021_行列のできる魔法少女。
高い高い高い建物の上、物見櫓的なシルエットのビルディング、街中にあるのに人気がない、幽霊みたいな建物、存在感が無い、現実感がない、なぜか誰でも中に入ることができる、鍵すらかかっていない、屋上へと続く階段、薄暗い、陽がまだ出ている時間、青いそら虹まで見える、なのに奇妙なくらいに、風の音が聞こえる、夏の終わりになるはずのそれが、熱を止めて、打ち返すかのように、モヤけるそれが、けぶたいそれが、くるりくるりと回ってたゆたゆ、人肌にも似たそれが、ゆらりと、灰色のコンクリートを撫でていく、ざらりという音がする、足音、複数、多数、有数、無数、軍靴の音のようなそうでないような、ある意味戦闘色に染められた、社会へと踏み出すための生活靴、踵の高い靴、低い靴、走りやすい靴歩きやすい靴革靴、ピカピカ光靴、くすんだ色の靴、ちょっとそこまでなサンダルみたいなやつなぜかカランコロンと軽妙奇妙な下駄の音が混じる、人影がある。老いも若きも古きも新しきも、身につけている衣装は、着物洋服和洋中どこぞの民族衣装もかくや、世界最大のスポーツの祭典、その入場式にも似た、多種多様な装いで、列を成して、ビルディングの外から中へ、そのまま屋上へと歩き続けるものども。その表情はにこやかに、虚で、薄い化粧に彩られ、どこまでも見えている瞳をどこも見ずに、ただただ、無言で進む行列、先頭はすでに、屋上の端に到達し、
気軽な散歩道へと踏み出すように、宙へと進む、
当然落ちる、引力がある世界であるもの、
知ってる?
引力ってね、りんごが落ちることなんだよ?
昔の偉い学者さんが言ってたんだって。
みかんじゃダメなのかな?
人でも良いよね、なので、人は落ちます、高いビルの屋上から、こう、ヒューンと。
私はそれを綺麗に受け止めるのです、上から下へ受け流す感じで、結構慣れてきたよ、もう一昼夜やってるから、うん暇なのかな?
そのままビルのそばの地面へと送り届けると、スタスタと、また、歩き始めるんだよね、こう、列の後ろを目指して、で、もう一回ビルに入って言って、屋上まで歩いて、気軽に空中へと、歩き出すという、もちろん、そのまま落ちるよ?
当然じゃない、物理法則舐めるなよ?
なんであの子たち、落ち続けるのかというと、なにか死にたいらしい?
嫌なことが待っているからそれから逃げるために、自動的にそうなったらしい?
長い休みが終わって、苦しい現実が待っていることになんとなく耐えられなくて、なんとなく、飛び降りたくなってるみたい。
そうやって、現実から消えちゃうと色々困るんだって、魔法少女界隈的には、なので、こうやって、満足するまで延々と、飛び降りてもらっているんだよね。
そのうちに満足して帰るのかな?