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2. ジルの家族

作中に病名が出てきますが、創作です。

成長ホルモン分泌不全症と名前が似ていますが別物とお考えください。



僕の名前はジル。今年で14歳になる。

バルドレ王国の北部にある、ジャコブ村という小さな村で産まれた。

この国では、村の名前は最初にその土地を開墾し村長になった人の名前がつけられるので、この村を作った人はジャコブさんという人だってことだ。

村の中心には井戸があり、そこから広がるように70軒ほど家が建っている。

その一番端の方、森の入り口近くにある緑の屋根の小さな木造りの家が僕の家だ。

両親はすでに他界していて、妹のララと二人で暮らしている。


母さんはララが産まれてから間もなくして亡くなった。

出産の時、ララが中々出てこなくていっぱい出血してしまったらしい。

本来なら赤ちゃんは頭から出てくるのだけど、ララは頭が上にある逆子というやつだったそうだ。

村のおばさん達が色々手伝ってくれてなんとか出産出来たけど、その後体調が回復せずに一週間後息を引き取った。


父さんは狩人だった。

母さんが亡くなってからは一人で母さんの分まで僕達を大切に育ててくれた。

さすがにお乳はあげられないので、母さんの幼なじみで同じ頃に子供を産んだアネットおばさんにララの乳母を頼み、そのお礼にと捕れた獲物をいつも半分アネットおばさんに渡していた。


ララは産まれた時から身体が小さかったけど、時が経つにつれて明らかな異変を感じるようになった。

1歳になる頃、同じ時期に産まれたはずのアネットおばさんの子供よりふた回り程も小さく、まだお座りも出来なかった。

赤ちゃんらしいふっくらした白い肌とは程遠い黒ずんでかさついた肌は、小さな身体をより際立たせていた。

医者に診せようと思ってもこんな田舎の村に医者などおらず、百キロ以上離れた街まで小さいララを連れて行くことも出来なかった。


父さんは街まで医者を呼びに行って村に来て貰おうと考えたが、徒歩で行くと往復で一週間程かかる。

その間僕に留守を任せるために、生活に必要な事を僕に教え込んだ。

料理洗濯にお風呂の沸かし方、家の脇で野菜を育てている小さな畑の手入れやララのお世話。

さすがに狩りはすぐに覚えられるものではなかったので、帰ってきたら教えてくれると約束をし、出発前に父さんが狩った鳥を捌いて置いていってくれた。

冬だったので、塩漬けして布で包んでおけば数日はもつだろうと。


慣れない家事などに苦戦しながらもなんとか過ごしている内に一週間が経ち、父さんが帰ってきた。

お医者様はすぐには来られないので、予定を調整してから来てくれるとの事だ。


そして二ヶ月後、ララを診に来てくれたお医者様から告げられたのは、成長不全症という病名だった。

詳しい原因はわからないが、身体の様々な器官の働きが弱く栄養も上手く取り込めないので、成長が遅く肌や髪の毛も乾燥しやすいのだそうだ。

幸いすぐに死に至る病気ではないが、病気や怪我などをすると重症化しやすいので、家の中で安静にして食事は消化の良いスープなどを食べるのが一般的だそうだ。

治療法はまだ見つかっておらず、王都にある様々な病気の研究をしている機関で今も研究が続けられているとの事だった。


それから父さんは、いつか研究が進んで治療法が見つかったときにララの治療が出来るようにと出稼ぎに行くようになった。

農繁期の手伝いなど短期の仕事を貰いしばらく家をあける事も増えたが、家にいる時は僕に狩りを教えてくれた。

父さんと僕が狩りに行っている間は、アネットおばさんがララを見てくれていた。

少しでもお金を貯めようと、狩りで手に入れた皮はなめして街に売りに行くようになったので、僕も教えて貰いながらララのために頑張って手伝った。

だが、父さんは革を売りに街に行ったある日の帰りの道中、盗賊に襲われて殺されてしまった。


僕が10歳の時だった。


両親を失ってしまった僕達をアネットおばさんはとても心配してよく様子を見に来てくれていたが、一緒に連れてこられていた娘のカリーヌはあまりララを好きではないようだった。

そしてある日、アネットおばさんがご飯を作って持ってきてくれた時、カリーヌは言った。


「なんでララちゃんってそんなにちいさくてほそいの? はだもきたなくてなんかきもちわるい。」


ララは何も言わず僅かに俯いただけだったが、その肩は微かに震えていた。

アネットおばさんはカリーヌに「なんてことを言うの!?」と叱った後、泣きそうな顔で

「ごめんね……」

と一言呟くと、カリーヌを連れて足早に帰っていき、それからおばさん達が家に来ることはなくなったのだった。



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