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学園最終学年間近の婚約者 ドリー・ゴマ伯爵令息と

ぽんと時は流れ。

ドリー様、進級試験合格おめでとうございます。わたくしも15歳になりましたの。来年は中等部から、高等部への進学ですわ。同じ校舎で過ごせますわね。学年が違いますので、接点は多くないと思いますけれども。

父や母が過ごした所ですので、楽しみにしておりますの。高等部の話をぜひお聞かせくださいませ。


ああ、リニ、お茶をありがとう。

あなたも一緒にドリー様のお話を聞く?もうすぐわたくしも高等部へ上がるでしょう。先輩の話をお聞きしようと思って。


確かに、リニは学園には行かないけれども、お話は聞きたいかと思って。あら、違うの、そうーー。


ドリー様のお声が好きなのでしょう?

以前そう言ってたでしょう。ドリー様も、リニにお話をするのがお好きだと。

ええ、わたくしの前では貝のようにだんまりなあなたが、何のお話をするのか楽しみにしておりますの。

一先ずは学園の話を、と思いましたけど、学園の話はお嫌ですの?あらーーリニにはよくしているはずですのに。こちらの下調べが間違っていたのかしら、失礼致しましたわ。

では、何のお話をしましょう?


ええ、ドリー様の好きな話で結構ですわ。

もちろん、ドリー様のお好きなリニの話でも構いませんわ。



お顔の色が優れませんわ。

リニ、今日のお茶は美味しいわよ。たまに入る雑味は無いわ。大丈夫、アレは入れてないのでしょう?

ーー庭にある草花を、『ハーブィ』?『ハーブ』?とか言って身体に良いからとお茶に入れてくれるの。素人が手を出す分野ではないと言うのだけれど。

まぁ、可憐な見た目の毒花を入れたのには驚きましたわ。鈴蘭の毒など、素人でも知っていることですわよね。

ええ、大丈夫です。

今日のは我が家がいつもお客様にお出しする、モロゾ産の茶葉のみでございます。わたくしも飲みましたわ。ご安心なさって。


リニ?あぁ、大丈夫ですわ。わたくしを亡き者にしようとする、手練れの筋ではございません。背後に大きな権力も動いておりませんわ。

だから、あなたとの愛を育むのに、何の障害もございません。

わたくし?気にしませんわ。

だって、わたくしの夫は「ゴマ伯爵令息」であれば良いのですから。婚約誓約書をご覧になられたことは?あなたの名はございませんよ。お互い子の多い家ですから、確約されているのは家の子であるという事実だけですの。

というわけで、別にあなたである必要はございませんもの。


ええ、ええ。存じ上げております。

1番上のテリー様はもう次期伯として結婚されていますし、次兄のメノー様は領土内での婚約が決まっておりますのよね。

まさか、今から伯爵夫妻にお子を成していただこうなどとは考えておりませんわ。


あら?ホント、お可愛らしい方ですこと。

結婚前の婿入り予定の家の者に手を出しておいて、何も無いとお思いになるなんて、世間知らずも甚だしい。大人たちはお飾りにはちょうどいいと思われていたのでしょうが、壁飾りにも相応しない振る舞いでございましょう。


リニが当家の者のような言動をしていたことはーーうすうすは、勘づいておりました。今でもまさか、とは思っておりますのよ?

けれども、何より、わたくし、再三我が両親の仲の良さはお伝えしてきましたわよね?自由恋愛の結婚で、ずっとお互いを大事にしてきたと。

どこにわたくしの異母妹ができるスキがあるとお考えですの?

我が家は五女と末の一男、全て父母の子でございます。

だから、母は子爵夫人の仕事を成すことならず、父は母にべったりで仕事を成すことならずで、祖父母が柱となって働いているのです。


祖父と目の色が同じ…。確かに色は似ておりますが、それだけでうちの血筋だと、あなたはお信じになった?あら、リニがそうあなたに?

もう少し賢い子かと思いましたが、そうですかーー。


そう都合よくお話を考えられて困りますわ。物語作者になるおつもりですの?


リニが、我が家の血縁の者と言ったのなら、それは身分詐称ーー犯罪でしょう。言質は取らせず、匂わす程度にしていたのかと思っていたのですが。まぁ、証拠も残してはいないでしょうから、所詮は水掛け論ですわ。子爵家の使用人の小娘の言葉を、あなたが鵜呑みにした、という事実のみ。



弟はまだ2歳です。お披露目もまだなのですから、あなたが存在を知らなくとも。あなたが見たことも聞いたこともなくとも、弟は実在いたします。

ええ、あなたと共にこちらに度々来て頂いている、エーリク様はご存知ですけれど。

あら、エーリク様を『使用人』とおっしゃる?

その様な扱いをされたとは知っておりますけれど、他家に堂々とおっしゃるとは。

庶子ではございますけれど、ちゃんと貴族籍をお持ちですよ。ゴマ伯爵も、そこはきちんと成されたようで。家内を見る目はザルのようですけれど。

夫人は第4王女殿下の乳母ですもの。家内を見る者がいなくとも仕方のないことですわよね。


庶子を笑うなど、ゴマ伯爵夫人はどう思われるでしょう。第4王女(母は側室)の乳母たる、あなたの御母上は。

お仕事のお立場もあって、エーリク様のことは目を瞑るしかないご夫人のご心情を慮ったことがありまして?


メノー様のご夫人となられる領内の女性も、あなた方ご兄弟の乳母であられた方でしょう。その異父弟であるエーリク様という存在が、どれほどゴマ伯爵家で異分子であったかは想像に難くありませんわ。


想像できるならば。


実は兄であったとあなたが知ったのは、我が家との縁談が持ち上がった後ですので、その後のあなたの振る舞いも、少しはわたくしの耳にも入ってきています。あなたに対するエーリク様の対応も。


リニのことは、『ダメ押し』になったとでも申しましょうか。

ゴマ伯爵ご自身は、お分かりだったと思いますよ。

我が家がお二人を秤にかけていることに。


知らぬは、お二人ばかりなりーー。

うふふ。


では。どうなさいます?

我が家のメイドたるリニと添い遂げます?





ドリー「だってリニにも継承権があるって」

リニ「そんな首飛ぶようなこと言ってないわよっ!育ての親から、本当はお嬢様なのにってずっと言われて育っただけよっ」

ドリー「全部嘘だったのか…!?その青い目は何なんだよっ」

祖父「ほほーぅ。確かにワシの目の色と似ておるのー」

リニ「でしょうっ」

ドリー「ならっ」

祖父「じゃがのー、ワシの目は祖母から受け継いだものでのー。ウチの色ではないんじゃ。祖母はガラハッド家の出でのー」

ドリー「ガラハッド公爵家!?そんな大物!?」

リニ「そこに、私の本当の父親がいるのね!?」

祖父「ふつーに行けば叩きだされるぞーぃ。はー、やれやれ」


祖母「あなた…対立派閥だからって、ガラハッドにあんなのを送り込んで、内部分裂でもさせるおつもりですか」

祖父「んー?(そもそも勝手に行ったんじゃ。ワシ、送り込んでナイナイ。)そろそろワシも引退の目処がたったからのー。あっちにごたついてもらってもえーかのー」

祖母「返矢は私たちのあの子が受けることになりましてよ」

祖父「あっちの身から出た錆じゃろうて。子沢山でポケル地方はしばらく安泰じゃしー」

アグレッシブな脇役、リニ。

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