第28話 カウントダウン
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(๑•̀ㅂ•́)و✧
本日は13時、21時の2回更新です。
――ドゥーリ領アルトア占領軍
何が起こっているのか理解が追いつかない。
警報が鳴り響いたので体はすぐに反応し総督府に隣接している兵舎から飛び出した。ドゥーリ共和国は植民地化に当たり城壁内にあった宮殿跡を総督府としてそのまま利用している。現在はアクセスを良くするために宮殿横の城壁は撤去され代わりに占領軍の兵舎が建ち並んでいた。
『敵襲来! 敵襲来! 南から空飛ぶ船が出現した! 恐らく魔導飛空艇と思われる! 海上艦隊は確認されていないが船員は直ちに乗船し応戦せよ! これは訓練ではない!』
ドゥリス歩兵銃を手にしたロズールがまず見たものは、空に浮かぶ巨大な船であった。飛空艇の側面にある砲塔が地上へと照準を合わせるのが見て良く分かる。
「ま、まずいぞ! 艦隊がッ!」
淡い緑色をした魔導砲が一斉に射撃され海上艦に命中し爆発を起こして撃沈されていく様を見てロズールは未だかつてない程の恐怖に襲われていた。
6隻の飛空艇は瞬く間に海上艦とせっかく整備した港に破壊を撒き散らしていく。その中には海上艦に乗り込んでいたり、これから乗り込もうとしていた者たちも当然巻き込まれている。
「ああ、やられる……皆やられていく……」
空にいる敵にどうやって対応しろと言うのか。
ロズールがドゥリス速射砲による攻撃しかないとの考えに至り城壁の方に目を向けると、皆考えることは同じだったようで砲兵部隊が空に向けて砲弾を打ち出していた。しかし全くと言ってよいほどに当たらない。というかそれ以前に射程が足りなさすぎて届いてさえいないのだ。
彼が知る限りではドゥリス速射砲は口径75mm、射程にかんしては8000mほどだ。それ以上の高度からの一方的な攻撃に対処などできるかと独り言ちる。
破壊する物を失った飛空艇は次の目標を兵舎に定めたようで砲塔が旋回しているのが見える。破壊の雨から逃れるために兵舎に逃げ帰った兵士もいるため大きな被害が出るのは間違いなかった。
「くそったれ! あんなの反則じゃねぇか!」
文字通り手も足もでないドゥーリ領アルトア占領軍を再び衝撃が襲う。
海上から陸に乗り上げた船から見たことのない砲塔のついた鉄の車――60式戦車が姿を現したのだ。
車両の後には歩兵の大軍が上陸を開始しておりその数は知れない。
動揺している間にも敵軍は城門方面と総督府方面に別れて進軍していく。
指揮系統が混乱しているようで命令もなく組織だった反撃ができない。
そんな中、ロズールは総督府が占領されるのを恐れてそちらへ向かうことに決めると敵に背中を見せて駆け出した。背後からはダダダッと銃が連射される音が聞こえてきて周囲の仲間たちがバタバタと倒れ伏していく。速射性も威力も銃の性能は敵軍の方が勝っているのが直感的に理解でき、背中を冷や汗が伝って死の恐怖が押し寄せてくる。
総督府の周囲は市外地になっているため要塞化されている訳でもなく塹壕の用意すらない。そもそも南に存在する国から攻め込まれるとしたら海上艦隊で迎え撃つ予定だったのだ。つまり旧王都における防御施設と言ってよいのは城壁くらいのものであった。
何とか総督府までたどり着くと土嚢を積み重ねて防護璧にしようと兵士たちが奮闘していた。ここは指揮系統が残っているようでロズールはホッと胸を撫で下ろす。しかしそれも束の間、敵軍は砲塔車を前面に押し出してその背後から歩兵を伴い進軍して来た。頭上からは時折魔導船の魔導砲が撃ち出され友軍が吹っ飛んでいる。
どんな防御方法を持ってしても防げる気が全くしないロズールであったが無駄死にだけは避けたいと必死にドゥリス歩兵銃を敵に向けて連射していた。
砲塔車から撃ち出される砲撃もそうだが飛空艇からの魔導砲も脅威であり土嚢の防御璧など気休めに過ぎず止まらない冷や汗に死の予感がひしひしと感じられる。
「隊長殿! 今すぐ降伏すべきです!」
「たわけがッ! 総督府を落とされる訳にはいかん!」
「ですがこちらの攻撃が全く効いている気配がありません! 無駄死にする必要はないでしょう!」
「何だと貴様ッ! 同胞の死を無駄だと言うのかッ! それに入植した国民もいるのだぞッ!」
「空飛ぶ船やドゥリス速射砲が車になったかのような兵器が火を吹けばそれこそ今この瞬間に死が訪れる可能性すらあるのです!」
「ドゥーリ共和国は無敵だ! それに捕虜にでもなろうものなら待っているのは拷問による死だけなのだぞッ!」
ロズールの背後では士官同士で言い合いが繰り広げられていた。
ドゥーリ共和国軍がいた旧世界では戦時国際法のようなものは存在しない。
隊長の男が言った通りになる可能性は十分に考えられた。
その時、敵軍の方から拡声器を使ったような大きな声が聞こえてきて口論が止む。
『ドゥーリ共和国軍に告ぐ。直ちに武器を捨てて降伏しろ。もちろん命は保証するし拷問にかけるようなこともない』
世界共通言語で語られた言葉に何人かの兵士が反応する。
皆、それを理解している者たちだ。
『我が国の要求はアルトア王国の解放だけだ。総督府を明け渡し降伏するなら丁重な扱いを約束しよう。1時間待つ。それまでに返答を求む』
ロズールは世界共通語が分からないので、どうするべきか後ろを振り返って見ると敵軍の言葉を聞き取れた者たちが隊長の下に集まって何やら話し始めた。
皆、聞き耳を立てているようで戦場に静けさが戻る。
どうやら内容は降伏勧告のようで捕虜になれば命の保証、そして丁重な扱いを受けることができるらしい。流石の隊長も勇ましいことを言いつつも圧倒的不利な状況であることは理解していたのか、部下数名を連れて総督府の中へと消えていった。
「勝てる訳ねぇよ……ここは降伏一択だろ。常識的に考えて。相手は列強国か何かじゃないのか?」
運命はドゥーリ領アルトア総督の判断に委ねられることとなった。
決断が下されるまで――後1時間。
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