相談 〜漫才風〜
「実は、おまえに相談があるんだけど」
「おう、どうしたんだよ。急に」
「ほら、俺、先月に健康診断受けたじゃん」
「ああ、俺も先月受けたけど、なに? おまえ、どこかひっかかったの? で、どこが悪かったんだ?」
「どこも異常はなかった。むしろオールAで問題はまるでなし」
「健康そのものじゃねえか。そいつは良かったな!」
「健康診断の結果は、良かったんだよ。相談はそれじゃなくて」
「じゃあどうしたんだよ」
「いや、あの健康診断のときに来てた、医療機関の職員に女性が何人かいただろ」
「あー、たしか何人かいたかも。でも、あんまり覚えてないかな。で、それがどうかしたのか」
「その中に、20代くらいの女の人がひとりいたのは覚えてるか?」
「ああ、たしか20代くらいの可愛い子いたな。あれ、え、もしかしておまえ」
「いやあ、まあ……」
「なんだ、恋愛相談か。まあ、俺でよければ聞いてやるよ。で、おまえ、その子の電話番号くらいは聞いたのか?」
「あ、えーと、その子とはもう付き合ってて」
「付き合ってるのかよ。そいつは良かったな!」
「ただ……」
「なんだよ、付き合ってるなら相談も何もねえだろ」
「いや、これは絶対におまえに相談したいことだから」
「な、なんだよ。俺にしか相談できないことって」
「いや、今話した通り、俺って今のところ問題ない人生を歩んでるじゃん。しかも、最近は特に順風満帆な感じなわけよ」
「ま、まあ、今の話の中ではそうなんじゃん。てか、なんか棘のある言い方だな」
「でさ、さっき人事に呼ばれて、俺、来月から正社員として本社に栄転なるらしいんだわ」
「正社員登用なんてすげえな。良かったな!」
「そう、で、ついでに小耳に挟んだ情報だと、おまえは契約解除になるらしいよ」
「え……」
「まあ、噂程度でしかないんだけど」
「いやいやいや! 今日一のビックリだよ、それ! え、なに、それ、どこ情報?」
「で、さ。その、相談なんだけど」
「いや、ちょっと、勝手に先に進めないで! それ、どこ情報か教えて。ねえ、ほんとに俺、来月契約解除されるの?」
「さあ……」
「さあ……って、え、ちょっと待って」
「チッ! うるせえな」
「え、今、チッって言った?」
「いや、言ってない。言ってない」
「いや、言った。絶対、言った」
「言ってないって、とにかく、ちょっと落ち着けって」
「うるせえって絶対に言ってた」
「あー、もう! そういうとこ! おまえのそういうところが、原因なんだよ!」
「そういうとこって、どういうことだよ」
「そういうとこは、そういうとこだよ」
「いや、それ答えになってないじゃん」
「大人はいちいち答えを教えたりしないんだよ」
「なんで、急に上から目線なんだよ」
「まあ、とりあえず噂は噂として、あとで人事に確認したら良いじゃん」
「まあ、そりゃ、そうかもしれないけど……」
「で、その相談なんだけど」
「なんだよ」
「いやあ、俺さあ、先週買った宝くじの100万円が当たっちゃたんだよね。どうしたら良いと思う」
「それ、ただの自慢話じゃねえか!」