第24話 ガラベルム帝國始動
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(๑•̀ㅂ•́)و✧
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――ガラベルム帝國周辺国家攻略第2艦隊
「間もなく射程に入ります」
ラスタル王国から出撃した艦隊との距離が40kmほどにまで接近したのを確認して通信士が報告する。
戦艦〈ガルバルター〉の兵装だが主砲48cm3連装砲3基9門、15.5cm砲3連装4基12門、12.7cm連装高角砲6基12門、25mm3連装機銃35基105門、25mm単装機銃25基25門、13mm連装機銃2基4門、121cm28連装噴進砲2基56門である。射程は40kmを軽く超える。
「大した速度も出ておらんな。射程の違いを教えてやれ」
ラスタル艦隊は旗艦であろう戦艦を先頭に単縦陣で移動している。
「あちらの砲は10km程度。一気に片をつけましょう」
「よし。主砲発射用意! 敵艦隊の先頭から釣瓶打ちで沈めてやれ!」
艦長であるグレイモスの大声が艦橋内に木霊した。
そこには帝國の持つ艦隊群の中でも2番目の大型戦艦をあずかる風格を漂わせた海の男の姿があった。
―――
ラスタル王国は自然に囲まれた風光明媚な名所を多く持つ観光立国である。
小大陸の南部にユースティアより狭い国土面積を持つ国だが、軍事においてもある程度の力を有している。
近隣のレムリア大陸のムー連邦と過去幾度となく戦争を繰り返し科学技術を発展させてきた歴史がある。近年では少し水をあけられてしまったため軍事衝突はないが、列強国からはそれなりの文明国として扱われていた。そう言われれば聞こえは良いが、はっきり言うと侵略するまでもない国だとも言える。
政治形態は王政で長い歴史を持つためプライドは高い。
また今や列強国の一員とまで言われるムー連邦と一時期まで互角に戦っていた強い自負もあったため、南東に新たに出現した新国家・ガラベルム帝國からの使者に応対した外務卿が横柄な態度を取った挙句、莫大な賄賂を要求、更に散々帝國を貶める発言をしたことで皇帝の激怒を買うことになった。
そして内偵による戦力分析の結果、今回の衝突に至ると言う訳である。
――ラスタル王国艦隊
もくもくと黒煙を吐きながらラスタル王国艦隊が海上を進む。
旗艦である戦艦〈ラスタル〉の艦橋でシルゲフル艦長が叫んだ。
「生意気にもあの蛮族どもも大型の艦艇を持っておったか!」
「外務卿によれば小型船でやってきたとの話でしたが……」
「あんなものは張子の虎よ! このムー連邦にも匹敵する最新鋭艦隊で叩き潰してくれるわ!」
シルゲフルの態度は自信が満ち溢れ艦隊への絶対の信頼があった。
威勢よく副長に語りかける姿は、どこか歴戦の猛者を感じさせる。
乗員たちの士気も高く彼らの表情は誰一人として王国の勝利を疑っている者はいない。
その時、同じく単縦陣で移動していた先頭の巨大戦艦の砲塔が轟音と共に爆発する。
「何だ……? もしかしてもう撃ったのか?」
困惑を隠せないシルゲフルの脳裏にまさかと文字が浮かび上がる。
そして戦艦〈ラスタル〉の至近距離に着弾し大きな水柱が上がり、船体が大きく揺れた。
「何ぃ!? あそこから届くのか!?」
彼の表情が驚愕の色に変わりその目は大きく見開かれていた。
まさに信じられないものを見たと言う顔だ。
「初撃で超至近弾ですぞ!」
副長は今の揺れで頭をぶつけたのか額から血が垂れていた。
艦橋が慌ただしくなり、先程までの余裕が嘘であったかのように動揺が広がっていく。
「ええい。あの距離からは当たらん! 当たるはずがない!」
敵艦の砲塔が動き再度、爆発。
仰角調整がなされ発砲が行われたのだ。
「て、敵艦、発砲!」
動揺の色が見える報告にシルゲフルが叫ぶ。
「陣形を輪形陣に変更! 旗艦を中心に軽巡と駆逐艦を展開させろぉ!」
またまた大きな水柱が上がるが今度は命中弾があったようで通信士が震え声で報告する。
「軽甲巡洋艦〈ラリーム〉被弾! 船体が傾いています!」
「何だあの巨大な穴は……」
それは大口径砲の威力を目の当たりにしたシルゲフルの今日一番の驚愕となる。
「機関出力上げろ! 出力最大! 全速で敵艦隊へと突撃しろ!」
既に最大船速なので船に精神論をぶつけても無意味であるのは言うまでもない。
「18ノット! 限界です!」
まだまだ敵艦隊との距離は縮まらず額からどころか全身から緊張性の汗が噴出していた。
艦長も副長も顔面蒼白になっている。
「有り得ない」それは乗組員全てが思ったことであった。
「戦艦〈ライード〉轟沈! 戦艦〈ラタール〉轟沈! 軽甲巡洋艦〈スローム〉轟沈……」
報告が追いつかず観測士の言葉が止まる。
王国艦隊には運もなかった。
突発的な陣形の変更指示が混乱を生み、一部艦船が密集したことで主砲をまともに喰らったのだ。
「戦艦の装甲を軽く抜いて来るだとぉッ!? 敵戦艦は化物か!?」
本来なら引き返すところだが、シルゲフルは完全に冷静さを欠き副長もまた混乱状態でまともな進言もできずにいた。
距離はまだまだ遠く約20km強はある。
既に頭の中は一矢を報いることだけで埋め尽くされ周りが見えていない。
ただただ速く主砲の射程圏内へ入ることだけを願い続けていた。
――ガラベルム帝國周辺国家攻略第2艦隊
「紙装甲だな……話にならん」
グレイモスは呆れを通り越して虚無の世界へ旅立とうとしていた。
あの程度の国家が帝國を侮辱したのかと考えると出撃時には多少あった怒りなど既に霧散し乾いた嗤いしか出ない。
普段から冷静沈着な彼を怒らせる程のことをしたのにこの程度とは――
「あの戦力で我が国に挑もうなどと無謀にもほどがありますな」
ラスタル王国艦隊内部の混乱とは全く異なり艦橋のあちこちから失笑が漏れている。
「この様子だと列強国とやらもどの程度か分からんな」
ガラベルム帝國は旧世界では覇権国家であり戦争を繰り返して植民地獲得競争を勝ち抜き、同じ列強国であったベイン王国無敵艦隊やテリゲイト帝國重厚艦隊を撃破してきた。勝利に勝利を重ねてきた超大国でありラスタル王国とは文字通り血で血を洗ってきた歴史が違った。
「さっさと終わらせて敵王都へ向かうぞ。この様子では陸軍も大した障害にはならんだろうな」
「王都は港湾都市ですし、艦砲射撃で更地にしてやりましょう。その方が手間もかかりますまい」
笑みを隠し切れずニヤニヤしながら進言する副長にグレイモスは鼻を鳴らすと「それも良いかも知れんな」と呟いたのであった。
――ラスタル王国艦隊
相次いで聞こえてくる報告は全て味方の艦艇が轟沈したと言う内容ばかりであった。その轟沈と言う言葉すらぬるい――消滅と言った方が正しい報告にシルゲフルは絶望を隠し切れない。
既に艦隊は全滅と言える被害を出してしまった。
旗艦である戦艦〈ラスタル〉をわざと狙わずに遊んでいるのではないかと疑念がわくほど次々と周囲の艦艇から沈められていったのだ。
「奴ら……遊んでいるのではあるまいな……」
敵艦隊は旗艦以外を沈めた後、発砲していない。
お陰で距離およそ5kmまで詰め寄ることができた。
絶望していたシルゲフルに希望が灯り、それは怒りへと変わる。
「油断か、驕りか……このまま敵に舐められたままで良いのかッ! 主砲、副砲、照準! 狙うはあの巨大戦艦だ!」
「うおおおおおおおおお!!」
その魂のこもった一喝に艦橋が震える。
激情に支配されたシルゲフルが全身全霊をかけて吠えた。
「100倍返しだ! 撃ってぇぇぇぇぇ!!!」
爆音と共に全砲から砲弾が射出される。
初撃にもかかわらず、そのうち数発が敵戦艦に見事命中した。
煙が敵艦を覆い隠すも装填次第、撃ち続けさせる。
低い命中率でも数撃ちゃ当たるもの。
「射撃やめい!」
煙に包まれていた敵戦艦がじょじょにその全貌を見せる。
「あッあッあッ……」
全ての乗員が言葉を無くしていた。
何故ならそこにはまったくダメージを受けた様子のない敵戦艦の姿があったからだ。
沈黙と絶望が艦橋を支配する。
ゆっくりと動き出す主砲。
そして――響く轟音。
全てがスローモーションのように感じられたに違いない。
凄まじい衝撃が戦艦〈ラスタル〉を襲い、どこからか最後の声が上がる。
「被弾多数! 浸水を確認!」
「(くそう! くそう! くそう!)」
砲弾は〈ラスタル〉の内部の弾薬に引火し炎上爆散、船体は深い海の底へと引きずり込まれていった。
誰一人声を上げることすらできずに……。
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