第21話 王城侵入
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本日は11時、17時の2回更新です。
攻撃時間を合わせるためそれぞれが最適な速度を持って王都ハン・バーグへと進みゆく。特に魔導戦艦〈リーン〉は飛空艇としては船速が速く時速300km以上は出てしまうため、しばらくバルーク上で待機した後、非常にゆっくりとした速度で飛行を開始した。
後数時間もすれば全てが終わっているはずだ。
陸海空の国防隊員は政府がやれと言うならやってみせる。
その暴力装置が我々だと確固たる自負を持っていた。
と同時に一種の憐憫にも似た感情を抱いてもいる。
自国民が虐殺された怒りはもちろんあったが、これから数時間後には圧倒的破壊と国王の逮捕が待っているのを知っているのだから……。
―――
王都ハン・バーグは30mはあろうかと言うかなりの高さを持つ城壁と複数の防御塔からなる城郭都市だ。
列強国家タイカ大帝國に朝貢しているからと言って決して国力が低い訳でもなく周辺国家からの侵攻も幾度となく跳ね除けて来た歴史を持つ。
しかし何代にも渡る度重なる戦いは確実に国力を蝕んでいた。
国民の目を外に向けるためにわざわざ海を越えてアルトア王国へも侵攻した。
気付かぬうちにバーグ王国は追い詰められ死の瀬戸際にいたのだ。
「どうしてこうなった……」
人払いした執務室でバーグ国王は1人呟く。
顔色は優れずいつもの覇気はない。
側に控えるのは軍師ムノウのみがその言葉を拾う。
「陛下、ご心配召されるな。全て私にお任せください。万事うまくきましょう」
そんなに上手くいくはずがないとバーグ国王は心の中で考えていた。
そしてこれまでの自信は王都に大軍を擁していたからこその甘い考えであったことを理解する。
国王の心の内など全く読めずにムノウは余裕の言葉で彼を慰める。
いや、慰めているのではなく心底本気でそう思っているのだ。
「敵が如何に大軍で攻め込んでこようと私が必ずや寡兵で撃ち破って見せましょうぞ!」
「相手は蛮族ではないやも知れぬぞ。それに周囲は敵だらけ……コクリにタイシン、国内の民すら敵になり得る」
「いざとなれば私がタイカ大帝國に赴いて大援軍を連れて参りましょう。そして力で抑え込むのです。バーグ王国ここにありと世界に伝えるのです」
既に大将軍フェーンは軍を率いてコクリ戦線へ出立済みだ。
現在王都に詰めているのは5千の兵と飛龍隊10騎のみで、とても防備が完璧とは言えない。なおも顔色が悪いままの国王にムノウが声をかけようとした瞬間、執務室がノックされ騎士が部屋に入ってきた。
「申し上げます! 王都の南方から巨大な浮き船が近づいてきております!」
「ええい! 取り乱すな! 飛龍隊を直ちに全騎上げるのだ!」
「はッ! 既に王都上空に飛ばしております!」
帰還兵からの証言で巨大な浮き船から攻撃されたとの報告は受けていたが、実際に王都に現れたとなると相手はやはり例の国であろう。
部下からの蛮族だからの一言で信じた自分の馬鹿さ加減を呪う。
そこに次は海軍の制服を着た士官らしき人物が飛び込んでくる。
本人は気付いていないようだが額からは汗が滴り顔色も悪いのが分かる。
「海軍本部から報告! 王都沖約10kmに巨大な灰色の船が出現しました!」
「こんな時に海からもだと!? 既に領海内ではないか! 見張りは何をしていたぁ!!」
ムノウが声を荒げて怒鳴り散らす中、バーグ国王は空と海とを見渡せるバルコニーに出る。
天まで届こうかと思える王城の上階からの眺めは最高だ。
だが今はそんな気分になることなどできない。
まだ距離があっても分かる。
伝令が言った通り、空には巨大な浮き船が、海上には灰色の巨大船がじょじょにその姿を大きくしている。
「臨検はしたのか?」
「いえ、ミミガー司令は魔力通信で攻撃の許可を求む、と……」
ミミガーは会議では何も発言しなかったが、実際に目で見て直感でそれを敵だと判断したと言うことだ。
敵がくるなら戦うのが仕事、そう割り切る無骨な男であった。
しかし残念なことにコクリ戦線と王都防衛に海軍から多くの兵士が引き抜かれており出撃できても100艘が良いところだろう。
「軍師ムノウよ。奴らはやはり未知の国だろう。狙いは何だ? 侵略か? やはり報復か?」
王都上空を飛龍隊が隊列を為して飛行して警戒態勢に入っているのが見える。
攻撃命令を待っているのだ。
「も、もしや国交を結びに来たどこか別の国家なのでは?」
相当焦っているのか、その目は激しく泳いでいた。
再びバーグ国王が外に目を向けると飛龍たちは悠然と空を舞っている。
その雄々しい姿に希望の火が灯った。
「(勝てる。空に飛龍がいる限り我々は負けぬ!)」
バーグ国王はそう確信し攻撃命令を出そうと覚悟を決めた、
――その瞬間
凄まじい爆音。
飛び散る肉片。
少し前まで威風を放っていた飛龍たちは乗っていた竜騎士諸共爆発四散して街へと落下していった。
有視界戦闘並みにまで近づいた戦闘機Y-15から発射された対空魔導誘導弾によって全機落ち落とされたのだ。今頃、パイロットたちは魔導戦艦や飛龍と衝突しなくて良かったと安堵していることだろう。
「「げぇ!?」」
灯ったばかりの希望が無情にもたった今消えた。
同じくムノウも今までの自分の考えが如何に希望的観測に基づいたものであったか気が付いたようで顔面蒼白になっている。
「何と言う魔導……。ムノウよ、お主は勝てると言っておったが何か策はあるのか?」
恐慌状態に陥ったムノウから返ってくる言葉はない。
「最早、降伏する他あるまい……」
諦念のこもった口調でそう呟いたのはバーグ国王だ。
膝から崩れ落ちて動こうともしない。
しかしムノウは未だないほど使ったこともない壊死していそうな頭脳をフル活用して別のことを考えていた。
「(口惜しいがフェーンたちが言っていた未知の国ならば国民を虐殺された怒りでこの国の者は皆殺されてしまうだろう。だがッ! 私は死にたくない! なれば……)」
虚ろな目で外を眺めると至近距離までどこから現れたのか、回転する何かを持った鉄の虫が近づいてきており、少し高度を落として緑色の服を着た兵士を降ろしていた。皆、手に杖のようなものを持っている。
「(何だアレは!? 奴ら、王城に侵入する気か!?)」
ムノウはガバッと顔を上げ、未だ立ち上がることもできないバーグ国王に進言した。
「陛下! 食堂にある隠し通路からお逃げくだされ! 再起を図るのです!」
「むむむ……」
渋るバーグ国王を何とかなだめ立ち上がらせると外に待機していた近衛兵をつけて送り出すように申し付ける。
「王子は私がお連れします。ささ、お早く!」
その顔には悪党のようなどす黒い笑みを浮かべたムノウと伝令の騎士のみが残った。そしてバーグ国王が近衛兵2人を伴って出て行ったのを確認し動き出した。
―――
「よし! 全員降下したな。バーグ王を確保する。場所は内偵からの情報通り執務室だ。行くぞ!」
コルツ一等陸佐を先頭に2個小隊が王城内へと入って行く。
残りの3個小隊はポイントの確保のためその場に残った。
王都に残っている部隊は城壁や城門付近に多く配置されており王城の内部には少ししかいなかった。それにフェーンが援軍としてコクリ国へ向かったのもユースティア軍には有利に働いた。
本作戦には機敏さが求められる。
王城内部の地図を頭に入れているコルツは周囲を確認しながらも大胆に先を急ぐ。
たまに兵士と出会うものの、皆抵抗してくるので魔導小銃で射殺。
剣を置く者は見逃していく。
「ここだ」
ハンドサインを送ると執務室に突入する。
が中は既にもぬけの殻。
「チッいない。次は寝室だッ!」
速やかに部屋を後にして次の目的地へと足を速める。
王城の最上階付近にもなると部屋数も少ないためすぐに国王の個室兼、寝室に到着するがそこには思った通り国王を守護する者、近衛兵がいた。
「おのれッ! どこの者かは知らんがこれ以上は好きにさせんぞ!」
話している言語はバーグ語であるが短期間で簡単な言葉を叩きこまれたコルツには理解できる。
「剣を捨てて地面に伏せろ。降伏すれば命は取らない」
魔導小銃を突きつけ警告するがそれを聞くようでは近衛兵は務まらないようだ。
一斉に剣を抜いて陸防隊に襲い掛かってくる。
「ってぇ!!」
事態は急を要するのでじっくりと話し込んでいる時間などない。
抵抗するなら暴力で答えるのみ。
ダダダッと言う音と共にその銀色に輝く鎧を貫かれて近衛兵たちが地面に倒れ伏す。
躊躇う必要はないとは理解しているが、流石に同情は禁じ得ない。
コルツは敵を憐れに思うがこの国の兵士にユースティア国民が大量に虐殺されたことを知っているし、そもそも自分たちが国を護るために存在する暴力装置だともちゃんと理解していた。
「何だ!? これが魔導かぁ! 待ってくれ! 降伏する! 降伏するからもうやめてくれッ!」
流石のオーバーキル状態に近衛兵たちの心が折れたようで生き残った者たちは皆、剣を捨てて床に伏せた。
この先に続く最奥が国王の部屋だ。
合図を出し扉を蹴り飛ばして開けると中へと突入する。
コルツは警戒しつつ中を確認していくが人の気配すらしない。
「いないぞ! どうなってる!」
降伏した近衛兵に魔導小銃を突きつけて問い詰めるも彼らも部屋の中にいると思っていたらしい。
となれば考えられるのは2つ。
見逃したか、隠し通路があるか。
国王の行方と隠し通路のことを聞くがやはり無駄に終わりコルツは来た道を戻ることにした。外では魔導戦艦から魔導砲が放たれているようで時々地響きのような振動が伝わってくる。
もう1度、見落としが無いか調べながら進んでいると、チョビ髭を生やして法衣の様な物をまとった男が数人の騎士を引き連れて目の前に現れる。
騎士たちは女子供に剣を突きつけており、彼女たちは抵抗できずに今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「止まれ。国王はどこだ。速やかに答えなければ殺す」
何度も当てが外れて若干ドスの利いた言葉になったが、それが通じたのかコルツの前に1人の男が進み出た。
チョビ髭の男だ。
その男はバーグ王国軍師のムノウであった。
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