第23話 南東の転移国家
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この2ヵ月間はユースティアにとって非常に重要な時間であった。
何しろ喫緊の課題である食糧、資源の問題の目途が立っていなかったのだ。
政府関係閣僚、や官僚に限らず研究者、そしてマグナ航空宇宙機構など民間企業も含め忙しなく動いていた。
まず天然資源としてザルツ本島から南西にある無人島付近で油田とガス田が発見された。資源のないユースティアとしては非常に大きな発見であり、資源開発大臣は思わず嬉しい悲鳴を上げたほどらしい。現在、試掘をしているところであるが燃料備蓄が切れるまでには開発・生産ができそうだとの報告が上がっている。
後はマギアニウムが見つかれば良いのだが、今のところ見つかっていないためそれは今後の国交交渉次第であろう。
また政府関係者は異世界と言うこともあり未知の資源の獲得にも意欲を出していた。もちろん発見できてもすぐには実用化できないだろうが新製品の開発や軍事転用と可能性は広がること間違いなしである。
そして重要な案件で言えば衛星の打ち上げだ。
そもそもこの世界が惑星ではなく平面であると判明した時点で人工衛星の打ち上げが可能かの議論が勃発したのだが、出た結論は「やってみなきゃ分からねぇ」であった。
超過密なスケジュールが組まれY-3Jロケットの打ち上げが何度も行われ一応静止軌道があること、それ以外の軌道では太陽や月と同じように東から西へ移動していくことが判明。そもそも赤道自体の存在が疑われたが、無事に気象衛星と通信衛星、GPS衛星の打ち上げに成功した。更には軍事偵察衛星、早期警戒衛星なども成功したことでこの世界の地理についても分かりつつあった。
これからも超過密なスケジュールが埋まっているので職員たちからは嬉しさと悲しさが混じり合った感情が噴出したと言う。
これまでユースティアは多くの国々に外交官を派遣していたが現状、国交を結び通商条約を締結できたのは僅か4か国であった。
オースティン大陸南部のタイラント王国、ユースティア南西約3000kmにある小大陸の国家、オスロー国とイネアス王国、そして南西約7000kmのムー連邦である。とは言え、いずれの国も食糧を輸入できるほどではなく、やはり神に祝福されし豊穣の地、アルトア王国との貿易は必須事項と考えられていた。
偵察衛星と内偵の結果、アルトア王国を占領しているのはドゥーリ共和国と言う北方のゼムリア大陸の国家だと判明している。
幸いにもユースティアはアルトア王国のオリナス王子を匿っており臨時政府を発足、これを承認してドゥーリ共和国のアルトア占領軍に速やかな退去を求めた。
これに激怒したドゥーリ領アルトア総督は、直ちに本国へユースティアへの宣戦を上申。宣戦布告は全会一致で承認され、ドゥーリ共和国は正式にユースティアへ宣戦を布告した。
こうしてユースティアは転移後初の戦争状態へと移行することとなった。
行き過ぎた反戦・平和教育の弊害で国家の危機においても戦うと言う気概すら持つ者が少ないユースティアであったが、政府は国内の混乱を承知でメディアに食糧危機問題をむしろ大袈裟に喧伝させた。その結果、世論は一転して交戦へと傾きここにアルトア出兵が国民の8割に支持されることとなる。
所謂、「念願の食糧を手に入れたぞ!――殺してでも奪い取る!」の精神である。
こうしてアルトア王国の国民にオリナス王子の健在と臨時政府の立ち上げを宣言し、バーグ王国による大量虐殺犯逮捕を待って魔導戦艦1、魔導駆逐艦5、護衛艦1、揚陸艦5の派兵が決定された。
―――
――ガラベルム帝國
ユースティアの南約5000kmの位置に90000㎢ほどの大陸と呼ぶには小さく島と呼ぶには大きな国土を持つ国家、ガラベルム帝國が存在した。
この国はユースティアと同時に転移してきた5つの国家の内の1つであり、帝国主義の非常に好戦的な国家である。とは言え、国家元首である皇帝ガルムⅦ世はこの世界『ゼノ』に転移した当初、周辺国へは融和政策を取る道を選んだ。
何しろ急に変な世界に迷い込んでしまい『ゼノ』の常識や国家の文明レベル、そして調べる内に判明した列強国の存在など何もかもが未知だったからだ。しかし周辺国家の文明度の低さを認識して以降は、旧世界同様に植民地拡大政策を取る方向へ舵を切った。
それを知ったガルムⅦ世は「未開の低文明国家が我が国を蛮族呼ばわりとは……早々にすり潰せ」とまで言い放ったと言う。
最初の標的はユースティアが国交を結んだオスロー国とイネアス王国がある小大陸の南部を領土としていたラスタル王国となった。
爽やかな海風、晴れやかなる太陽の下、ラスタル王国攻略艦隊が北上を続ける。
本国との距離は400kmと言ったところだ。
波しぶきを上げて戦艦1、巡洋艦2、駆逐艦5、空母1、強襲揚陸艦3が順調に進んでいた。
「とんだ過剰戦力ですな」
「まぁそう言うな。異世界での初陣だ。弱敵とは言え我が国を愚弄したのだぞ? しっかり教育してやらねばならんだろう」
戦艦〈ガルバスター〉の艦長グレイモスが副長に告げた。
海軍中将である彼は旧世界で輝かしい戦功を上げ、名だたる勲章を授与されてきたがその軍服には敢えて佩用を控えていた。
質実剛健を是とし身に余る光栄とばかりに、それをひけらかすような真似はしたくなかったのだ。
「しかしまだ気付いておらんのか」
もう既に海に面したラスタル王国の王都ラスタルまでは50kmをきっている。
ちなみにラスタル王国はレーダー技術を持っていない。
この世界にレーダー技術がない訳ではなく神聖ヴァルガリア帝國が開発し輸出している魔導探知レーダーが存在しているものの、あくまで魔力に反応するものなので魔力を持たなかったり弱かったりする対象への探知能力は脆弱だ。
哨戒するのは飛龍の品種改良版である飛龍改で従来の飛龍と比べて飛翔速度、旋回性能などで大きく上回る。
「レーダーに感あり。恐らく哨戒機です」
通信士からの報告にもグレイモスは余裕の表情だ。
と言うか誰もが負けるなどとは微塵も思っていない態度であった。
「あのトカゲもどきか」
「対空戦闘用意しますか?」
「構わん。放っておけ!」
やがて電波通信により連絡が行ったのか、ラスタルから艦隊の出撃が確認される。
「さぁ艦隊決戦だ! 我が国の実力を思い知らせてやれ!」
出撃してきたのは戦艦3、軽甲巡洋艦12、小型駆逐艦20。
空には無数の黒い影がこちらに向かっている。
「艦載機を上げろ。飛龍どもを叩き落としてやれ!」
もうじき戦艦の主砲の射程にも入る。
敵の船は時代遅れの骨董品で技術格差は60年以上は開いていると報告を受けている。
空母から艦載機『64式ガルマキラ』が大空へと飛び立っていく様は壮観だ。
第5編隊25機は向かい来る飛龍100騎、飛龍改50騎と相対することとなる。
64式ガルマキラの編隊が飛龍改と会敵すると編隊長のグリムラが全機に向けて無線を送った。
『テメェら! 身の程知らずの畜生乗りに実弾叩きこんでやれッ!!』
その言葉と共に12.7mm機関銃が火を吹く。
相手の飛龍部隊も負けじと火炎弾を放とうとするが発射までのタメが長い上、飛行速度も旋回能力も上昇力も全てにおいて劣っているため当たるはずがなかった。
「おのれぇ! ちょこまかと」
「何故だ! 何故当たらん!」
「くそう……速すぎだろうが!」
64式ガルマキラの速度は時速640kmにも及ぶ。
対する飛龍や飛龍改は所詮は人を乗せただけの生物であり時速それぞれ260kmと380km程度だ。
機関銃の直撃を受けて次々とまさに蠅の如く海に向かって落ちていく。
「こんなモンかよ、異世界ってヤツはよぉ!」
グリムラはその手ごたえのなさに少し失望するも予想外のことを目にして驚愕した。自慢の12.7mm機関銃が飛龍改の硬い鱗に当たって跳ね返されていた。彼はようやくここで飛龍にも違いがあることに気付いた。
「なるほど……体のでけぇヤツは鱗も硬いってか。そうでなくちゃあなぁ!」
とは言え所詮は生物であり、やり様はいくらでもあった。
すぐに無線で全機に叫ぶ。
『あのでけぇトカゲは鱗が硬い! 乗ってるヤツか鱗に覆われていない腹部を狙え!』
命令に従って各機が速やかに動き出した。
誰も彼も熟練のパイロットで優秀な者たちばかりであり旧世界においても無類の強さを誇った機動部隊である。
空の戦いで負けるはずなどなかった。
善戦しかけるかに思えた戦いもラスタル王国側は圧倒的な格差を覆せず64式ガルマキラが終始圧倒する形で緒戦は終わった。
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