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【番外編】乙女死にゲー  作者: 勿夏七
恋愛編

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9/9

クロノダとアデル

※過剰な表現は抑えているつもりですが、一応背後注意で

「おい、荷物持ってきたぞ」


 クロノダはアデルの依頼で薬草や魔物の素材などを担いでやってきた。

 私はというと、アデルに呼ばれてやってきたのだが……おもてなしを受けていただけだった。

 

 お茶やお菓子に怪しいものが混入していないことを祈りつつ、今は紅茶を啜る。


「礼を言う」


 木箱に入った素材を一つ一つ確認したあと、アデルは満足そうに頷いた。

 いったい今度は何を作るつもりなのだろう。だが、ここで聞いてしまえば実験に付き合えと言われたり、あるいは無駄に素材の説明から入って日が暮れてしまうだろう。


「クロノダさんは運び屋にでも転職したんですか?」

「ちげぇよ。だがまあ、副業みたいなもんだな。散歩がてらちょうどいい」

「さ、散歩……」


 カジ村とジュ村の距離がどれほどあると思っているんだ。そもそもこの世界は、ワープポイントなしでは移動が困難なほど広大な世界だ。村から村への距離が、徒歩で移動するにはあまりに遠すぎる。

 私がワープポイントの使用に慣れているからか、徒歩でカジ村からジュ村に行こうとも思わない。


「それで? 次は何を作るつもりなんだ?」


 クロノダは私の隣に腰を下ろし、残っていたクッキーに手を伸ばした。

 

「媚薬の改良だ」

「なんでまたそんなものを」

「高く売れるからな。金はいくらあっても困らん」


 こちらに視線を向けることなく、早速薬草をハサミで切り始めたアデル。

 鍋に水を少量入れ、その中に薬草を浮かべていく。火をつけて煮込む。

 甘い香りが部屋を少しずつ浸食していく。

 喉の奥が甘ったるくなる感覚が広がり、飲み干してしまったお茶が恋しくなる。


「……あの、窓開けても、いや帰っていいですか」


 くらくらしてくる強い香りに私は堪らずアデルに問いかけた。しかしアデルは私の言葉を無視を決め込んだ。

 勝手に帰ってやろうかと思っていると、隣のクロノダが熱っぽい息をついた。

 ただため息をついただけだというのに、どうしてこうも色気が滲み出るのだろうか――


「窓開けます! 扉も開けますからね!!」


 先ほど媚薬と言っていたし、きっとよろしくない展開になると思った。だが、そう思うのが遅すぎた。クロノダの熱く硬い腕に捕らえられ、その胸に顔を埋める形になった。


「か、過度の接触は、今は控えてもらえませんかね!?」

「今じゃなきゃ、いいのか?」


 クロノダがよくやる耳元での囁き。あまりにもこの人は自分の武器をわかっている。本当にこの男、浮いた話の一つもなかったなんて嘘じゃないのか。そう疑いたくなるほど、手の内を知り尽くしている。

 息が耳にかかっているだけのはずなのに、熱い息が耳朶を這うような感覚に陥る。


「今以外も! アデルさん助けてください……!」


 頼りになるかと言われると全然だと答えるほどの人だが、今は頼れる人がアデルしかいない。


「ふむ。空気だけでそうなるか。リンは呪いへの抵抗があるから冷静、と」


 私に絡みついてくるクロノダを見ても、アデルは気にせずメモを取っている。

 彼も呪いへの抵抗があることは知っているが、それにしても、この状況での落ち着きようは一体どういうことだ!?


 クロノダから愛の囁きを受け、無遠慮に体を触られ、キスを落とされ――呪いへの抵抗のある私でも、さすがにどうにかなりそうだ。


「そろそろ沈めてやろう」

「鎮める方ですよね?!」


 アデルは私に錠剤を手渡しクロノダを指差した。

 得体の知れないものだが、今はこれに頼る以外ない。私はすぐにクロノダの口に突っ込んだ。


「ちょっ、指舐めないでください!」


 執拗に指を舐め続けるクロノダだったが、次第に錠剤が効いてきたのか目を丸くして私を見つめていた。


「夢じゃなかったのか」

「夢じゃなかったらなんですか」

「抱く」

「うわ……」


 「夢で抱いたって意味ないからな」なんて恐ろしいことを言うクロノダに、私はぞっとした。

 18禁のゲームだったら喰われていてもおかしくない。

 

 静観していたアデルだったが、クロノダから私を引き剥がし、背後から私を抱きしめる。

 いつもはあまり声色が変わらないアデルだったが、今日はかなり低い声で言葉を発した。


「……もしそうなった時は、お前を消すことにしよう」

「ずっと視線だけは鋭いと思ったが……興味がないわけじゃなかったんだな」


 ニヤッと煽るように笑うクロノダ。アデルはそれを不愉快そうに目を細めて見つめていた。

 クロノダは私を一瞥したあとアデルに向かって言った。

 

「いろいろと、やりたいことはあるんだろ? だから媚薬改良とか言いつつ、こいつをわざわざ呼んで作って――本当は自分に気が向けば良かった……とか」


 少し前まで火照っていたはずのクロノダは、今はアデルを見て楽しそうにしている。

 苛立っているようにも見えた。きっと媚薬に負けたことが嫌だったのだろう。


「だったらなんだ。その媚薬で発情していた奴に言われたくないな」

「俺はリンの前だと万年発情期なんでね」


 どこ吹く風といった様子のクロノダだったが……いや、待って。さらっと言ったけどかなり怖いこと言ってる。


「……ほう、それは辛いだろう。それを鎮める薬でも開発してやる」

「必要ねぇよ。……なあ?」

「私に同意を求めるのはやめてほしいです」

「否定しないってことは必要ないということだな? 心配しなくても恥ずかしがり屋なお前のためにも、今度部屋に行ってやるよ」

「助けてアデルさん」

「先にワタシが連れ去ってやる」


 髪にキスを落とされ、優しい声に表情に困惑してしまう。

 

「ええ?」

 

 しばらく不穏な二人の視線と、私に向けられる甘い視線に挟まれ、頭がおかしくなりそうだった。

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