第31話 前兆
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(๑•̀ㅂ•́)و✧
昨日は1回更新と書きましたが変更します。
本日は11時、17時の2回更新です。
――ユースティア
バーグ王国に送り込んでいた内偵からの情報はすぐに政府に伝えられて共有されることとなった。
列強国とされているタイカ大帝國がクレア半島に兵を送ったことで、新国王となったムノウが両国間で交わした覚書を一方的に破棄してきたという。またムノウの即位に反対する勢力が追放されソジークに監禁され、実質、王国は反ユースティアでまとまってしまった。
「やはり列強国の介入がありましたね。宗主国の面子と言うものでしょうか?」
「どうなか? しかし列強ってぇのはプライドが高いって相場が決まってるもんだ。それに大戦力を投入してきたんだろ?」
「はい。魔導巡洋艦2隻と陸上兵力10万と聞いております」
「それだけいればバーグ王国も強気になるでしょうね。しかし半島に機甲部隊を投入する訳にもいきませんね。泥沼になりそうです」
ユースティアは別にバーグ王国を占領統治したい訳ではなく、謝罪と賠償を求めているのだ。対話の相手が新国王のムノウである必要はなく、新政権を樹立してしまえば良い。
「となると陸さんが確保してきた王子様の使いどころだな。そして半島をタイカ大帝國の影響下から解放する」
「ソジークには新国王の反対派が監禁されているようですし彼らにも協力してもらいましょう」
「そうだな。失脚した奴らも全く関係ない我が国を攻撃した負い目もあるだろう。それに大敗北した訳だしな」
すぐに対バーグ王国戦略本部と政府首脳との意思のすり合わせが行われタイカ大帝國との戦闘作戦が認められた。この内容に噛みついた閣僚もいたが、バーグ王国への謝罪と賠償の要求は国民の支持を大きく受けており作戦の遂行は絶対と言える。
王都ハン・バーグに護衛艦2隻と補給艦、そして念のため曳航した魔導戦艦2隻を送りユースティア本土から制空型戦闘機Y-15を投入してタイカ大帝國の魔導巡洋艦を落とす。陸上戦力については制空権確保後に援軍駐屯地を爆撃し敵戦力を無力化する。例え爆撃で撃ち漏らしても魔導戦艦による地上砲撃ができる。時間を合わせて一気呵成に勝負を決めるのが肝要である。
こうしてバーグ王国王都急襲作戦が発動した。
――バーグ王国・ソジーク
この都市には新国王ムノウに敵対した者たちが監禁されていた。
とは言っても特段牢屋などに入れられている訳えはなく、せいぜい監視兵が貼り着いている程度である。
深夜、元王国大将軍のフェーンの部屋に侵入する男たちがいた。
ユースティア特殊作戦部隊イースの面々である。
彼らはフェーンを優しく起こすと喉元にナイフを突きつける。
銃にしなかったのはその効果を理解していない可能性を考えたからである。
「大人しくしろ」
「……ッ!?」
「俺たちはユースティアの特殊部隊だ。あなたに話がある。聞いてもらおうか」
汗にまみれた表情でコクコクと頷く彼の首元からナイフが離される。
「よ、用件はなんだ……私を消しに来たのか?」
「消すならこんな面倒なことはしないよ。あなた方は新しく即位したムノウに納得がいっていない。そうだな?」
「ああ。あのような者に国家運営などできるはずがない。亡国の道を辿るだけだ……」
「そこで相談だ。現在我が国は貴国の王子と王妃を保護している」
「なッな――」
危うく大声を出しそうになったフェーンの口を押えると話を続ける。
「この都市にはムノウに反抗した者たちが監禁されているんだろ? そこで、だ。あなた方に王子を旗印に正統政府を名乗ってもらいたい」
「王子殿下はご無事なのか――」
「しーーーー!!」
「す、すまない」
「傷1つ付けちゃいない。我が国は現在のバーグ王国を賊軍として葬りさることを決定した。その後は王子に新国王になってもらい我が国に賠償をしてもらうこととなる。つまりユースティア政府は新バーグ王国を承認し、以後独立国家として扱う方針だ」
「それは願ってもないことだが、兵がいない……ムノウに不満を抱いている者もいると思うが現状ではどうすることもできないだろう。それにタイカ大帝國が軍を派遣してきたと聞いた。勝てるのか?」
「心配は無用だ。我が国が貴国の後ろ盾になる。タイカ大帝國についてはクレア半島から叩き出すことが決定している」
それでもフェーンの表情が優れないところを見るとやはり列強の名は伊達ではないらしい。特殊作作戦部隊もバーグ王国軍を壊滅に追い込んだことを知ってはいるが魔導船を持った相手と科学技術兵器で戦ったことがないことから内心不安に思っていてもおかしくはない。
元々、旧世界で対戦勝国の魔導戦艦を相手にするために科学技術を磨き、護衛艦や戦闘機、兵器を開発・製造してきたのだ。実質、科学対魔導になる訳なので政府上層部の関心も高い。
「王子派の者たちを集めて全土に檄を飛ばすんだ。叩き出すのは俺たちの仕事だ。あなたには特等席で観戦してもらおう。動くのはそれを見てからでもいいだろうさ」
この条件をフェーンは飲んだ。
説得に成功したイースの面々であったが、この後も何人かに接触する必要があったことを思い出して少し憂鬱になるのであった。
――バーグ王国王都ハン・バーグ
「陛下、浮き船に続き、竜騎兵10万も到着致しましたぞ!」
側近の男は喜び勇んでムノウに報告していた。
浮き船の威容を見た瞬間、既にユースティアがバーグ王国に手出しできないであろうことは確実だと感じたものだったが、ここに更に10万もの竜騎兵までもがやって来たと言うのだ。
ムノウは増々浮かれておりニヤニヤが止まらない。
大量の兵糧を用意するのは大変だが、これでタイカ大帝國が朝貢国家を護ってくれることは確実のものとなった。
そこへ竜騎兵部隊を率いる南方平定将軍オウイが玉座の間へとやってきた。
がっしりした巨躯を持つ立派な顎鬚を生やした男でその眼光の鋭さは歴戦の猛者であることを感じさせる。
「バーグ国王よ。出迎えご苦労であった。我々が来たからには東方の蛮族程度に手出しはさせぬ。安心するがよかろう」
「ははー! 皇帝陛下には真、感謝しても感謝しきれませぬ。これからも忠節を誓いまする」
「良い。しかし皇帝陛下は少し貴国を疑っておいででな」
予期せぬ言葉にムノウに戦慄が走る。
弱体化した現在の国力で無茶な要求に応えられるか分からない。
まったく心当たりがないので声が震える。
「ななな、何をお疑いで……?」
「貴公が新王となったようだが、我が国はそれを聞いておらぬし許可した覚えもない。納得のいく説明をして頂こう」
ムノウはその壊死しかけた脳みそに電流が走ったような感じがした。
即位の礼などすっかり頭から抜け落ちてしまっていたからだ。
完全なるうっかりミスであり申し開きもできないが、それを進言する者もいなかった不幸を嘆くしかないだろう。
「も、申し訳ございませぬ……ユースティアの侵攻による国内の混乱を収めるのに必死で皇帝陛下にお伺いを立てる暇もなく――」
「ほう……陛下のことなど眼中になかったと……?」
「決してそのような! いや、その……」
決して忘れていたなどとは口が裂けても言えないので言葉を濁すしかできない。
「魔力通信で一報入れるだけでも違ったと思うのだが?」
「平に! 平にご容赦を!」
結局、ムノウは謝り倒すことしかできずこの夜はオウイに少しでも良い印象を持ってもらおうと精一杯歓待することしかできなかった。もちろん外務卿のセルノは公式の魔力通信として新王即位の報を入れたがタイカ大帝國がどのような判断を下すか王国首脳は戦々恐々とするのであった。
そして早朝――
ムノウはこの世の終わりが来たかと思うほどの轟音と共に目を覚ました。
慌てて起き上がりバルコニーに出るとその音は小さくなっていったが、周囲を見渡しながら耳を澄ましていると再び雷鳴の如き轟音がやってきた。
音の主が戻ってきたのだ。
そして目撃する。
矢じりのように鋭く尖った空飛ぶ船らしきものが目の前を轟音と共に超高速で通り過ぎてゆくのを。
「なッ……何だあれはッ!?」
実際はY-15がローパスしただけなのだが王国にいる全ての者が目を覚ましたであろうことは確かだろう。幸い、残っていた飛龍部隊の練度は高かったらしくすぐに全騎が空へと舞い上がる。
その数20。半島全土から集めればもう少しはいるが、対ユースティア戦とコクリ国戦でかなり減ってしまっていた。揃えるのにかなりの金がかかる飛龍隊を再編するには膨大な時間と訓練が必要なのだ。
「おお! 飛龍隊が上がったか! これで安――」
ムノウが安堵の表情のままで固まった。
先程の轟音とは違った強烈な爆音が立て続けに起こる。
しばしの間固まっていたムノウであったが何とか声が出たようで疑問が口についた。
「一体何が……」
そこで思い出す。
以前見た光景であった。
「ユースティアかぁぁぁぁぁ!!」
何故だ。何故忘れていたのだ?
目の前で次々と飛龍が落とされていったことを。
あの悪夢の光景が再び出現したことでムノウの心が絶望に染まる――かに思われた。
「そ、そうだッ……タイカ大帝國がおるッ! 空の浮き船がおるッ!」
宗主国の誇る魔導船と竜騎兵の存在を思い出しムノウの心に再び希望の光が射した。
その思いが届いたかのように魔導巡洋艦〈チョウユウ〉と魔導装甲巡洋艦〈ケイエン〉の底部が開き数多の魔導飛空艇が吐き出され始めた。
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