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【番外編】乙女死にゲー  作者: 勿夏七
没話、こぼれ話
3/7

49.血での解呪

R15のつもりで書いていましたが、もしかして46話と49話の刺激強いからコンテストで落とされてるんじゃ?という指摘をいただいたのでこちらに移動。(通報とか運営からの指摘もないのでたぶんギリセーフ?)

本編は該当するであろう場所を削りました。載せるのもダメと言われたら消します。

 イナトとルーパルドは急用ができてしまったと朝から2人して出かけてしまった。

 なので今は箱でロクと2人きり。相変わらず私が近くにいると背後から抱きしめてくる。

 

 昨日のうちにロクには解呪魔法が手に入らなかったことを話している。

 ロクは気にしていない風だったが、私が側にいれば、絶対と言っていいほど抱きしめにくる。

 痛みや苦しみを和らげる行為とは言え、少々抱き締める時間も頻度も高すぎるのではないだろうか。

 そう思うものの、行為を拒否するわけにも痛みに苦しんでいる姿を放置するわけにもいかない。

 

 1度私の部屋へロクが侵入し襲われそうになった事件があったが、それはあの1回きりだ。

 どうしているのかと聞けば、夜は事情を知っているルーパルドに自分の部屋を全て施錠してもらっているのだとか。

 もし解除されればルーパルドがわかるようになっている仕組みだという。


「私が知らない間、そんなことしてたんだ……」

「あの金髪の男に追い出されるのはごめんだからな」


 私から追い出されるのならまだしも、別の人に追い出されるのは不本意なのだそう。

 まぁ、私が雇い主だしな……。


「1つ聞いていいか?」

「いいよ。1つと言わず何個でもどうぞ」

「あの男の呪いはお前が解呪したんだろ?」

「……え? いや、してないしてない。魔法は手に入らなかったって言ったよね?」

「だが、あいつの呪いは消えた。あいつの呪いが消えたのは、お前の部屋で何かしらしたからだろう?」


 繰り返し言うが、今は2人きりだ。暴露して私の唾液を提供して終わらせることだってできる。

 だが、私のモラルが邪魔をするのだ。きっとゲーム画面であればここで躊躇わず行為に及んだだろう。

 魔法がなくたってこれで治るんだから、と。


「そ、そうだ。ご飯作ろう。私のご飯を食べればもしかしたら呪いが薄れるかもしれないし――痛っ」


 ロクから離れ、台所に立ち、適当な食材をまな板に置き、包丁をつかむ。

 動揺した私は包丁で指を切ってしまう。まず消毒も兼ねて舐めようとズボラな私は指を口へと運ぶ。

 だが、その指はロクの口へと含まれることになった。

 指を引き抜こうと腕を動かすが、がっちりとロクに手首を掴まれていてびくともしない。


「ロク! 汚いから離して」

「治療だ」


 指に吸い付き、舌が這う。指に意識が嫌でも集中してしまい、体が火照ってきてしまう。

 鼓動が早まり息苦しい。そんな私の様子を見て、ロクは少しだけ口角をあげた。指を這っていた舌は関係のない指や手のひらまでも舐め始める。

 その途端湧き上がる、恥ずかしいのに嫌じゃない気持ち――その感情が私から出ていることに不快感を与えてくれた。

 ロクの胸を強く押し、なんとかロクから離れ昂ぶった熱を冷ます。


「血でもいいのか」


 口の端についた血を舐め取る。

 ロクはステータス画面を覗くことができないので、体が軽くなったからかそう口にしたのだろう。

 私もステータス画面を開いてみる。するとそこには薄くなっている呪いの文字があった。ロクの首も念のため確認したが、痣も心なしか薄くなっているようだ。

 もう少し血か唾液を与えれば、完全に消え去るのだろうか。


 ロクは離れていった私を追いつめるように大股で距離を詰める。

 すぐに逃げようとしたが、腰を抜かしてしまったのか思うように足が動かない。右足を出したら左足に引っ掛けそのままよろめく。地面に叩きつけられると思い咄嗟に目を瞑ったが、ロクが下敷きになってくれたおかげで痛みを感じることはなかった。


「ありがとうすぐどきます」


 ロクへ馬乗りになってしまった私は慌てて立ち上がろうとしたが、ロクに抱き寄せられ胸へとダイブ。

 鍛えられた胸筋は私の顔面に苦痛を与えてくれる。顔を上げロクを睨んだが、ロクは口角をあげるだけ。


「感謝してるならお礼、くれよ」


 何をあげればいいのかと聞く前にロクは首元に歯を突き立てた。痛みで声が漏れると、ロクは喉で笑う。


「えっろ」


 そんな声を出した覚えはないと口にしようとしても痛みでそんなことを言っている余裕はない。

 執拗に首元を吸ったり舐めたりしていることから、血が出ているのだろう。

 だからってわざわざ新しい傷を作らなくたっていいじゃないか。と思うと同時に、吸血鬼かよともツッコミを入れたくなる。いろんな言葉が浮かんでは沈む。

 もちろんどの言葉も口に出せるほど余裕はないのだが。


 

 ――やっと離してもらえた時には服や髪は乱れ放題。こんな姿をイナトに見られたら、一発でロクを追放するだろう。

 

 ロクは満足したのか、呪いが完全に解けたのかいつもよりスッキリした表情に見えた。

 仮にこれで呪いが解けたとして、イナトやルーパルドにはなんと説明すればいいのか。

 ルーパルドに関しては、呪いの解き方を身を以て体験している。

 呪いが解けていることが知られれば、誰とでもキスする女というレッテルが貼られることだろう。


 念のため改めて呪いの状態を確認すると、状態異常の欄にあった呪いの文字はすっかり消えていた。

 呪いが解けたことは喜ばしいことだが、どう伝えればいいのか悩むところだ。

 首にはロクの噛み跡が残っているだろうし――。


「そうだ、傷は回復魔法で治そう。回復薬と違って傷口も瞬時に跡形もなく消えるし」


 いそいそと回復魔法を唱え首に指を当てる。

 痛みと、ロクが噛んだという記憶のせいか体がビクッと跳ねてしまったが気にせず治療を終わらせる。


「見せつければよかったのに」

「……もう呪い解けてるんだから引っ付かないでね」


 当たり前のように抱きしめようとするロクから距離を取った。

 心臓が何個あっても足りない。

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