5. お宅訪問
「えー!
じゃぁ今日から家に泊まるの? うれしいっ!」
思った通り、ララはロザリーを紹介するととても喜んだ。
興奮し過ぎたのか、勢い良く喋った後しばらく咳がとまらなくなって焦ったが、今は落ち着いて2人で仲良くお話している。
◇◇◇
家に着いた時ララはまだ寝ていたので、ロザリーには軽く家の中を案内する。
案内と言っても小さな寝室2つとキッチンと繋がったリビング、お風呂とトイレくらいしかないのですぐに終わった。
ララが寝ている寝室は後でララが起きてから案内する事にして、もう1つの寝室に案内して荷物を置いて貰う。
元々は両親の寝室だったが、今はベッドが1つ残っているだけで使っていなかった。
夜中にララの体調が悪くなったりした時対応出来るように、僕はララと一緒の部屋で寝ている。
荷物を置いて貰った後はロザリーをリビングに案内して、お茶を飲みながら寛いで貰う。
その間に僕は綿雪兎を捌いて夕食の下拵えを始める。
物音で目が覚めたのか、ララが小さく僕を呼んだ声が聞こえた。
すぐに寝室に向かうと、ベッドサイドにあるイスに座ってララに話しかける。
「ただいま。 調子はどうだい?」
「おかえりなさいお兄ちゃん。
うーん、いつも通りだよ。」
ベッドサイドのテーブルを見ると、お昼ご飯代わりに切って置いておいた果物がまだ残っていた。
今日はずっと寝ていたらしい。
「そっか。 実はね、今日はお客様が来てるんだ。
ララに紹介したいんだけど、部屋に入って貰っても良いかな?」
「え? お客様?
お兄ちゃんお友達いたの?」
失礼な、と思ったが、事実僕には友達がいない。
反論はせず、ロザリーを呼んできてララに紹介する。
「ララ、この人はロザリーさんだよ。
旅をしてる途中で疲れて森の中で休んでたところを見かけて、うちで休んで貰うことにしたんだ。
ロザリー、この子は妹のララ。
今年で8歳になるんだ。」
2人は互いに挨拶をすると、すぐに打ち解けたようで楽しそうに話し始めた。
ロザリーがしばらく滞在することがわかると、ララは嬉しそうにはしゃいでいた。
「よし、僕は今から夕食の準備をするけど、ロザリーはどうする? リビングに戻る?」
「ううん、もう少しララちゃんとお話してるわ。」
「わかった、じゃあ用意が出来たら呼ぶね。」
疲れてるのに休んでなくて良いのかな、と少し心配になったが、ララがとても楽しそうにしてたのでありがたく任せる事にした。
夕食を作りながらこれからの事を考える。
ロザリーがいつまでこの家にいるつもりかはわからないが、ジルとしてはいつまでいて貰っても構わなかったので特に聞くことはしなかった。
捌いて香草をまぶしておいた肉を竈に入れながら、ロザリーがいれば毎日お肉が食べられるんじゃないか……などと現金な事を考えた。
でもずっといられる訳がないことはわかっている。
(ここにいる間に、狩りの仕方を教えて貰えないかな……。)
父さんも結構優秀な狩人だったと思うが、あんな短時間で獲物が獲れることなどよっぽど無かった。
獲れたとして、運が良い時にたまたま出会い頭で1羽といったところだ。
それをものの数分で2羽なんて、なにかすごいコツがあるのかもしれない。
捌いてみたところ、矢で射た跡もなかった。
弓が苦手な自分にも出来る方法だと良いな、とちょっと期待しながら、食事の時に聞いてみる事にした。