4話「男たち現る」
そんなある日のこと。
夕暮れ時、もう少ししたら店が終わるというような時間帯に、赤ら顔の男数人が突然やって来た。
「お~い、ここが癒やし屋かぁ~?」
「ネーチャンが癒やしてくれんのかぁ~? うひひ」
「そこそこ可愛いじゃねーか」
「絶世の美女じゃねえところもほどよくてたまらんな」
最初は新規のお客さんかとも思ったのだが、どうやら違っていたようで。
「あんた、オフェリアさんか?」
「はい」
「今日はサァ、この店を潰しに来たんだよなぁ~」
「何ですか?」
「言った通りだよ。潰したいんだ。てかこの店、閉めてくれね?」
いきなりのお願いに戸惑う。
でもよく分からない男に言われて店を閉める気なんてさらさらない。
そんなことをしたら困る人が出るから。
「それはできません」
はっきりと答えた。
すると、男たちの中の一人、一番私に近い位置にいる人が急に右手首を掴んでくる。
「生意気もいい加減にしろよ!?」
「っ……!」
そのまま乱暴に手首を引っ張られ、転倒してしまう。
即座に立ち上がれない。そのうちに取り囲まれてしまって。まるで山に囲まれているかのよう。複数人でこうしてぴっちり囲まれてしまっては、隙間から抜け出すこともできない。攻撃系の能力でも使えたなら少しは抵抗できたかもしれないが、私の能力ではそういうことはできないし。
「従ってくれないならサァ、酷いことすることになっちゃうけど……い~いの~かなぁ~?」
「女は大人しく言いなりになってろよ」
「いいから店閉めろ、いいな?」
「従うならもうこれ以上何もしないからさぁ。俺らだって乱暴なことはしたくないわけよ」
――その時。
「ちょっと! 何してるんですか!」
声がして、そちらへ目をやると。
そこにはラヴィールが立っていた。
片腕をこちらに向かって伸ばして、何かを放とうとしているかのような様子――と思っていたら、数秒後に衝撃波のようなものが飛んできた。
「ぐへっ」
「ぎゃ!」
「ぐぼふ」
「ふぼべし!」
男たちはその衝撃波を身に受けて倒れ込んでしまった。
その隙にこちらへ駆けてくるラヴィール。
「オフェリアさん、大丈夫ですかー?」
「……はい」
「お怪我は?」
「ありません」
「なら良かった」
そう言って、彼は笑みを浮かべた。
助かった……。
彼が来てくれなければ危なかった。
運が良かった……。
そしてまずは彼に大きな感謝を。
彼はそっと手を差し出してくれた。私はやっとの思いでそれを掴む。怖さがまだ胸に残っているみたいだ。でも、それでも、彼の手を掴むことくらいはできた。
それからラヴィールは倒れている男たちに対して「あなたたち、何のつもりですか!」と問いに似た言葉を放つ。すると男らは床に伸びたまま「コルセリア様の命令でぇ~……自分らの意思じゃなかったんですよ~……」とか「殺しゃないで……」とか言っていて。その様は憐れなほど弱々しく、まるで赤子のようであった。