば参戦する準備があると仄めかせておいてくれ」
「獅子州への圧力が強くなるのではありませんか?」
「問題ない。必要があれば西方艦隊があるし、アトランティス帝國は内紛の国だ。あそこが獅子州を狙うならクルセフク王国を援助して徹底抗戦させればいいだろう。後はユースティアに関する情報をもっと集めるように」
ナッソスの指示に真面目な顔で皆が頷いた。
後は皇帝アルビオンⅤ世に上奏するだけだ。
激震の中、ゼノ・中央大陸の超大国が動き出そうとしていた。
ありがとうございました!
また読みにいらしてください!
面白い。興味があると思われた方は是非、評価★★★★★、リアクション、ブックマークなどをして頂ければと思います。
感想頂けた時はすごく嬉しくなっちゃいました!
モチベーションのアップにも繋がりますのでよろしくお願い致します。
明日も11時の1回更新です。




