秋の風鈴
秋の虫の声は、嫌いじゃないです。
かん高い声の硝子玉のあいつとは
ちがう風に奏でられてんだ
だみ声した羽音だと言われちゃあ
それもしかたのねえことだろうぜ
夏に吹く風が運ぶのは 涼
汗がひたいにはりつけた 前髪をはがしてく
あぁ こいつはありがてえ
気怠い8月の夕涼み
鈴の音が嗄れるなら
渇いたかすれ声は 夏の口から
麦茶を飲み干したら ひとっ風呂 浴びてこい
夜風にかわったころにゃ またべつの
風情を楽しめることだろうさ
すきとおった硝子玉のあいつとは
ちがう風をつかまえてんだ
耳障りな羽音だと呼ばれちゃあ
それもしかたのねえことだろうぜ
秋に吹く風が運ぶのは 哀
涙がほおにはりつけた うしろ髪をはがせずに
あぁ こいつはやっかいだ
物憂げ9月は いと哀れ
鈴の音が愁うなら
むせび嘆く声は 秋の心と
柿でもかじったら ひとまわりしてくるか
落ち葉が紅いうちは まだおなじ
風景にしがみつけるだろうさ