婚約者 ドリー・ゴマ伯爵令息と
激カワな無表情の少女をイメージしてくださいませ。
婚約者、ドリー・ゴマ伯爵令息と
わたくしの父と母は、自由恋愛で結婚なさったの。今の皇太子様と皇太子妃様がご結婚なさった頃に、たいへん流行ったらしいですわよ、自由恋愛。
自由恋愛についてご存知ない?
男の方は、恋愛というものを、本にしろ演劇にしろあまり好みませんものね。ええ、女子どもの好きな話と言われても仕方ありませんわね。
はい。自由恋愛でしたわね。
わたくしたちの様な、親や祖父母がまとめている結婚のことではなく、お互いで相手を決めるのですって。ドリー様は自由恋愛にご興味がおありになる?
自由恋愛となると、その時はとても楽しいのだそうですわ。わたくしも、女子どもの一人ですから、そのようなストーリーの劇も目にしますし、主人公を素敵だなと思いもいたします。妬いてくださる?
いいえ、婚約者の前で他の男性への好意を語るなど、わたくしがいけないのです。嫉妬でなくとも、不愉快になられて当然でございます。お許しくださいませ。
我が家の父と母は、今でもお互いを好き合っておりまして、日々労りあっておりますわ。でも、我が家は侯爵家の某系とはいえ、子爵ですもの。あまり高位でないからこそーーですわね。自由恋愛の弊害として、身分の差を鑑みない、というのがあるそうですの。父も母も、結婚当初は苦労したとよくこぼしております。
結局、身の丈に合わぬ事はできぬのですね。子爵家当主は祖父が現役であるのも、自由恋愛のせいと言えますでしょうね。子爵家と伯爵家ーーわたくしたちも、身分差はございますけれど、わたくしは尊敬する祖父が決めた事なら、きっとよいご縁なのだろうと思っております。
ドリー様は、押し付けられた縁はお嫌ですか?それとも、格下の子爵家の当主の夫という中途半端な立ち位置がご不満でしょうか。それとも、わたくし自身に?なんて、お返事のしにくいことを申し上げました。
ーー顔の作りは母に似ているものの、この表情が祖父に似て、恐ろしいとまで家族に言われますの。可愛げのない女が嫌われるのも、物語の定石ですわ。
覚悟はできております。
それでも、ゴマ家の皆様と、お心を通わせることができたら、何よりとも思っておりますわ。
祖父「いやー、うちの子はかわいーのー」
ドリー「いや、7歳ですか、本当に!?」
祖父「ちーと肩に力が入りすぎてのー」
ドリー「無表情なんですけど!」
祖父「可愛くないとでも?(ぎらり)」
ドリー「美しいと思いますがっ(人形じみてこわいです!!)」
祖父「わしに似て、ちーと目つきがするどくてのー」
ドリー「…(問題はそこじゃないと思う)」
めっちゃ喋るけど無表情です。