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いたずらシール

作者: 逆福

会社と家を往復する日々をおくっていたある日のこと。電車で運よく席が空いたので座っていると、日々の疲れからうとうとと半分寝たような状態になっていた。かすかに降りる駅の名前を聞いた気がしてハッと目を話開けると丁度駅につくというタイミングだった。乗り過ごしたかと少しばかりの焦りを感じたが大丈夫だった為ほっとした気分になった、ふと目線を下げると膝に抱えていたカバンにに何かついている。よく見てみると子供向けのシールが何故かカバンに貼ってある、自分でこんなものをつける事はないので寝ぼけている間にイタズラでもされたのだろうとすませる事にした。そんな事を考えていると降りる駅についた、シールを剥がす時間はなさそうであったので家に帰ってから剥がす事にした。


しばらくたったある日、仕事で残業したせいで終電ギリギリという時間に帰る事になった。時間が遅いせいか電車に乗る客はまばらであり、席には余裕があったので座っていたが疲れからかまた意識半分飛んでいた。少し経って、このままでは寝過ごしてしまうとどうにか意識を覚醒させてスマホでも見ていようと視線を下げると、カバンにまたシールが貼ってあった。寝ぼけていたとはいえ前回よりは短い時間であり、また辺りを見回しても子供がいるようには見えなかった。まさか子供ではなく変質者かと考えたがそもそもそんなに近くに人がいるような状況でもなかった。何か害がある訳では理解できない状況に寒気を感じ家の最寄り駅で降りると足早に帰宅するのであった。


前日の出来事があったせいでかなり寝つきが悪かったものの疲れには勝てずにいつの間にか寝てしまっていた。目が覚めてすぐに時間を確認し遅刻だと冷や汗をかいたが、休日であった事をすぐに思い出しゆっくりと起き上がる事にした。ふとカバンについたシールを剥がすのを忘れていたと気づき嫌な気分になりがらもカバンを手にした。最初に貼られていた時はただのいたずらかと思ってさっと剥がしていたが二度目とあって少ししっかり確認してみる事にした。ファンシーな見た目からただ子供向けのシールだと思っていたがよくよく見てみると年代が古く自分が子供の時に流行っていたようなものであった。


電車に乗って自宅と会社の間にある駅に来ていた、自分が小さい時に住んでいた地域である。記憶を頼りにある場所に向かうとそこには昔と変わらない小さい時の友人の家があった。呼び鈴を押して名乗ると友人の母親が出てきて家にあげてもらえた。案内されたのは友人の仏壇の前であった。


貼られていたシールを見て小さい時の友人を思い出していた。その友人はいたずらが好きでよく私の背中にシールを貼り付けていた。とても仲が良かったが家の都合で引っ越す事になりそれから交流する事はなかったのである。思い出せる事がそれくらいしかなくシールが貼られたであろうタイミングも昔住んでいた場所の駅ではあったため不安を払拭する為に友人の家を尋ねてみたのだった。


友人は私が引っ越してから暫くして事故で亡くなっていた。私の両親は知っていたようであるが小さい私にはショックが大きいだろうと伝えなかったようである。何もなければいいとここまで来たが、友人の仏壇を前にして何も考えられずにいた。ふと仏壇に備えてあるものを見ると、カバンに貼ってあったシールの台紙が飾ってあった。台紙には二つほど空きがあり、貼ってあったシールが見当たらない事からこの台紙にあったものだろうと思った。


家に帰ってきてシールが貼られていたカバンを用意し。友人の母親に了承を得て貰ったシールの台紙を出した。亡くなった友人が少しでも浮かばれるよう、友人を忘れないようにとカバンにシールを貼っておこうと思ったのである。さすがに見える場所に貼るのは恥ずかしかったので人目にはつきづらい場所に貼ってみた。これできっと大丈夫だろうと私は一人納得するのであった。


「これでずっと一緒だね」



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