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7. ジルの狩り



夕食の時間はものすごく楽しい時間になった。

お肉たっぷりのいつもより豪華な食事に、ロザリーが話してくれる色んな街の街並みや食べ物の違いに、旅の途中で起こった出来事。

知らないことばかりでわくわくしたし、ララもとっても楽しそうにしていた。


でも楽しい気持ちの反面、焦燥感が沸き上がってくる。

いつかララの病気を治して色んな場所へ連れていってあげたい、そのためにはお金を稼がないといけないだろう。

でもララを置いて出稼ぎに行く事は出来ないし、僕の狩りの腕では多く狩れないため、鞣した革も食糧に交換する分しかない。


そういえば、と途中で思い出し、今日の森での狩りの話をした。

何故あんなに短時間で獲物が獲れるのか、弓を使ってないようだったがどうやって狩ったのか、僕にも出来るようになるか。

矢継ぎ早に質問してしまった僕に、ロザリーは曖昧に笑って返すだけだった。

それでも諦めきれず、僕に狩りを教えて貰えないかと頼むと、少し悩んだ後ロザリーが頷いた。


「なら、明日一緒に森に行きましょう。」



◇◇◇



翌朝、いつもの日課をこなしてからロザリーと一緒に森に行く。

ロザリーが一緒に留守番してくれると思ってたララが少し拗ねていたけど、今日だけだからとロザリーになだめられていた。


(今日だけなのか……そんなに簡単に覚えられる狩り方なのかな?)


そんな事を内心考えていたら、森の中に入ってからロザリーが言った。


「じゃあ、今からジルの狩りを見せて貰うわ。」


「え、ロザリーの狩りの仕方を教えてくれるんじゃないの?」


「私の狩りの仕方はちょっと特殊で、簡単に人に教えてあげられるものじゃないの。

だからジルの普段の狩りの様子を見せて貰って、まずは何が悪いのか原因を知った方が良いんじゃないかと思うの。」


「そっか……。」


ロザリーの言うことはもっともだ。

父さんに狩りの仕方は一通り教えて貰ったが、どうにも腕は上がらなかった。

一番は弓の扱いが下手なのが原因だとは思うのだが……どう改善すれば良いのかはさっぱりわからなかった。

きっとロザリーの狩り方はとても難しくて、教えたところで僕には出来ないと思われたんだろう。


少し落ち込みながらも、せっかく一緒に森まで来て悪い所を教えてくれると言うのだから、精一杯やらなきゃと気持ちを切り替える。


最初はいつも通り罠の確認をしようと思ったのだが、ロザリーに止められた。


「今日は罠の確認は良いわ。

ジルが直接狩りをするところが見たいの。」


「うん、わかった。」


罠も立派な一つの狩りの方法だと思うが、そういう事ではないらしい。

呼吸を整え気持ちを落ち着かせる。

風の流れ、草木の匂い、鳥や虫の鳴き声、動物の気配。

わずかな変化も見逃さないように、意識を集中させていく。


……あっちだな。

微かに葉の擦れる音と何かが動く気配がした。

息を潜め足音を消し、そちらに近付いていく。

そこには一羽の綿雪兎がいた。


(よし、弓を構えて……)


ギリッ………シュッ!


放たれた矢は見事に、兎を飛び越えて向こうの茂みに消えていく。

矢が通りすぎた音に驚いた兎も慌てて茂みの向こうへ隠れてしまった。


「あぁあ~、やっぱりダメかぁ。」


いつもこうだ。

獲物を見つける事は出来るし、獲物に気付かれず近付く事も出来る。

でも、肝心の矢が当たらない。


「やっぱり……ね。」


ロザリーが何かを呟いたが、矢を外して集中を切らしていた僕には聞き取れなかった。

その後も何回か獲物は見つけたが、毎回矢を外して逃げられた。

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