第41話 落日の列強国
もうじき第2章突入なのでお楽しみに!
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(๑•̀ㅂ•́)و✧
本日は11時の1回更新です。
――タイカ大帝國・帝都ホークキン
皇帝シンキはまるでこの世の終わりが来たかのような表情をしていた。
顔色は絶望に染まり、ガクリと肩を落としてどう見ても憔悴しきっている。
「へ、陛下……如何なさいました……」
それでも尋ねない訳にはいかずリッカ丞相は恐る恐る声をかけた。
専心の間――皇帝が竜を使役するための部屋――の左右に並ぶ武官、文官たちもただ事ではないことが起こったのだと気づき始める。
派遣した魔導艦隊との魔導通信は途切れたまま連絡はない。
タイカ大帝國の皇帝のみが使役できる炎龍を通してシンキが見た光景はどんなものだったのか?
炎龍と同期していたシンキは戦争の顛末が見えているはずなのだが――
とは言え動こうとしない、いや動けないシンキの様子から容易に推測できる。
落とされたのだ。
炎龍が。
誰もが敗北を悟ったようで愕然とする者、ワナワナと体を震わす者、滂沱の涙を流す者と三者三様の態度を見せている。
今まで経験したことのない現実にぶち当たって対処の方法が分からないのだ。
竜騎兵と古代龍を使役することによって広大なタイカの地を統一し、周辺国を次々と冊封体制に組み込み事実上の属国化を成し遂げてきた。魔法を突き詰めて魔導の域にまで昇華させ、ついには空飛ぶ船――魔導艦を独力で開発。
その膨大な国力を持って大艦隊を組織し、北東世界に並ぶ者なしとまで言わしめた。
世界中がタイカ大帝國を列強国だと承認した。
この大敗北が白日の下に晒されれば権威は失墜し今まで保護してきた国家は次々とタイカ大帝國を見限るだろう。
そして他の6列強国による国土への干渉、侵略が始まるかも知れない。
干渉だけで済めば良いが世の中はそんなに甘くはあるまい。
幽鬼のようなシンキがようやく立ち上がりふらふらとした足取りで退室するがそれを止めることができた者はいなかった。
「緊急事態だ。これより国防会議を行う。主だった者たちを論議の間に集めよ」
リッカの言葉に誰も異論は挟まなかった。
ここにいる者の多くがタイカ大帝國建国の終焉を幻視したのだ。
国力の低下は避けられない以上、何処かで埋め合わせる必要がある。
やがて論議の間には丞相リッカを始めとした国務長官、軍務長官、外務長官、情報長官らが集まった。
「軍務長官殿、現状を説明致せ」
リッカが開口一番そう言うと苦虫を噛み潰したような顔をした軍務長官がおずおずと口を開いた。
「バーグ王国へ赴いた者から一切の魔導通信がない。恐らく全滅したと思われる」
「前回で竜騎兵10万、此度で15万が消えたと言うのか……」
「そして魔導艦隊も全滅。恐らく炎龍も落とされたのだろうな」
この場にいる全員が確信していることだ。
皇帝の態度がそれを物語っている。
「敵国は判明しておるのか?」
「恐らくクレア半島の南東に位置するユースティアと言う国家だと思われます」
「どのような国なのだ?」
「バーグ王国からの情報になりますが魔法文明のようです。彼の国は魔導艦を見ていますし攻撃を受けた飛龍が一瞬で爆散したと聞いております」
情報長官の言葉に不審を抱くリッカ。
タイカ大帝國の魔導艦を持ってしても対空魔導砲で飛龍を一瞬で撃破できるとは思えない。
「爆散だと? いくら飛龍相手でも魔導艦が一瞬で撃墜できると思うか?」
「確かに現実味がありません」
飛龍と言えども時速300km近いスピードが出ているのだ。
余程の対空魔導砲による弾幕でも一瞬と言うことは有り得ないように思えた。
「分からんな。もっと情報を集めてくれ。後は現有戦力だがどうなっている?」
「魔導艦は全滅に近い状態です。残存は20隻程度。地上戦力は竜騎兵が5万、歩兵なら幾らでも掻き集められそうですが……」
「乱が起きかねんか……」
「はい。それに地方の軍閥が動き出すでしょう」
タイカ大帝國を牛耳る者たちは帝城で贅を尽くした生活を送っている。
また運河整備や陵墓建造、新宮廷建造などに多額の費用をかけ国民を賦役しているため不満も多い。今年は大帝國の北部と西部で飢饉がおこっていることも状況を悪くしていた。国家自体も一枚岩ではなく、地方には私兵を持った軍閥が権力を簒奪せんと野望を持っている状況だ。
現有戦力ではユースティアに対して引き続き懲罰を行うなど不可能に近く、軍閥を抑え込むことすら困難と言わざるを得ない。
「飼っている龍はどうなっている?」
「まだ幼龍でございます。戦わせるなどできぬでしょう」
長い沈黙が場を支配する。
空気は最悪に近い状態であった。
「止む終えぬ……もう戦える状態ではあるまい。下手をすれば国家が滅びる」
沈黙を破ったのはリッカであった。
いや敢えて破らないと話が進まないため丞相たる彼が口を開いたのだ。
「外務長官、すぐに講和の準備をせよ。元々はバーグ王国に攻め込んだのであろう? 王国王都へ使者を送るのだ」
「しかしッ!」
「列強が蛮族などに屈するなど……」
「何とか一撃を与えて少しでも有利な状況で講和すべきだ!」
異論が噴出するが精神論で勝てる相手ではないとリッカは現実を見ていた。
少しでもマシな条件で講和を結ぶしかないのだ。
「貴殿も無理と理解しておろう。その蛮族に負けたのだ。いや我が国を破るほどだ。それはもう蛮族とは言わぬ」
「陛下が納得なさいませんぞ!」
「して頂く。私が陛下を説得する」
有無を言わせぬ言動に出席者が黙り込む。
リッカは何としてもタイカ大帝國を護ろうと修羅になることを決意した。
―――
――バーグ王国・王都ハン・バーグ
タイカ大帝國から魔導通信が送られ、それを聞いた新王ムノウは頭を掻き毟っていた。初めはユースティアの圧倒的な軍事力を目の当たりにし、国王が捕らえられたことを利用して新王になろうと画策したのが始まりであった。
その次は朝貢先のタイカ大帝國が懲罰行動に出たことを知り、やはり蛮族のユースティア如きには寝返られないと考え直した。
しかしその考えも甘いものだと思い知ることとなった。
タイカ大帝國が空前絶後の大艦隊と竜騎兵を投入したにもかかわらず、ユースティアはあっさりとそれを跳ね返し逆に壊滅させた。
伝説の炎龍が現れた時には「勝ったなガハハ」と笑い声まで上げたほどだったが、それさえ撃破された。
やること為すこと全てが裏目裏目に出てしまうどうしようもない状況。
「タイカ大帝國が講和を打診するなど……私はもう終わりだ……破滅だ。終わりだー!」
頭を抱えてうずくまるムノウの下には正統政府を名乗る第一王子たちの軍が各地で蜂起しているとの情報が次々と齎されている。国民の叛乱も相まってバーグ王国軍独力ではもう抑えきれない状況まで追い込まれている。
せめてもの抵抗としてムノウは講和の打診をユースティア側に伝えていない。
未だ王都沖には護衛艦隊が、王都上空には魔導艦隊が存在しているが無視している。
いや現実を直視していないだけなのだが。
とは言え、タイカ大帝國からの魔導通信はユースティア側に傍受されているので無駄に終わっているのだがムノウは知る由もない。
ユースティアは戦争で傷ついた魔導艦隊を帰投させ、新たに魔導戦艦1隻と魔導巡洋艦2隻を送り込んだ。護衛艦隊は無傷だったが弾薬と燃料の補給を行って待機させている。更に正統政府支援の名目で陸防隊1師団を王都近郊に上陸させ同様に待機させている。
バーグ王国の軍がほぼ存在していないことから、まさにやりたい放題である。
バーグ王国の与り知らないところでユースティアとタイカ大帝國の講和会議の段取りは進んで行く。
一方で正統政府は各地で叛乱軍と合流しながら一路王都へと進路をとっている。
王都には最早兵糧も少なく、実質的に籠城状態。
魔力通信は悲報ばかりが入ってくる状況。
ムノウの命運はここに尽きようとしていた。
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