第22話 犯人確保と政変
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(๑•̀ㅂ•́)و✧
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声をかけて来たのは目の前の男――ムノウの方からであった。
国王の居場所を知っているのだろうかとコルツは魔導小銃を向けたまま簡潔に問いかけた。
「バーグ国王はどこにいる?」
するとムノウは我が意を得たりと言う顔になり満面の笑みを見せた。
「すぐにご案内致しましょう。ですが我々の無事を保障して頂きたい」
「抵抗しないなら殺す気はない」
「まさか抵抗など! これが私の誠意ですぞ。おい! こっちに来い!」
怒気を孕んだ声で騎士たちに高圧的な態度を取ると、剣を突きつけられていた女子供がコルツの前へと引き出された。
しかし次に出てきたのは媚びるような猫なで声であった。
「王国の王妃と王子を捕らえております。差し出しますのでいかようにも……」
下卑た笑いにコルツは嫌悪感を抱く。
背後で同じく魔導小銃を構えている隊員たちも言葉は分からずとも彼と同じ気持ちなのか、しかめ面を隠そうともしない。今はそんなことに構っている暇などないためそれを無視して鋭い声で催促の言葉を吐いた。
「速く案内しろ」
「わ、分かり申した」
悪感情を持たれてしまったとは露ほども思わずにムノウの脳裏にある可能性がよぎる。
「(もしやこちらを殲滅しに来たのではないのか? となれば……)」
ムノウはこれ以上勿体ぶるのも危険かと考え直し隠し通路の脱出口に案内するために先導役を買って出る。
コルツが広げた航空写真を見せるとそれを見た者たちから驚きの声が上がった。
王城付近がズームされたカラーの航空写真だったからなのだが、ムノウたちは何と精巧な地図かと目を丸くしている。
「こ、この辺りでございます。王城の南東にある森へと通じておりますのでご案内致します」
上空には輸送へり2機が滞空しているので無線で状況を知らせると全員を引き上げる作業に取り掛かった。
中には音を聞きつけて襲い掛かってくる騎士もいたが魔導小銃で沈黙させられた。また城門の方から駆けつけてくる者たちは魔導戦艦の魔導砲を喰らって吹き飛ばされている。
「ついて来るのはお前だけでいい」
「私のみですか!? この者は国王の王妃と王子でございます。捕らえては如何か?」
「我が国の国民を殺した犯行にかかわっていると言うのか?」
「そ、その通りでございます。犯罪者の一族でございますれば」
ムノウは焦りながらも何とか説得しようと喰らいつく。
国家が滅ぶ時は王家など一族郎党皆殺しになるのがムノウの中での、いや周辺国家の常識であった。
自分も一族なのだがそこは置いておく。
この国を乗っ取るためには邪魔な存在は消しておきたい。
話している内に体にワイヤーと器具を取り付けられてムノウ子飼いの騎士以外がヘリへの搭乗を完了した。コルツは操縦者に位置を教えると輸送ヘリが上昇し教えられた方向へと飛び去った。
やがて南東の森周辺に到着するとムノウが指差し言った。
「あれにございます」
その地点に輸送へりが着陸する。
「よし。6人で降りる。お前もついて来い。残りは周囲を警戒」
コルツと特殊警察部隊のマイコーたちが大地に降り立ち、ムノウの先導で先を急ぐ。
森に入って5分ほど行ったところにそれは存在した。
脱出口は落ち葉や土で偽装されており、ぱっと見では分からないだろう。
王城から約3kmと言ったところか。
「よく造ったもんだな」
しばらく待っても誰も現れないことに焦れたコルツがムノウに魔導小銃を向けて再度問い質す。
「本当にここなんだろうな?」
「ま、間違いございません! ほほほ本当です!」
隠し通路側からも何人か潜入させるべきだったかとも思ったが、敵兵がどれだけいるかも分からない状況で仲間を残していくのは危険だし何よりスピードが求められる作戦だ。
それにムノウが嘘をついている可能性も捨てきれない。だから待ち伏せなどを考慮して犯人逮捕より仲間の命を失わない方を優先したのだ。
胡散臭そうな男だが果たして信じて良かったのかとコルツは自問する。
その時、目の前の地面が開いた。
先頭切って顔を覗かせたのは近衛兵の1人であった。
陸防隊員が木製の蓋を足で蹴飛ばして通路が露わになる。
「手を挙げろ! 抵抗するなら殺す! ゆっくり出て来い」
先頭にいた近衛兵は剣を抜くと雄叫びを上げて襲い掛かってきた。
躊躇うことなく引き金が引かれ1人が倒れ込む。
その後ろにいたのは一目で高位の人物と分かる紫色の上質な衣装を身に着け、立派な顎鬚を生やした壮年の男――バーグ国王であった。
目の前で近衛兵の死を見せつけられたことで動けないのか固まってしまっている。
「バーグ王だな。今見たと思うがこれが火を吹くとお前は死ぬ。死にたくなければゆっくりと出て来い」
バーグ国王は観念したのかガクリと肩を落し青ざめた顔をして出口から出て来る。
出てきたのは2人だけで護衛の近衛兵であった。
マイコーはバーグ国王の目の前に立つとあらかじめ決まっていた言葉を淡々と述べた。
「バーグ王国国王、あなたをユースティア国民、大量虐殺の犯人として緊急逮捕します。逮捕状は後で見せます」
その手に手錠がかけられる。
俯いていた彼が顔を上げると諦念に満ちた表情が驚愕のそれに変わった。
「ム、ムノウ……き、貴様ッ……まさか裏切ったのか!?」
「裏切る? 失礼なことをおっしゃらないで頂きたい。私はこの国のためを思って行動したまででございます」
下種な顔でそう言い放つムノウは自己保身の塊のような男であった。
「お前も犯行に関与していると?」
「いえいえいえ! 私は無関係でございますよ!」
コルツは関係者であれば一緒に連行しようかと考えるが、悪知恵だけは回るムノウはそれを見越して畳み掛ける。
「私がいなくなればこの国は大混乱に陥りますぞ! それどころか国がなくなるやも知れません!」
コルツたちにしてみれば胡散臭い男なのが見え見えなので信用ならないのだが国を滅ぼすための作戦ではない。
あくまで大量虐殺犯の逮捕と遺族へ対する謝罪と賠償のためなのだ。
「ではヘリまで急いで戻る」
そう告げるとすぐに輸送ヘリへと帰還して国王、王妃、王子の3人を乗せて護衛艦へと進路を向けた。
そして任務の達成を無線で連絡する。
『こちら突入部隊。こちら突入部隊。犯人確保。これより帰還す』
これにより作戦は終了し全部隊がバルークを経由した後、護衛艦が魔導戦艦を曳航してユースティアへと帰国したのである。
残されたのはムノウと近衛兵のみ。
そして防御塔や城壁が破壊されボロボロになった王城が残った。
ちなみにバーグ国王はずっとムノウを罵倒し続けていた。
―――
嵐が過ぎ去った王城では――
ムノウが残った兵士たちを前に宣言していた。
「国王陛下と王妃殿下、王子殿下がお隠れになった! 王家の一族は私以外を置いて他におらぬ。故に私が……いや余が新たな国王となることをここに宣言する!」
未知の国に連れて行かれたとなるともう戻っては来ないはず。
そう確信しての宣言であり、血族がムノウの他にいなかったため誰もそれを妨げる者はいなかった。
ちなみにバーグ国王と共に脱出しようとしていた近衛兵は裏で私兵に殺させた。
逆らう者は全て消す。少なくとも第1騎士団長と第2騎士団長は後で謀殺しようと思っていた。後はコクリ戦線で戦っている大将軍フェーン次第だが先に国内をまとめて主導権を握ってしまえば文句は言えないはずである。
国王の個室でムノウは1人高笑いを上げたのであった。
だが彼は理解していなかった。
未知の国ユースティアは自らに科した法を遵守し不正を許さない国家であることを。
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