第38話 ザルツ海海戦 ②
土曜日から更新を1日1回に変更させて頂きます。
間もなく第2章です。お楽しみに!
なんか[日間]空想科学〔SF〕 - すべてで9 位になってた!!
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(๑•̀ㅂ•́)و✧
本日は11時、17時の2回更新です。
――ガラベルム帝國・北伐艦隊
目の前では信じられないことが次々と起こっていた。
グレイモスが帝國自慢の戦闘機が敵空中戦艦に対して攻撃が効果がないことに驚愕している。
通信士から上がる報告はどれも信じられないものばかりだ。
「機関銃も300kg爆弾も効果なしだと? 冗談は休み休み言え!」
「戦闘機で落とせないとなると些か困ったことになりますな。こちらの艦隊の主砲が届けば良いのですが……」
グレイモスの心からの叫びにも副長は呑気な口調で言った。
いや彼の余裕のない心情がそう聞こえさせたのかも知れない。
「些かだと? 言葉の使い方を間違えるな!」
指摘されてようやく副長が自分の失言に気が付いたらしい。
「申し訳ございません。かなり問題ですな」
戦闘機の攻撃が無意味なら海上艦隊による砲撃で落とさねばならない。
しかし先程まで全く動いていなかった空中艦隊がとうとう動き始めた。
「敵空中艦隊……速度が300km以上出ています……」
「何だと!? となると当たらんぞ……」
戦闘機として見れば遅いが海上艦としてみれば超高速だ。
到底、当たるとは思えない。
どうしたものかと懸命に思案中だったグレイモスの耳にまた嫌な報告が届いた。
「北から海上艦隊が接近中です! 戦艦2、巡洋艦4、駆逐艦8!」
言葉に詰まるグレイモス。
どうみても過剰な戦力だと思っていたがどうやら敵にはまだ余力があったらしい。
「61式ガルベースは空中艦隊の背後に回り込み爆撃を行え。北伐艦隊は接近中の艦隊へ向かう」
「提督閣下。北の艦隊に接敵する前に空中艦隊に砲撃してみては如何でしょうか?」
副長の言葉にウムと首肯する。
北から来る艦隊まではまだ主砲の射程圏外だ。
範囲に入るまでは駄目元でも空中艦隊を狙ってみるのも良いかも知れない。
「物は試しだ。全砲塔を空中艦隊へ向けろ。絶対に叩き落とせ!」
通信士はまた無茶を言い出すなぁと思いつつ各艦に命令を正確に伝達した。
「砲弾は近接信管を使え。砲手長は各自の判断で撃って良し」
グレイモスも副長は右手から回り込もうとしている空中艦隊を凝視する。
凄まじい轟音と共に各艦から主砲、副砲が火を吹いた。
戦艦〈ガルバスター〉からも48cm3連装砲3基9門、15.5cm砲3連装4基12門、12.7cm連装高角砲6基12門が発射される。
「有効打ありません」
「見れば分かる。修正して撃ち続けろ」
その後も砲撃を続けるが全く当たることはなかった。
それどころか敵空中艦隊から反撃の砲撃が降り注ぐ。
「駆逐艦〈ダメポヨ〉大破! 巡洋艦〈ベローズ〉被弾! 船体が傾いています!」
そして淡い緑色の魔導砲がとうとう戦艦〈ガルバスター〉に被弾した。
かなりの衝撃が艦橋を襲い船体は大きく揺さぶられる。
周囲も大きな水柱が立て続けに上がった。
「損害を報告せよ!」
「被弾多数! 副砲、高射角砲小破!」
「装甲は抜けんか!」
グレイモスは初めての吉報に狂気の笑みを浮かべる。
こちらの戦闘機による攻撃は効かないとは言え、まだ艦隊の砲撃が当たっていないのでこちらの攻撃が通じる可能性は十分に考えられる。つまりこちらの戦艦クラスを沈めることはできず、こちらは沈められる可能性がまだ残されていると言うことだ。
後は敵海上艦隊の戦力を確かめるだけだ。
「魔法文明の砲撃ではこの〈ガルバスター〉を撃沈させることはできん!」
「敵、海上艦隊が射程に入ります。64式ガルマキラが海上艦隊に攻撃を開始」
「よし! 全戦力を持って敵海上艦隊を叩くぞ! 帝國の本気を見せてやれ!」
旗艦・戦艦〈ガルバスター〉からの通信を受けて艦隊の士気が上がる。
砲手長が砲撃を当てるべく動き出す。
すぐに計算、仰角調整などがなされ敵海上艦隊へと狙いを定めた。
「撃ってぇぇぇぇぇぇ!!」
轟音と地響きが艦橋を支配する。
音速を超える速度で打ち出された砲弾が海上艦隊の近くに次々と着弾し水柱が上がる。
「有効打は認められず」
「再調整急げ!」
かなりの至近弾に満足し次こそ当ててやるとグレイモスの意気は否応なく上がった。64式ガルマキラも敵艦隊に群がっている。
「魔法の砲撃など当たっても痛くもかゆくもないわ! 全速前進! 撃ちまくれッ!」
その時、敵戦艦の甲板が爆発した。
何が起きたのか分からずグレイモスは双眼鏡を片手に覗き込んだ。
「敵艦爆発!」
「見ればわか――何ぃぃぃ!?」
爆発したかと思うと煙の尾を引いて上空に何かが撃ち上がったのが分かった。
それからすぐに信じられない光景が彼の目に飛び込んできた。
敵艦隊の上空に数えきれない程の爆発が立て続けに起こったのだ。
「戦闘機……ほぼ消滅」
目の前で起こったことなのにもかかわらず、何が起きたのかさっぱり理解できずにいた。茫然とすることしかできないグレイモスにまたもや報告がなされようかとしか瞬間――
「敵艦――」
最後まで言い終わることもできず戦艦は強い衝撃に襲われた。
あまりの衝撃に耐えきれず倒れ込むグレイモスと副長。
「くッ……何が起きた……」
職務に忠実なオペレーターがすぐに被害報告を行う。
「敵の砲撃が着弾した模様。戦艦〈ガルバスター〉副砲使用不能! 船首に穿孔を認める!」
「巡洋艦〈ミニスター〉大破轟沈! 巡洋艦〈ネルスター〉轟沈! 空母〈クレノル〉轟沈! 空母〈せルノル〉轟沈! 駆逐艦――」
「もういい!」
信じられない。信じられない。
駆逐艦ならともかく巡洋艦クラスにもなれば魔法による攻撃など効かないのではなかったのか。それにしても何処から攻撃を受けたのかすら分からなかった。
「提督閣下! ここは撤退を進言致します!」
「戦艦はやられていないッ! 敵に一撃も与えずにおめおめと引き下がれるかぁ!」
そして轟音。
砲手長は諦めていなかった。
混乱する船内のことなど気にせずに攻撃を優先する。
「主砲、弾着――」
再び敵戦艦の甲板が爆発する。
とほぼ同時に何かが撃ち出され空中で1つ爆発。
残りは海上に着弾した。
「もしや……こちらの主砲を撃ち落としたと言うのか……?」
グレイモスには現実が受け入れられずにいた。
敵――ユースティアは魔法文明国家ではなかったのか?
情報局は何をしていた。
これは怠慢だ!
彼の心は責任転嫁へと舵を切っていた。
――ユースティア・シルム空防基地
「どれだけ沈めた?」
護衛艦隊群から発射された艦対艦ミサイルによりガラベルム帝國・北伐艦隊は大打撃を受けていた。
上空を飛んでいた戦闘機もその多くが艦対空誘導弾により撃墜。
恐らく訳も分からず多くの仲間が撃ち落とされたことに激昂した者は20mm機関砲によって撃墜され、恐慌状態に陥った者は我先にと逃げ出した。
「巡洋艦4、駆逐艦10、空母2、補給艦10轟沈です」
「まだ諦めんか……」
敵艦隊はまだ海を掻き分けて進んでくる。
上からは過度な攻撃を控えるよう命令を受けているからには当初考えられていた対艦ミサイルによる飽和攻撃は実行不可能となった。
「空将、ここは敵の心を折るべきかと」
「どう言う意味かね?」
「敵艦隊の被害は甚大ですが戦艦にはあまり被害が出ていません。ここは魔導戦艦の一点突破型収束魔導砲で沈めるべきだと愚考します」
「なるほど……敵は戦艦の強さに縋っている訳か。試す価値はあるな。魔導戦艦〈テリウス〉に命令を伝えろ」
通信士によって指示が飛ぶ。
射程距離が短くなるのでかなり近づく必要があるが海上艦からの攻撃では当たる可能性も低いだろう。
「間もなく敵戦艦が射程に入ります」
「よし。危険を冒す必要はない。打ったらすぐに距離を取れ」
ホムスター空将を始めとした空防隊員たちが大型モニターに目をやる。
標的の戦艦との距離は15km。
目的地点に到達した魔導戦艦〈テリウス〉の側面砲が淡い緑色に光始める。
一点突破型収束魔導砲の欠点はチャージが長いことと射程が短いことだ。だがそれを犠牲にした上での貫通力は凄まじいの一言に尽きる。
本来は主砲で撃つのだが海上にいる戦艦を攻撃できるのは側面砲しかない。
口径は落ちるものの複数命中すれば問題はないのである。
そしていよいよ準備が整い、通信が入る。
『撃ちぃ方始め!』
側面砲から一斉砲撃された魔導砲は全弾、目標戦艦に命中した。
通常魔導砲ではあまりダメージを与えられなかった戦艦は重要区画を撃ち抜かれ真っ二つに大破轟沈し深い海底へと沈んでいくのであった。
―――ガラベルム帝國・北伐艦隊
空中の艦船が1隻近づいてくる。
艦橋からはひどく緩慢に見えるがその速度はかなりのものだ。
それは戦艦〈ゼルビー〉に接近しながら側面砲に最早見慣れてしまった淡い緑色の光が灯っていく。轟沈を免れた北伐艦隊も黙って見ていた訳ではなく空中に向かって当たらない砲撃を飛ばし続けていた。
「な、何をするつもりだ……?」
グレイモスの心中に黒い靄が染みのように広がっていく。
その不安が心を支配しようとした刻、それは起こった。
敵艦からの一斉砲撃。
それはまるで吸い寄せられるかのように戦艦〈ゼルビー〉に命中すると易々と重厚な装甲を貫通し重要区画を焼き尽くした。
火柱が天高くまで上がり船体は真っ二つに折れるようにして戦艦〈ゼルビー〉は爆発・轟沈した。
それは見た者全ての心を圧し折った。
誰の口からも何の言葉も出ては来ない。
口をあんぐりと開けて阿呆のような表情のまま固まっている者も多い。
「な、なんと言うことだ……帝國の……我が帝國の誇る戦艦が轟沈だと……? 有り得るはずがない! 有り得るはずがないのだッ!」
ようやく言葉を絞り出したグレイモスであったが最後の方は最早悲鳴に近い声になっていた。隣でも副長が絞り出すように声を上げ、全身は緊張性の汗でべとべとになるほどであった。
「魔法文明とはここまでのものなのか……」
呆けたままの2人を正気に戻したのは監視員からの無線であった。
『て、敵艦の側面砲が再び発光……攻撃の兆候あり……』
「てて撤退だ! 全艦隊に通達! 転進して本国へ帰還する!」
こうしてガラベルム帝國の北伐艦隊はユースティア魔導艦隊と第8護衛艦隊群の攻撃を受け大損害を被って撤退。
何とか本土への被害を出すことなく局地戦に勝利することとなった。
国防隊からも1人の死傷者を出すこともなく指揮官レベルの隊員たちは安堵の溜め息をついたのである。
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