第40話 ユースティア・タイカ大帝國戦争 ④
いつもお読み頂きありがとうございます。
感想を頂いたり、評価やブクマ、リアクションも増えてきたりしているので非常に感謝しております。
これからもよろしくお願い致します!
(๑•̀ㅂ•́)و✧
本日は11時の1回更新です。
これこそがタイカ大帝國の誇る最終生物兵器。
オースティン大陸の中でもタイカ大帝國領でしか確認されていない赤い龍――炎龍。
その額に埋め込まれた魔核によって龍と同期できる龍使いたるタイカ大帝國皇帝のみが操ることができる秘術。
バーグ王国王都上空に猛スピードで到達したそれは一羽ばたきして滞空した。
王都ハン・バーグの市街は初めて見る巨大龍に恐慌状態に陥り、国民たちはパニックで騒乱が起きていた。
王城のバルコニーから戦争の様子を見ていた新王ムノウも度肝を抜かれて腰砕けの状態だ。
『チッ……ヘリみたいに滞空できるのか。指示を求む』
『俺らを睨んんでやがる……あまり近づくと危険だぜ』
まだ対空誘導弾を搭載したY-15戦闘機は炎龍の周りを飛び回り牽制している。
それが鬱陶しいようでしきりに気にしてその長い首を振り機嫌が悪そうだ。
『魔導砲による攻撃を具申します。艦隊により一斉射撃を行います』
海防隊と空防隊で所属は違うが、本作戦では戦闘指揮権はイージス護衛艦〈ユリス〉にある。艦長のセイイチ・ホウジョウ海将が僅かに逡巡する。
「(恐らくは魔法由来の生物だろう……魔導砲が効くか? それとも対空ミサイルの飽和攻撃の方がベストか?)」
それも一瞬。
ホウジョウ海将は魔導艦隊による攻撃を選択した。
「魔導艦隊上昇せよ。全砲門を持って一斉射撃を行え」
命令は正確に全部隊に下され、魔導艦隊が動き出す。
攻撃を仕掛けるのは魔導戦艦〈リーン〉、魔導戦艦〈ティア〉、魔導戦艦〈ホルス〉、魔導巡洋艦〈トリス〉、魔導巡洋艦〈ニース〉である。
「戦闘機は魔導艦隊を支援せよ。敵の出せる速度、旋回能力、滞空能力、上昇能力、攻撃方法などを把握したい」
更にユースティア本土に戦闘機の増援を依頼する。
対空ミサイルによる飽和攻撃を試す必要があるかも知れない。
『ラムダ、了解』
『シグマ、了解』
魔導艦隊の攻撃準備が整うまでは何とか注意を引きつけたいところだ。
Y-15の内の1機が炎龍の正面からドッグファイトを仕掛ける。
『チキンレースだッ! テメーも漢なら踏み止まって見せやがれッ!』
マッハ2.5を超える速度で炎龍に迫りその距離は一瞬で詰まっていく。
すると炎龍がすかさず反応し、大きく口を開くとその口元に赤い光が灯る。
嫌な予感がしたラムダのパイロットだが男と男の勝負から降りる訳にはいかないと意味不明のプライドを胸に回避行動に移らない。極度の緊張感の中、それに耐えて突っ込むパイロットに炎龍の口から噴射された炎が襲い掛かる。
間一髪のところで急上昇に転じるY-15。
想像を遥かに超える火炎放射だ。飛龍の火炎弾など比較にもならない。
『なッ……漢の勝負を踏みにじりやがった!』
「……誰かあいつを黙らせろ」
沈痛な面持ちで溜め息をつきながらホウジョウ海将からの指示が飛ぶ。
炎龍は急上昇した機体を追いかけて後を追う。
その加速は凄まじく1つ羽ばたくごとに一気に距離を詰めてくる。
現代科学の結晶であるY-15が負ける訳にはいかないとラムダのパイロットは一転急降下し、機体を大きく旋回させる。だがそれにも着いて来る炎龍。
『こいつ速いぞ! 赤いからか!? 一旦距離を取る!』
急加速には流石の炎龍もついては来れなかったようで諦めたのか、その場で滞空し周囲を見回している。
そこには上昇して臨戦態勢に入った魔導艦隊の姿。
それに気付いた炎龍の注意が艦隊の方に向けられる。
目下のところ双方の距離は15km。
離れているようだが先程の急加速を目にした魔導艦隊の艦長たちに油断などなかった。とは言え初めて体験する予測不能な事態に緊張は最高潮に達する。
「魔導砲出力上昇! 全砲門、撃ちぃ方始め!」
『魔導砲出力上昇! 全砲門、撃ちぃ方始め!』
命令が復唱され魔導艦隊から五月雨のように魔導砲が発射され、炎龍へと降り注ぐ。その場にいた全員がその効果を固唾を飲んで見守っている。
――だが
「魔導レーダーに感あり。目標健在! 動きなし!」
レーダー士から悲鳴のような声が上がる。
魔導戦艦の主砲ですらダメージを与えるに至っていない。
「撃ち方止め。目標を確認する」
やがて爆裂式魔導砲による煙が晴れると徐々にその全様が明らかになっていく。
「目標の無事を確認。無傷な模様……。ッ? 何かフィールドのような球体に覆われています!」
「フィールドだと?」
監視員からの報告に魔導戦艦〈リーン〉の艦長も直接、超望遠機能を使って大型モニターに表示させる。
乗組員の理解が及ばない。
「何だあれ……バリア?」
しばしの沈黙の中、ようやく誰かの口から声が漏れるが誰もがそれが何なのか理解できずにいた。ユースティアの逆位相による魔導障壁とも違うものなのだがこれだけは本能的に理解できた。
あれによって魔導砲が無力化されたのだと言うことを。
「一点突破型収束魔導砲を使う。各艦用意ができ次第撃って良し!」
原理は不明だが撃ち破れるとしたらそれしかないと艦長は判断する。
『撃ってぇ!!』
各艦の艦長が叫ぶ。
主砲から発射された一点突破型収束魔導砲が一斉に火を噴いた。
一発、二発、三発……と次々と命中するとバリアには徐々に亀裂が入り五発目にようやく砕け散る。
まるでガラスの球のように。
「全砲撃てぃ!」
再び魔導砲が炎龍の体に集中する。
様子を見ているのか、動きはなく良い的だ。
「チッ……有効弾はなしか……」
「僅かながら流血があるようです。撃ち続けましょう」
魔導戦艦〈リーン〉では艦長と副長が話し合っていた。
通常魔導砲が効かないなら、一点突破型収束魔導砲を撃ちまくればいいのだと言う短絡的な思考だ。しかしタメが長いと言う欠点がある。
「目標、再びバリアを展開」
その時、イージス護衛艦〈ユリス〉から全部隊に無線が入る。
『残っているY-15による対空ミサイルの飽和攻撃を行う。10機は全弾撃ち尽くせ! 魔導艦隊は一点突破型収束魔導砲の準備にかかれ!』
対空攻撃が可能なイージス護衛艦2隻と巡洋艦級護衛艦2隻も王都沖に展開しているが、ホウジョウ海将は今回の攻撃を見てからの攻撃に加わるか否かを判断することにした。間もなく増援のY-15がやってくる。その時にタイミングを合わせて全艦隊と全戦闘機による飽和攻撃を行うつもりだ。
命令を受けて半島に残っていた10機が編隊を組み直し炎龍に進路を取る。
まずは対空誘導弾のみによる攻撃を行う。
空中にいる味方魔導艦隊の更に上空をパスしたY-15、全機は超至近距離でほぼ同時に各4発の対空誘導弾を放ち急旋回する。
対空誘導弾はマッハ3の速度で炎龍に迫るが、飛来するそれに何かを感じたのか身をかわそうと羽ばたくと回避行動を取った。しかしかわしたつもりの攻撃は進路を変え、再び炎龍に肉薄すると全弾命中した。
すぐにレーダー士から報告がくる。
「レーダーに感あり。目標健在!」
そこには再びバリアを張った炎龍の姿があった。
ホウジョウ海将が唸る。
こうなれば、タイミングを合わせての飽和攻撃だ。
一点突破型収束魔導砲を叩きこんでバリアを破壊後に間断なく対空誘導弾を叩きこむ。
それしかない。
「もうすぐ本土からY-15が来援する。その時が勝負だ。魔導艦隊はそれまで攻撃し続けろ!」
炎龍からの攻撃はまだ火炎放射が1度あっただけだ。
攻撃し続けて相手に付け入る隙を与えてはならない。
対空誘導弾を撃ち尽くした全機は本土へ帰投する。
護衛艦は攻撃目標にされないように来たる来援機を待って攻撃を仕掛けるため動けない。となれば敵の目を引きつけるのは魔導艦隊の役割となる。
もう何度目になるかも分からない魔導砲が一斉に発射される。
各艦長たちは予測した。
炎龍が再びバリアを展開して耐える選択をするだろうと。
しかしそれはあっさりと裏切られる。
炎龍が急旋回で魔導砲を回避すると口から巨大な火炎弾を放ったのだ。
それは火炎放射とは違い、かなりの速度で魔導艦に迫る。
「回避! 面舵いっぱい!」
魔導巡洋艦〈トリス〉が回避行動を取るが躱しきれない。
火炎弾は左舷に命中する。
「左舷に被弾! そ、装甲が溶解している模様!」
「クソッ……機関はどうなった!?」
「機関出力正常! 飛べます!」
「一点突破型収束魔導砲を撃てッ!」
魔導巡洋艦〈トリス〉の艦内の緊張が一気に高まった。
炎龍が攻撃に転じたのだ。
しかも有効弾でありこれ以上の命中弾は避けなければならない。
動揺が走ったのは他の魔導艦も同様だ。
最悪、落ちる。
転移以来、初の犠牲者が出るかも知れない。
そんな恐怖が艦内に広がり、このままでは何かを引き金に恐慌状態に陥る可能性がある。
炎龍は旋回を続け、次の目標を定めたのか急降下を開始。
大きく口を開くと火炎放射を放った。
速度が違い過ぎる。
魔導艦の速度は時速300km~400km程度しか出ないのだ。
相手は下手をすれば戦闘機並の速度と機動力を持つと予想される。
まともに火炎放射を喰らった魔導戦艦〈ホルス〉が炎に包まれて炎上した。
幸いだったのは火炎弾ではなく火炎放射だったことと、魔導障壁による減衰・強化と装甲の難燃性、これに尽きる。艦橋の一部が炎上しているが広がる様子はない。
各艦から一点突破型収束魔導砲が発射される。
超高速で動き回る炎龍に直線の魔導砲は当たらない。
科学技術による誘導弾搭載型の魔導艦は未だ配備されていないのだ。
誘導型魔導砲に至ってはテスト段階である。
それでも撃ち続けなければならない。
牽制すらしないとなれば炎龍は労せずして各艦を攻撃していくだろう。
「くそ……誘導魔導弾が撃てればな……」
実用化していたのは旧世界の超魔導大国であったアマリア帝國くらいのものだ。
イージス護衛艦〈ユリス〉の戦闘指揮所ではホウジョウ海将が戦闘機の来援をひらすら祈っていた。魔導艦が落とされれば一点突破型収束魔導砲が撃てなくなる。
恐らく炎龍のバリアを破壊できるのはそれしかないだろう。
対空ミサイルの攻撃のみで破壊できるのは思えない。
「魔導戦艦〈ティア〉に被弾! 火炎弾です。右舷に爆発を認める!」
「来援はまだか……全て落とされるぞ……」
「レーダーに感あり。南東から本土から来援! 間もなく到着します! 数50!」
「来たかッ!」
ホウジョウ海将はガタッと立ち上がると叫んだ。
「来援機に通信。炎龍の注意を引いてくれ! 距離を詰めて攪乱せよ!」
「危険すぎます!」
「承知の上だッ! 魔導艦を落とす訳にはいかん!」
待ちに待ったY-15戦闘機が到着した。
またうるさいのが来たかとばかりに炎龍の動きが止まる。
「魔導艦隊が近すぎる。距離を取らせろ!」
まずは炎龍の動きを止めてバリアを張らせることが先決だ。
それを一点突破型収束魔導砲で破壊し、間髪入れずに対空誘導弾の飽和攻撃で勝負を決める。
「魔導戦艦〈リーン〉に被弾! 高度が落ちています!」
「死んでも落ちるなッ! 主砲の仰角が足りなくなるぞ!」
Y-15の1機が牽制の対空誘導弾を1発発射する。
当然のようにバリアに阻まれるが注意を引くことには成功したようだ。
その隙に魔導艦隊が炎龍から距離を取る。
「全部隊に通達。これから一斉攻撃を開始する。タイミングを合わせろ! 外すな。必ず当てろッ!」
作戦内容が通達される。
賽は投げられた。
本作戦はタイミングが全てだ。
射撃統制システムにより着弾予測が算出されカウントダウンが開始される。
炎龍は近づくY-15を確実に捉えているのかバリアを解除して火炎弾を何発も撃ち出し始めた。
「バリアを解除しないと攻撃できないのか……。まぁ作戦に影響はない」
魔導艦隊から一斉に一点突破型収束魔導砲が5発発射される。
それから少し遅れてY-15、50機から各4発、計200発の対空誘導弾が発射される。更にはイージス護衛艦2隻、と巡洋艦級護衛艦2隻からも計220発の対空誘導弾が発射された。
世界の刻が止まる。
この場にいる全ての国防隊員が勝負の行方を見守っていた。
緊張が最高潮に達した瞬間――
炎龍が大爆発を引き起こした。
レーダー士が確認、通信士が全部隊に無線を送る。
「目標ロスト……撃破したと思われます」
魔導レーダーから魔力反応が消失していた。
そして煙が晴れ国防隊員たちの目が一点に集中する。
そこで見たものは――バラバラになって落ちていく炎龍の姿であった。
『え、炎龍……目標撃破! 敵反応ありません!』
その瞬間、全ての艦、戦闘機に乗る国防隊員から大きな歓声が上がった。
――ユリウス歴2569年4月5日
この日、クレア半島のバーグ王国王都、ハン・バーグで起こったユースティア・タイカ大帝國戦争は終結を見た。
ユースティアのイージス護衛艦2隻、巡洋艦級護衛艦2隻、魔導戦艦3隻、魔導巡洋艦2隻、戦闘機Y-15、のべ100機の攻撃を受けタイカ大帝國の魔導艦隊は殲滅。最終生物兵器の炎龍は一点突破型収束魔導砲と対空誘導弾の飽和攻撃によって爆発四散。その後、到着した竜騎兵15万も魔導砲による対地攻撃によりこの世から消えた。
これは列強国が事実上、大敗北した瞬間であり歴史の転換点となる。
ありがとうございました!
また読みにいらしてください!
面白い。興味があると思われた方は是非、評価★★★★★、リアクション、ブックマークなどをして頂ければと思います。
感想頂けた時はすごく嬉しくなっちゃいました!
モチベーションのアップにも繋がりますのでよろしくお願い致します。
明日も11時の1回更新です。




